第16話 ゴーゴー!キャラバン その1
受「現在あなたに紹介できる仕事はありません。
期間をおいて再びお越し下さい。」
ミ・リ「何ぃーっ!」
まさかのクエストなしに食い下がるいつもの二人。
ミ「なんでっス。なんでっス。昨日セシリアもパーティに加わったんすよ。
難しいダンジョンがダメ、ってのならともかく、クエスト自体がないってどういうことっスか?」
リ「ほんとだぜ。
セシリアの身体検査はまっとうだったんだろうな?
インチキしてんじゃねぇのか?
今までのが物足りねぇのなら、Dの難易度上でもあるだろ。」
受付嬢は一瞬イラついた顔を見せたが、すぐにそれを消し去り淡々と答える。
受「まずDの難易度上のクエストはあなたたちのパーティにはまだ任せられません。
これは私の決定でなく、上司たちの意向なのでどうしようもありません。」
にべもない回答だった。
受「またこのギルドはあなた方だけが利用しているわけではないので、他の方にもクエストを割り振る必要があるんですよ。
あなたたち、Dの中の難易度をここ最近かなりこなしていますよね。
少なくとも今日に至っては、あなたたちに振る仕事がないんです。
事情を分かってください。」
しかたないと帰っていった他のパーティメンバーと違い、聞き分けの悪い2人はカウンターでまだがなり立てる。
ミ「そんなもん、わかってたまるかっスー!責任者を呼べっスー!!」
リ「俺らみたいなパーティを寝かしとくたぁ、世界の損失だろ!」
息を少し吸い込むとぼそりと一言呟く受付嬢。
受「だから無いもんは無いっつってるでしょうが。耳ついてんですか、あんたら。」
受付嬢の本性を垣間見て、目が点になる二人。
今のが聞き間違いかのように、受付嬢はいつものスマイルに戻っていた。
受「申し訳ありませんね。
またのお越しお待ちしています。」
マ「今回は仕方なかったね。
これからもクエストがなかったり、仲間の体調不良だったりで冒険がお休みの日あるかもしれないね。」
ミ「残念っス、ダンジョン行きたかったっス…。」
セ「まぁそんなに多いとは思えませんが、もし長期間続くとお財布がさみしくなりますわね。」
待ってましたとばかりにマイアが話題をふる。
マ「やっぱり他の収入手段も確保しておいた方がいいよね。
そこでちょっと蓄えがあるうちに『キャラバン』を始めてみようかと思うんだ。」
コ「きゃ、キャラバンですか?」
マ「食料品に日用品、雑貨なんかを屋台に積み込んで、交通の悪いところや隔離された集落を巡って商品を売りに行くのさ。
人助けにもなるし、お金も稼げるしで一石二鳥だと思うんだけどどうかな?」
リオンは首をかしげて言う。
リ「でも言うほど簡単ではないぞ。
屋台と、馬かラクダが数頭が必要だし、動物は生きてるからエサ代も世話の手間も馬鹿にならない。
初期費用にランニングコストが結構いるぜ。」
それは想定してたようでマイアが答える。
マ「屋台はちょうど仕事を畳むお店があってね。
2台ほど安く譲ってくれる話があるんだよ。
馬は買わずに、鍛錬を兼ねて私たちで引いていけばいいと思わないか?」
コ「ら、ランニングコストがそうかからないなら、たまに出すキャラバンでも投資に見合うかもしれませんね。」
マ「軌道に乗ればの話だけど、最低週一回程度決まった曜日に出すようにすれば、お客さんも喜ぶんじゃないかな。
今日みたいに空いた日があれば新規開拓に回ったり。」
セ「ふふん、面白いかもしれないですわね。
仕入れや売買交渉、土地勘と学ぶことも多そうだし、各地でいろんな話が聞けそうだわ。
宿でくすぶっているよりいいんじゃなくて?」
リ「みんな商売経験がないからな…まぁ俺は大きく賛成じゃあない。
だがあくまで人助けメイン、儲けは度外視で始めて見ればいいんじゃないか?やるならもちろん手伝うぜ。」
マ「他に何か反対や意見はないかな?
…ないみたいだね。ではみんな初心者だから手探りだろうし、アドバイスしあってやっていこうね。」
こうしてときどきキャラバンを走らせることが決定した。