第51話 広域救援隊 その3
山道を荷車を引きながら歩いていくはなまるパーティ。
道は開けているが足元が悪く、なるほど襲撃には適した地形なのかもしれない。
セ「マイア、あまりキョロキョロしちゃダメよ。
私たち、今はただの街娘なんですから。」
マ「いや、ただ待ってるだけでいいのかと思ってね。
こっちから打って出れないのは、なんとももどかしいね。」
メ「相手は狡猾らしいわ。
こちらにあまり隙がないと襲って来ないかもね。
鼻唄でも歌うくらいがいいのかしら。」
それを聞いてミカがぐっと親指を立てると鼻唄を歌い出す。
その鼻唄はメメが想像していた朗らかなものと違って、えらく熱が入り、こぶしが利いている。
セ「もっと可愛らしくて軽いのを口ずさみなさいよ。」
ダ「まるでセンスが感じられませんねー。
逆に素敵ですー。」
メ「そんなのじゃ、さすがの敵も…来たわ!」
小さな羽を生やした紫の肌の悪魔が3体飛行してこちらに向かってきた。
ミ「おふくろさん、ついぞ待ってておくんなまし…」
マ「ミカ、台詞パートはもういいから!戦闘だよ!
コルック、あれはなんて魔物かわかるかい?」
荷台にこっそり隠れていたコルックが解説に回る。
コ「あ、あれはホラー系の魔物、デビルセスです。
ランクにしては知恵がありますが、複数でもD級以下の御しやすい相手です。はい。」
マ「ならプランBだ!
こちらはなるべく手の内をみせずに相手の1体を生け捕りにしてしまうよ。
荷物係は相手を牽制して荷物を守ってね。」
デビルセスたちは自分たちを見ても荷物から逃げていかないはなまるパーティに少し及び腰だった
が、覚悟を決めたようで襲いかかってきた。
はなまるパーティは魔物との交戦に、作られた悲鳴をあげる。
手始めに荷車に向かってきた1体をセシリアが木の棒で乱雑に振り払う。
その動きはまるで武芸の心得のない者のようだった。
これは事前のマイアの指示であった。
相手のリーダー格が出てくるまではどの味方も本来の戦いぶりは見せず、しかし荷物は渡さない。
こうして業を似やしたリーダー格が出現するのを待っているのだ。
次に向かってきた1体はちょうどダフダフとメメの間に入ってきた。
ちょうど荷車の影になっている。好機だ。
ダ「はいはいー。御用ですよー。」
ダフダフがわきわきと手を動かすと、後ろからデビルセスの羽と両手をがっちり極める。
次いで、すかさずメメが素早く縄をかけた。
あっという間に1体のデビルセスが荷車の柱に結え付けられた。
マ「さて、人質ができたね。
これでリーダーがでてくるのかな。フッフッフ。」
メ「マイアの悪い顔、素敵よ。
あなたになら付いていけるわ。」
残ったデビルセスたちは思ってもない事態に少し距離を取ったが、しばらく中空を彷徨ったのち自分たちの来た方向へ返って行った。
マ「1度撤退していったね。
また来るだろうか…。」
ミ「お袋慕情の2番がいるっスかね?」
ダ「どやされたくなければ帰ってからにしましょうねー。」
敵の襲来は早かった。
コルックが声を上げる。
コ「て、敵、来ました。
中央におそらくリーダー格、詳細不明。
さ、左右にそれぞれデビルセス2体、ピッグバット1体を連れています。」
リーダーと目される個体は銀髪に紫の皮膚をしていた。
黒いマントを羽織り、ヴァンパイアを思わせる。
マ「周りは雑魚だ。
本当のリーダーか分からないから、中央のも生け捕りにするよ。
セシリアはコルックにヘイストをかけてもらってガネーシャと挟み撃ちだ。
メメは瞳力を利かして対応するんだ!」
コ「も、目標の退路が塞げたら僕もうって出ます。はい。
バフのかけどきなんでみなさんこちらへ!」
バフがしっかりかかった一同が敵の軍団を迎え撃つ。
近距離まで引きつけるとまずはセシリアがガネーシャを召喚し、素早く敵リーダーの後ろに回り込んだ。
ついでメメが雑魚を挑発する。
リーダーはあっという間に一人ぼっちになった。
周囲を囲まれジリジリと動けないリーダー相手に、最後はダフダフが投網を二重に投げかけた。
リーダーはしばらくもがいていたが、動けば動くほど網が絡まり、自由が利かなくなっていく。
最後は観念したようにリーダーが声を上げた。
?「結構な娘さんたちだな。降参だ。
お前ら、やめな。」
鶴の一声に周りを舞っていた、デビルセスとピッグバットが地上にへたり込む。
マ「! 喋れるんだね。知能が高いとは聞いていたけど正直驚きだよ。」
ロ「名乗らせてもらうよ。俺はローズ。
知ってるだろうが、ここらの襲撃は俺が指揮を執っていた。
そいつらは入れ知恵で俺に力を貸していただけだ。
解放してやってくれないか?」
セ「解放したら、その子たちだけでも悪さはしなくて?」
ローズは首を振る。
ロ「こいつらにそんな知恵はないね。
もともと洞窟で暇してた奴らを、俺が唆して無理矢理連れて来たんだ。
なにタダでとは言わない。
盗んだ物の内、食糧以外のものはまだ塒にとってある。
それと引き換えだ。」
メ「物資が少しでも返ってくるならスピニアにとってもいい話ね。
だけどあなたは主犯、流石に安全は保障できないわよ?」
ロ「いいさ、そこの縛り付けられたのも忘れず放してやってくれ。」
デビルセスとピッグバットらはローズから逃げるように言われても、しばらく名残り惜しそうに側を漂っていた。
しかしローズが気合の入った咆哮を喰らわせると驚き、散り散りになって飛び去っていった。
マ「とりあえず目的は達成したね。
1度スピニアのギルドに戻ってローズの処遇を聞いてみようか。」
こうしてはなまるパーティは無事、初の広域救援隊のクエストをクリアしたのであった。




