第54話 彼のその後 その2
スピニアのギルドにはちょうどプレオスがいた。
さっそくローズの件について水を向けるマイア。
マ「こんにちは、プレオスさん。
今日はローズがその後どうなったか気になってやってきたんですが、どうでしょう。
教えて頂けませんか?」
眼鏡を軽くかけ直しこちらに向き直るとプレオスは口を開く。
プ「これはどうも、はなまるパーティさん。こんにちは。
もう終わったクエストのローズの処遇が気になりますか?
こう言ってはなんですが、あなた方は優しいですものね。
良いでしょう、お話しします。」
とりかかっていた書類を片すとプレオスは語り始める。
プ「結論から言うと、彼は今懲役に服しています。
体力も素早さもあるので主に橋の修理や農作業など力仕事に当たってもらっていますね。
彼とはとりあえず懲役分として、こちらに出た被害の倍相当まで働いてもらうことで合意しています。」
さも不思議、というようにセシリアが言う。
セ「懲役なんて途中で逃げ出してしまわないのかしら。
力仕事なら常時見張りと手綱を付けるなんて訳にもいかないでしょう。
強盗の主犯の言葉を信頼できる何かがあってのことかしら?」
プレオスは頷く。
プ「そう、それなんです。
ローズが捕まる前までは主犯には禁錮刑が相当だろうと議会の案でも上がっていました。
しかし実際ローズが捕まってみると事態は少し変わりました。」
プレオスは続ける。
プ「ローズが荷物を襲撃していた訳はその実の妹のためだったのですね。
妹の名はハレと言います。
ハレは吸血鬼で、他の魔物や動物から血を吸って生きてきたのです。
しかし、どうやら最近になって吸血による栄養補給がままならなくなったようで体調を崩していたそうです。
苦肉の策として、ローズが手当たり次第に荷車を襲撃しては色々な食べ物を与えていたようです。」
マ「ローズもやはり吸血鬼だったんですかね。」
プ「そうですね。純正の吸血鬼で秘めてる力は中々のものです。
では続けますね。
我々はローズの塒に物資を取りに行った際にハレのことも確保しました。
そのときはローズの人質としてしか考えていませんでした。
しかし彼女を連れて帰ってくるとあのローズが頭を下げて頼んでくるんです。
『何でもするから妹の病気を治してやってくれ』とね。」
蓋を開ければ妹思いの優しい兄貴だったんだな、とリオン。
プ「スピニア議会とて鬼ではありません。
むしろ人情派で通る人が多いほど。
彼らの事情がわかると量刑に斟酌すべきとの声がちらほらでましてね。
彼らは怪我人も出していませんし、相当の働きをしてもらえば今回のことは水に流そうという風向きになりました。
もちろん反対も多くありましたがね。」
コ「そ、それでハレさんはどうなったのですか?」
プ「ハレさんは現在体調を持ち直しています。
検査によると、彼女は接種した血液に作用する成分が慢性的に不足していたようです。
それで血液から十分に栄養が吸収できないようでした。
幸い人間の世界に同じような作用の薬剤がありました。
それを食事の折に一緒に摂取してもらうことで、体調はずいぶん回復しましたよ。」
ダ「それは何よりだったねー。」
プ「ええ、ええ。
ローズも自分のことのように喜んで、今ではスピニアの誰よりも懸命に作業に従事していてくれます。」
マ「定期的に薬の処方が必要になるなら、もう悪さはしないだろうね。
それにしても根は良さそうなやつで良かったですね。」
プ「喋れるほどの知性が有るとはいえ、魔物なのでこちらも最初は色眼鏡で見ていました。
しかたないとはいえ、今となってはこちらにも反省するところがありますね。
彼の働きを買うものからは、懲役解放の際には祝賀会を開こうという意見もあるほどです。」
その後プレオスとはキャラバンのことなどを話して別れることとなった。
夕方近く、少し涼しくなった風が吹いている。
メ「魔物も…人とわかりあえるのかしら。」
ミ「メメちゃんは前の世界から追われてきたんスよね。
今回のことはつい考えてしまうっスか?」
メ「そうね。私は『いい子』ではいられないけど、そんな私もこの世界に認められるかしら。」
マ「世界が認めなくてもメメの居場所ならここにあるさ。
いい子ばっかりの世界なんてくそくらえだね。」
メメは振り返らない。
素直じゃないメメのことだ。
その時浮かんだ顔を誰にも見せたくなかったのかもしれなかった。




