第55話 マシンエンジニア、アロ その1
今日も今日とて新たな転生者を迎えるべく、ウリウの洞窟にやってきたはなまるパーティ。
相変わらず幼獣ネズミを蹴散らしながら最深部に向かっていく。
ミ「早く攻撃魔法を覚えて、ここのネズミもまとめて倒せるようになりたいっスねぇ。
自分だけじゃ最深部に辿り着くまでにネズミだらけの集合体になるっスよ。」
ダ「新しい魔物みたいで斬新だねー。
驚いて倒しちゃいそうー。でへ。」
リ「ネズミが引いていって初めて、俺たちは今まで戦っていたのがミカだと知るんだな。
悲しいエピソードだけど、それを糧にみんな一段と強くなれそうだ。」
ミ「勝手に人の死を乗り越えて成長しないでほしいっス。」
話しているうちに光る岩まで辿り着く。
ミカがそれを解錠し、程なくしてドーム状の空間にみんな出揃った。
ミ「それでは召喚の儀、始めるっスよ!」
ミカは慣れた手つきで操作を始め、パネルに手をかざす。
マナがパネルから吸収され、やがて光の柱が立った。
ミ「今度はどんな人かな?
仲間になってくれるかな?わくわく。」
マ「あれ、この影…今回は2人いるんじゃないか?そんな転送、可能なのかな?」
光が降りていくと姿がはっきり浮かび上がった。
1人は白衣を着た、牛乳瓶の底のような大きなレンズのメガネを掛けた男性。
寝癖がついた頭にどこかとぼけた風貌は少し頼りなくも見える。
そしてもう1体は触手をたくさん携えた機械のようだった。
丸い頭から生えた足はどうやら蛸をモチーフに作成されたものらしい。
セ「もう1体は金属器だったのね。
マナを帯びた生命体じゃないなら同時に転生できても不思議じゃないわね。」
ダ「もっとも今までにないだけで、やってみたら2人ぐらい一緒に行けるかもしれないけどねー。」
眼鏡の男性がきょろきょろと周りを見渡す。
?「おおっ、本当に転生している…!
やったー、ブラック企業からとうとう解放されたぞー!」
メ「ようこそ、私たちの世界へ。
お名前を聞いてもよろしいかしら?」
ア「君たちがこの世界に呼んでくれたんだね、恩に着るよ。
私の名前はアロ。
そしてこちらがアンドロイドのオクトーだ。」
オ「コンニチワー」
ミ「喋ったっス!」
コ「ア、アンドロイド…?
寡聞にして知りません。はい。
それは一体何なんですか?」
ア「操作をすると精密な動きをするのがただの『機械』。
アンドロイドとは『AI』という頭脳のようなものを持っているんだ。
そしてそれをもとに操作されることなく、自分で判断して行動することができる機械なんだよ。
オクトーは戦っても強いよ!」
セ「ただの金属の塊ではなかったというわけね。
使役術の要らない使い魔だと思えばなかなかに強力そうですわね。」
続いて興奮の止まらないミカが尋ねる。
ミ「それでブラックなんとかというのは何なんスか?
なんだかかっこよさそうな響きっスけど。」
とたんしわしわの顔になるアロ。
ア「あれは地獄だったよ…。月月火水木金金。
来る日も来る日も仕事に携わらない時間はなかった…。」
リ「あれだな、悪い企業に毎日長時間こきつかわれていたんだな。
そういう会社は前の世界でちらほら見かけたぜ。」
ア「そうだったんです。
それで前の世界が嫌になった僕は、社の最新のアンドロイド『オクトー』とともにこの世界へ逃げ込んできたんです。
どうせ僕がいないとまともにメンテナンスできないし、退職金代わりに頂いてきた次第です。」
オ「ツラカッター」
マ「大変だったんですね。
うちはダンジョン攻略やキャラバンという隊商にでますが、しばらくの間仲間になって一緒にやっていきませんか?
無理だと感じるならやめて頂いても構いませんので。」
アロは目に涙を浮かべ、うるうるとマイアを見つめる。
ア「なんて優しい計らいなんだ。
この十分の一の優しさでも前の企業にあればどんなに良かったか…。
了解しました。私はしばらくの間、あなた達についていきます!」
無事、アロが仲間になった。
セ「ところで、そのオクトーの実力を今一度見ておきたいわね。
みんな、ちょっと場所を移しましょうか。」
オ「オクトー、ツヨイヨー」
ミ「ウリウの洞窟名物、岩砕きで実力測定ですな!楽しみ楽しみー。」
はなまるパーティはドーム状の空間を後にした。




