第43話 不穏な眼差し
ギルドに立ち寄ったはなまるパーティを遠巻きに見つめる3人の影があった。
?「あれが噂のはなまるパーティか。たしかに強そうな仲間を揃えているな。」
背はリオンと同じくらい。
後ろに携えた体ほどの長剣と鎧兜が様になった銀の短髪の男性が言う。
?「それが調べてみると不思議なことばかりなのにゃ。
始めはチビでうるさい娘と栗色の髪の女の子だけのパーティだったんにゃ。
それもなんとなんと、ずっとEの下のクエストを受けているようなやつらだったにゃー。」
こちらは赤い髪をショートにした明るい笑顔の似合う女の子だった。
ふさふさの毛が顔面以外の体中から生え、頭の斜め上の低い位置に丸い熊のような耳が覗いている。
その言葉を修道女の格好をした女の子が受ける。
こちらも笑顔を絶やさないが猫耳の娘に比べ、ずっと落ち着いた印象を受ける。
?「しかしあるときから強力なメンバーを続々とパーティに加え、次々にクエストレベルを上げる活躍。
今ではトップクラスのパーティとクエストを取り合うような位置にまで迫って来ましたわ。」
男が首を傾げ、言う。
?「さすがに不審だな。人身売買でもしてメンバーを集めているのか?」
はへーと首を振り振り、猫耳の獣人の娘が答える。
?「単純に否定はできないにゃ。
だがルートもなしに強いメンツと知り合うにはかなりの運とお金がいるんにゃね。
あいつら不幸顔な上、かなり貧乏そうだったからその線も薄いんじゃにゃいかな~。
ルートがあってもとてもとても。
あ。あと、1つ目の、人間じゃない仲間もいるにゃ。」
?「うむ、興信所にでも素性を調査させたいが、そこまでするのはちと違う気がするな。
ただ、怪しい動きがみられる以上、この界隈の平和のためにも真実を知っておきたいものだ。」
悩む男を見つめ、猫耳娘と修道女がやれやれと目を合わせる。
?「リーダー、回りくどいのは嫌いでしょ。
行きましょう。直接聞くのが一番わかりやすいでしょ?」
?「そうだ、俺は単刀直入が好きだ!
いくぞ、お前らもついてこい。」
?「さすがリーダー、話が早いにゃ。」
早速ずかずかと進み出す男とそれについていく2人。
3人は、はなまるパーティに近寄っていく。
?「お前らがはなまるパーティか?
いくつか聞きたいことがある。」
リ「? …たしかに俺らがはなまるパーティだが、誰だお前。
人に質問するなら、まず先に自分から名乗ることだな。」
ゼ「それもそうだ。
俺の名前はゼレ。トールというパーティ名で活動している冒険者だ。」
ヌ「同じくトール所属のヌマルルにゃ。
マヌルネコの獣人ですにゃ。」
ラ「私もトール所属のライネ。
神官をしています。」
こっそりマイアがリオンに告げる。
マ「トールといえばA級のクエストもこなしている、ここらで最強のパーティだよ。
みんなの顔役として様々な雑務も受け持って、他のパーティからの信頼も厚いパーティだ。
私も彼らを何度となく見かけたことはあるよ。」
3人をじろじろと見渡すとリオンが尋ねる。
リ「俺ははなまるパーティのリオンだ。
で、なんだ。トールだかのみなさんが揃って何か用でもあんのか。」
ゼレは間をおかず話し始める。
ゼ「最近、よく活躍されているはなまるパーティのことについて聞いてね。
おめでとう、ワイバーンを始め、強力な敵を退けているようだな。」
どーも、と愛想なく答えるリオン。
セ「ただ、その経緯がいかんせん腑に落ちなくてね。
はなまるパーティは最初はそちらのお嬢さん初め、2人の弱小チームだったそうじゃないか。
そんなパーティが強力な仲間を次々に加え力をつけている。
人外の仲間もいるそうじゃないか。不審に思ってもおかしくはないだろ?」
はなまるパーティにピリッとした空気が流れる。
かねがねの話し合いによりこの手の質問が出ると、個々の事情だからと答えないか、はぐらかすことにしていた。
転生装置のこともそうだが、それに必要となるミカの能力があらわになるのがまずいと考えてだった。
しかし今回はわざわざ正面から話を持ってこられている。
信頼のあるパーティへの嘘はばれてしまったときに周囲から不信を招く。
マ「悪いですね、みんな事情がありましてね。
初対面の人になんて話したくないこともあるでしょう?
詮索は無しにしてくれませんか。」
ラ「今はお願いという形をとっているのですが。」
こんどはライネが答える。
ラ「みなさん、あなた方の活躍を不審がっています。
私たちが聞いても何もわかりませんでした、となればその気持ちはもっと大きくなるでしょう。
今では不法者を匿っているのでは、との声も出ているんですよ。
もちろんそうではありませんよね?
ならば何か伝えられることはあるはずだと思いますが。」
話が不穏な方向に行っている。
それに慌ててメメが間に入る。
メ「ちょっと待って。少し時間をくれないかしら。こちらの方針を決めたいわ。」
ちら、とメメをみるとゼレは許可を出す。
はなまるパーティは隅で話し合う。
セ「どうするの?
たとえ転生装置の存在を明らかにしても、ミカの能力を伏せたままではつじつまが合わないですわ。」
コ「み、みなさん他の国から流れてきたことにしますか?
うまく話を合わせて…。」
リ「いや、そんな噓すぐにばれるさ。
マイア、奴らは信頼できるのか?」
マ「ああ、実直ないいパーティさ。実力だけでなく心根もしっかりしている。」
リオンが頭を掻いて話す。
リ「だったら奴らには転生装置とミカのことを話しちまおう。
その上でこちらの事情も話して他言無用にしてもらうんだ。
あいつらにははなまるパーティに問題はない、と他のパーティに伝えてもらう。
それなら、たとえ話せないことがあるにしても他のパーティはその言葉を信頼するだろう。」
マ「背に腹は代えられないといったところだね。
他の案も浮かばないかな。リオンの案でいこう。」
意見をまとめマイアたちが戻ってくる。
マ「まず、こちらには隠したい事情があるのを分かってほしいんです。
あなたたちには真実を伝えますが、他のパーティには口外禁止にしてくれませんか。」
ラ「難しいわね。その事情にもよるわ。」
リ「なら明かせねぇ。
パーティメンバーの安全が保障できねぇからだ。」
ゼレが口を挟む。
ゼ「私たちが他のパーティに君たちに裏がないことを保証すればいいんだろ。
いいだろう、承知した。ライネ、ヌマルル話を聞こうじゃないか。」
ライネは少しむくれて不服そうだったが反論はしなかった。
マイアが転生装置とミカのことについて事情を話した。
ゼ「なるほどな。概ね了解した。
だが、信じるには少し突飛すぎる話だな。」
リ「こちらが手札を全部切ったのに不満かよ。」
ゼ「何、こちらはあとは証拠が欲しいだけだ。
今度その転生の儀を行うときに我々も立ち会わせてほしい。
それでお互い言いっこなしにしよう。」
ちょうど次の日が転生の儀を行う日だった。
はなまるパーティはトールと話をつけ、ウリウの洞窟で待ち合わせることにしたのだった。




