第26話 キュクロプス、メメ その1
ウリウの洞窟に集まった5人。
ミ「いでよ、転生者!転生の儀!!」
ミカがノリノリで転生装置を起動させる。
マ「言った通りセシリアもパネルには近づかないでね。一瞬で意識を持っていかれるよ。」
セ「分かっていますわ。それにしてもこんな風に転生されていたなんて驚きですわね。…もちろんこの子にも。」
傍目にも膨大なマナがミカから装置に流れ込んでいく。
その風景はマイアには見慣れたものであったが、初めて見る者の感想はそんなところだろう。
装置へのマナの補給が終わり、光の柱が立つ。
ミ「いつも思うんスけど、誰かを待つこの瞬間ってソシャゲのガチャに似てる気がするっス。
リオンはレア度が低そうだから何回も出てきそうっスねぇ。」
リ「出てきたら俺が2人になるが、そしたらどうなるんだよ。」
ミ「それはもう、
『アイツも俺で、俺も俺。どっちがホントの俺なんだ…。』
っスね。」
リ「なんでリアルにシリアスなんだよ。
仮定の話なんだから気軽にズッコケさせとけよ。」
影が立ち、光の柱が降りていく。
現れたのは背の低い、黒髪短髪で一つ目の少女だった。
ぱんぱんにしたリュックを背負い、両手には鞄。
服装は黒いワンピースをしていた。
頭のてっぺんからは角が覗いている。
セ「きゃあ!ひ、一つ目の女の子?」
セシリアが驚きの声を上げる。
?「悪かったですね。こっちの世界でも一つ目は珍しいですか。」
マイアが間を取り持つ。
マ「セシリア、失礼だよ、謝って。
ごめんね、とりあえず私たちに敵意はないんだ。」
セ「気分を害してすみません、お嬢さん…。」
メ「まぁあえて私を呼んだんですから、敵意なんてあっちゃ困りますが。
私の名はメメ。一つ目の種族キュクロプスの末裔よ。」
ミ「キュクロプス?
コルック君知ってるっスか?」
コルックは首を振る。
コ「い、いえ寡聞にして何も…。」
メ「どうやらこの世界には同胞はいないのかしらね。
キュクロプスは鍛冶が得意な単眼の種族よ。
私は前の世界から迫害されて、どうにかポータルに逃げ込んできたの。」
コ「あ、頭に生えているのは角ですか?」
メメは頭のてっぺんにある突起をちょんちょんと触って答える。
コ「そうよ。周囲を感知するアンテナのようなものね。
弱点でもあるから、あまり強く触らないで…というか理由なく触らないでね。
ぶっ飛ばすわよ。」
ここまで話を聞いていたリオンが、少し残念そうにため息をつく。
リ「しかし今回もひ弱そうな嬢ちゃんか。
なかなかいいタンク役とは巡り合わないな。
そううまく話は運ばないか。」
メ「タンクって敵を引き付ける前衛でしょ?
私、できるわよ。」
そっけなくメメが答える。
メ「私のスキルは瞳力といって、耐性のない魔物を虜にする力があるの。
対象となった者は私を攻撃するようになるわ。」
やれやれとリオンが首を振る。
リ「ひ弱な嬢ちゃんが狙われやすくなったところで、俺たちの仕事が増えるだけだろ。
そのスキル死んでるんじゃねぇのか?」
するとメメがそっと手のひらをリオンに向ける。怪
訝そうに見つめるリオンにメメは言い放つ。
メ「あなたの全力の拳を、ここに打ち込んでください。」
リ「おいおい、俺は女子どもをいたぶる趣味は」
メ「やれば分かります。それとも口だけですか?」
はぁ、と再びため息をつくリオン。
セシリアといい、どうして転生する女は好戦的なのかね、という思いが頭を掠める。
リ「じゃあ遠慮なく、行くぜ。」
リオンの体が風を切り、その掌がメメの手のひらに合わさった。
その刹那だった。
リ「いで、いでで。いでででででで。」
メメの掌がリオンの拳をガッシリと掴み、ひねり上げている。
その腕にはいくつもの太い血管が浮かび、凄まじい膂力を物語っていた。
リ「ギブアップ、ギブアップだ、メメ。拳をほどいてくれ。」
メメがパッと手を話すと、リオンはどさりと床に倒れ込んだ。
ミ「え?リオン、かっこわるぅ。
え?え?リオン、かっこわるぅ…。」
リ「これは失礼だったな。
あんたの秘めてる力は俺なんか目じゃないな。」
メ「キュクロプスは剛力で知られていますから。
体格にも恵まれた私の祖父なんかは、棍棒の一振りで山に横穴を開けたこともあります。」
素晴らしい力の持ち主を前に目をキラキラさせるマイア。
マ「あなたは本当にすごいんだね。私たちのパーティに入ってくれるかな?」
ふっ、とつれない表情のメメ。
だが返事は逆だった。
メ「まぁ、いいですけど。転生させてもらった恩もありますしね。」
こうして単眼の少女、メメが仲間になった。




