第33話 フロニア洞窟 その3
拾った結晶を手に取るマイア。
マ「不思議な感覚だ…。
冷気を帯びているけど不快な感じではないね。
それに見つめると吸い込まれるような美しさがあるよ。」
セ「まるで宝石のようですわね。
マナの結晶とはまた違っているのかしら。
持っていて何か変わったことはない?」
マ「そうだね。持っていると体が強い冷気を纏うような感覚がある。
…マナは吸い取れないな。マナの結晶ではないみたいだ。」
マイアは結晶を持つ手を強く握った。
すると結晶はそれに呼応するように光り、マイアの両手から氷塊が吹き出した。
マ「わ、わ、何だこれ?」
リ「ほう、こりゃあ驚きだな。拳に氷を纏わせる武器のようなものかな。」
コ「こ、これはエンチャントチャームと呼ばれるものの一種ですね。はい。
ぞ、属性のエンチャントを常に所持者に与えるアイテムです。
これはきっとその氷属性にあたるものだと思います。」
マイア、貸してみな、とリオン。
結晶を受け取るとリオンはきっ、と剣を構える。
するとリオンの剣はその切っ先まで冷たいオーラに包まれた。
素早く剣で空中を切り裂くリオン。剣の軌道に合わせ鋭いつららが出現する。
リオンがひとしきり剣を振るい終え鞘に納めると、弧を描いていた氷の塊たちがばらばらと地面に落ちて砕けた。
セ「お見事ですわ。」
リ「なかなか面白いアイテムじゃねぇか。
あの魔物限定のドロップならそれなりに高い価値も出そうだが、ただ売るのも惜しいな。」
マ「売りに出すのは一旦『保留』だね。
フレアロッドで氷対策、これで炎対策。
対応力を上げて様々なダンジョンにあたれるようにしたいからね。」
思わぬ報酬を取得したはなまるパーティは洞窟を進む。
洞窟の後半では氷属性の魔物の間に、少し強力な炎の魔物が紛れ込むことがあった。
ただそれらの魔物にはメメが瞳力を利かし、氷のチャームを所持したリオンが対応することで、すぐに処理ができた。
他の魔物も見慣れたものばかりになり、パーティは的確に敵に対応できるようになっていった。
コ「ど、洞窟の攻略は順調ですね。
特にチャームを手にしたリオンさんの活躍は目を見張るものがあります。はい。」
セ「剣先にまで氷を纏えるのが素晴らしいわね。
威力とリーチが両立できて、なおかつリオンには素早さもあるわ。
決定力が増えたおかげでバランスよく能力を生かせる。
そして私たちも目の前の敵にだけ集中できて、事故が起きにくくなっているわね。」
メ「私がチャームを持つとややオーバーキル気味になるからちょうどいいわね。
仲間が補助をして、重い攻撃を当てに行くより、リオン単体で動いてくれた方がパーティの自由度は上がるわ。」
つまらなさそうなのはミカだった。
ミ「なんかリオンが褒められづくで面白くないっスね。
ミカも頑張ってるっスよ?
チャームには他に弱点とかないんスか、使い続けると腹を下すとか。」
リ「せめて戦闘に関する弱点にしてくれよ…。」
魔物の素材やマナの結晶など、拾得物もかなり成果は上々だった。
洞窟もいよいよ大詰めに差し掛かった。
マ「事前に貰った地図によるとこの先を制圧すればクエストは完了だね。
マナの風はこの先から吹き出しているから強力な魔物がいるかもしれない。気を締めていこう。」
少し歩みを進めるとメメが立ち止まる。
メ「敵影は三体ね。
一体はフロストハウンドのリーダー種。一体はまたクリスタルフェアリーよ。
最後の一体は…わからないわね。
高熱を帯びた巨大な魔物のよう。今までで一番素早そうだわ。」
セ「この洞窟のボスなのかしらね。みんな、心してかかりましょう。」
はなまるパーティはフロニア洞窟の奥へ、誘い込まれるように進んでいった。




