第2話 始まりは洞窟の奥から その2
二人は長い通路を抜けると天井の高い広い空間に出た。
「ウリウの洞窟にこんなに広大な空間があったんだね。ミカ、何があるかわからないからあんまり離れないでね。」
ミカは興奮しきっていてあまり話を聞いていない。
「すごいっス!何か作られたみたいな場所です!壁にはたくさん文字があってこれもミステリアス!」
やれやれと思う一方、マイアは同じことを思っていた。
ドーム上の空間。不思議な読めない文字群。ツルツルした洞窟に似合わない材質。
これらはどうみてもこの場所が人間の手によって作られたことを示していた。
そして気になるのは中央だった。
ミカとマイアは恐る恐るドームの中心へ歩み寄っていく。
ドームの中心は一段低くなった円形の場所になっていた。大きさはちょうど人がひとり立てるくらいである。
さらにそこに導線でつながるように、パネル操作ができそうな台が設置してあった。
ここでなんらかの操作を行っていたのだろうか?
マイアは思い切って中央の台に触れてみた。
画面に文字が表示される。
『ようこそ』
「動いた…。」「動いたっス…。」
『転生対象を探しています。しばらくお待ち下さい…。』
「何のことだろう?何かを送る装置なのかな?」
「悪いものならわざわざ送らないっスよ。きっと素敵なアイテムが転生されるに違いないっス!」
楽観はできないな、とマイアは思う。いざというときは自分が止めなくては。そう考えていたときだった。
『転生対象が見つかりました。マスターに十分なマナを供給してください』
その表示とほぼ同時にパネルに触れていた自分の身体が崩れ落ちた。
おぼつかない頭で思う。そうかこれはマナを供給する機械だったんだ、と。
自分の僅かなマナなど一瞬で吸い取ってしまうほどこの機械はマナを欲している。
床に転げた自分をミカが心配そうに抱きかかえていた。ミカに伝えたかった。早くその装置から離れるんだと。
しかし言葉は音にならなかった。
原因を探るためか今度はミカがパネルに触れてしまっていた。今度はミカのマナが吸われる番だった。
見た目にもすごい勢いでミカのマナが装置に吸い込まれていく。空気を伝いながら周囲を渦巻いていくようだった。
常々ミカのマナは無尽蔵だと思っていたが、このままでは危険だった。二人して倒れてしまえば、助けはいつ来るかもわからないのだ。
しかしその心配は杞憂に終わった。ほどなくしてパネルからシステム音が鳴った。
『マナの供給を確認しました。対象を転生します。』
「つ、疲れたっス〜。」
通知のあと、中央の円が光の柱に包まれた。ゴゴゴという響きに合わせ中央に黒い影がチラチラと見えてくる。
その間マイアはミカからマナの供給を受け少し動けるようになった。
黒い影がはっきり形になると光の柱はカーテンが降りるように下がっていった。
『転生完了いたしました。』
「これは…人間か?」とマイア。
転生されてきたのは精悍な顔つきの若い男性だった。短い茶髪に額のバンドをし、鎖帷子に半身ほどの剣を携えている。
「あんたらが俺を呼んでくれたのか?リオンだ。どーもよろしく。」
「リオンっスね。よろしく!」
「なんで君はそう溶け込むのが早いんだ。リオン、この転生装置のことについて知ってることを教えてくれないか?」
「なんだなんだ、知らずに転生したのかよ。衣食住は保証されているんだろうな。」
「それは2人にも怪しいっス…」
リオンの話はこうだった。
かつて異次元を自由に渡り歩ける魔道士たちがいた。
彼らは迫害されたり国を追われた人を目の当たりにし、そんな人が自分の世界から抜け出せる手段を作ろうと思ったという。
彼らは時間をかけ、ポータルと転生装置を様々な世界に作り出した。
各世界に設置されたポータルにマナを注ぎ込むことで、同じくマナを注ぎ込んだ別世界の転生装置に時間・空間を超えて転生することができるということだ。
また転生者が再びひどい目に合わないよう、転生先は自分よりマナの弱い世界が自動的に選び出されるという。だから俺はかなり強いんだという話だった(笑顔で聞き流した)。
「あとは転生装置は定期的にしか使えない、ってことらしい。まぁ1週間もすれば再び起動できるだろうさ。」
「なるほど、よくわかったよ。ありがとう、リオン。
とてもすごい装置だったんだね。」
「…ちなみにマナをつぎ込むアイテムはどうしたんだ?
あんたらどうやら貧乏そうだし、それらしきものも転がっちゃいないが…。」
「あぁ、それはね。この子、ミカのマナで賄えたようなんだ。」
リオンが驚いて後ずさる。
「ほんとかよ!?人間のマナなんて何人集めようと起動できたもんじゃないぜ。フラフラになるとかじゃ済まない。」
「わかるよ。最初にパネルに触れていた私は一瞬で意識を持っていかれたからね。」
「ミカもだいぶ疲れたっスけどねー。」
「まだ十分なほどマナを帯びてるじゃねぇか。化け物かよ…。」
その後3人は転生装置のある部屋を後にした。通路を出るとひとりでに入り口の岩は閉まった。
待望の仲間が1人増えた。果たして冒険は楽になるのだろうか。




