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第34話 フロニア洞窟 その4



 最後のフロアに辿り着く前にコルックが異変に気づいた。



コ「こ、この先の壁、ずっと岩肌が露出しています。

 ほら、来たところまでは一様に氷に覆われていたのに。」



マ「氷が凍っていられない環境が行く手に待ち受けている…?」



リ「メメの感じた、炎属性の魔物のせいってことだな。

 ここまでヤツの熱気に晒されているわけか。」



 歩みを進めると、確かにそこから暑いくらいの気温になっていた。



マ「私は炎、水、風、土、光、闇の六属性の攻撃魔法が使えるけど氷属性は無理なんだ。

 コルックも氷属性は撃てない。


 水がどれだけ敵に通るか分からないが、この先の戦いは魔法の援護に大した威力は期待できないと思っておいた方がいい。」



コ「て、敵対する前にマイアさんには足にヘイストのバフをかけておきます。はい。


 最初は僕と一緒に氷属性の魔物の露払いに徹しましょう。

 り、リオンさんはどうします?」



 リオンは少し考えて答える。



リ「途中でガス欠は最悪だ。

 バフは戦況を見て頼む。」



セ「私もね。炎属性の魔物を見極めてからお願いしますわ。」



メ「私は最初からヘイストを頼むわ。

 お荷物になりたくないし、最後だから全て出しきりたい。」



 コルックがマイアとメメにバフをかけ、はなまるパーティは最後のエリアになだれ込んだ。



 そこには確かに三体の魔物がいた。

 炎属性の魔物の正体は紅い翼竜であった。



 コルックは驚きを隠せないようだった。



コ「あ、あれはまさか…。あの魔物はワイバーンです。はい。


 ど、ドラゴンほどではないですが強力な炎を操る種がいます。…かなり強いですよ!」



 幸いワイバーンはこちらに興味を示していなかった。

 ハウンドのリーダー種とクリスタルフェアリーが向かってくる。



 2体の魔物はやや遠巻きに陣取ると、氷の息とフローズンでこちらをじわじわと削ってくる。


リ「ワイバーンのおとなしい今が、てめぇらを片付けるチャンスなんだ。

 もっと近づきやがれ!」



 メメが瞳力を発動する。



 フェアリーには効かなかったがハウンドが少し誘い出された。

 とはいえリーダー種なりの耐性があるのか、なかなかすぐにはおびき寄せられない。



 距離は今一だったが、そこにコルックとマイアのフレアが襲いかかった。

 とくにマイアはバフのかかった足に任せ、様々な位置で周囲のマナを巻き込んで踊るように大量のフレアを叩き込んだ。



 弱点の魔法の集中砲火に晒され、のけ反るリーダー種。

 そのやり取りの間にメメが距離を詰めていた。



メ「弾けろ!」



 下方向からすくい上げるような一撃をもらい、空に浮くリーダー種。



セ「このハウンド、自分から地面を蹴って勢いを殺したわ。


 でも溜まったダメージはかなりのものよ。マイア、コルック、後一息をお願い!」



 ハウンドの宙に浮いた体に、魔法職のフレアが撃ち込まれる。



 そのときだった。



 強力な火炎放射がコルックとマイアのフレアをかき消した。

 それはワイバーンから発射されたものだった。



 寝そべっていたワイバーンは、今は獲物を見定めるように宙に浮いている。



セ「すごい速度と威力…。まともに食らうと大火傷ね。」



 高熱を感知したためか、フェアリーはその場で水平方向に回転を始め、次第にその速度を増すと戦闘から離脱した。



リ「フェアリーを逃したのは惜しいが、ラッキーでもあったぜ。

 こいつを倒せばあとはワイバーンをタコ殴りだ。」



 満身創痍のリーダー種に近づくリオン。



マ「リオン、危険だ!。バフも受けずに不用意に動いたら。」



 リオンの剣はリーダー種にとどめを与えた。

 だが次の瞬間彼の体は宙に浮いていた。



 つい先程まで遠くにいたはずのワイバーンがリオンのところまで素早く飛翔し、爪で彼の体を引っ掛けていたのだ。



 ワイバーンは飛行しながらリオンをやすやすと牽引すると、彼を壁面に叩きつけた。



リ「…!」

ミ「リオン!」



 壁にリオンを引きずりながら高速で移動するワイバーン。

 凄まじい音が響く。


 リオンはただ耐えているしかなかった。



 15Mほど引きずられてリオンは解放された。

 立ち上がろうとよろよろ動いている。



セ「マイア、アクアを可能な限り上空に打ち上げて。」



 セシリアの意図をくみ取り、マイアは水魔法をいくつも打ち上げる。

 周囲はすぐに水たまりができるほどびしゃびしゃになった。



マ「これで火炎ダメージがないとはいわないまでも、致命傷にはならないだろう。


 メメ、前に出て。

 セシリアはコルックのバフを受けよう。

 私は1度ミカに補充をしてもらってリオンを回復しに行く。」



 荒ぶるワイバーンを前にメメが、続いてセシリアが前に出る。


 ガネーシャは後衛とワイバーンの間に立ちふさがり、パーティの瓦解を防いでいる。



 ワイバーンの野生の勘か、メメの攻撃はことごとく当たらなかった。

 細かく火炎と爪を躱しながらセシリアがバフを受けた足で素早くダメージを与えていく。



 ふと、メメとセシリアを無理矢理振り切ったワイバーン。

 標的はガネーシャだった。強力な火球を吐き出すとガネーシャを包み込む。


 それを脇目にワイバーンは後衛に取り付いた。



セ「ミカ!」



ミ「!」



 ミカに火球が直撃する。



 誰もがそう思った時、その一瞬前にミカは手を引かれ、難を逃れることができた。



リ「どうやら間に合ったな。」



ミ「遅いっスよ。そんなにレディにお漏らしさせたいっスか?」



 セシリアとメメがワイバーンに追いつき、交戦する。

 リオンはただ剣を持った手を不思議そうに見ていた。



ミ「どうしたっスか?」



リ「ミカからマナの補給を受けたことは何度もある。

 だが今回は不思議な感じだ。力が湧いてくる。」



 メメとセシリアにワイバーンから距離を取るように言うリオン。

 2人は訝しげにしながらもそれに従う。



 ワイバーンは再びミカを狙うべく、突進してくる。

 その傍らにリオンはいた。



リ「スキルの名が降りてきたぜ。

 その名も(いわお)()き、喰らいな!」



 ミカの補給を受けながら、リオンは剣を力一杯真っ直ぐに振り下ろした。



 すると剣からでた衝撃波が地面に深く亀裂を刻んだ。



 その裂け目は凄まじい速さと深さで、標的であるワイバーンまで伸びると、その体を一刀両断した。



 思わぬ一撃を受け、ワイバーンは地面に臥せるとやがてマナに還っていった。



ミ「やった、やったっスよー!」



 リオンは軽く笑みを浮かべるとその場に崩れ落ちた。



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