戦パート 混沌のロキ勢力VS両星のルイン勢力 ハルムート、ベヒモス登場!
メンテバーストにより大変遅くなりましたm(__)m
「亜人コロスコロス」
「亜人、皆殺ス殺ス」
「人間最高」
「獣人コロスコロス」
虚ろな目をしたリッチーたちは、口々に何かを呟いている。
ベリアルと俺は至近距離まで近づくと、容赦ないブレスをベリアルがリッチーへ叩き込む。
「グチグチうるせえぞ、いっぺん死んどけ!」
「あいつら、もしかして元々キゾナの人間じゃないか?」
リッチーたちの身なり。それはどうみても人間の着る服そのものだ。
しかも、リッチーとなってから日が浅いのか、衣類も比較的綺麗なものが多い。
「知らねえな。攻めて来るのは敵だろうが。今更情けでもかけようってのか」
「そういうわけじゃない。ここで死んでも必ず輪廻転生出来るという確信があるからな」
「けっ。やっぱり甘ぇよ、おめえはな。あいつらがキゾナから来たってんならそれがどん
な意味を持つのか分かってるんだろうが」
「ああ。残虐な行為、差別、見下し。どれも目に余る行為だ。けどな……生まれる環境を
人は選べない。だからこそ死して、転生を望む。こう生まれていれば。こうだったら……
変えられない環境、覆せない状況。憤りを覚えるような相手だからこそ願う。次こそは
まっとうな生活が出来るよう、生まれてこい。無駄三昧のビノータスをこの手にかけたと
き、俺はそう感じたんだ」
「フン。哀れも同情も必要ねえ。あんのはてめえの守りたいものを守るため、襲って来る
奴らを薙ぎ払う。それで十分じゃねえか!」
俺たちを取り囲むリッチーたち。奴らは空中に浮遊し一斉に幻術を放出してきた!
容赦ない攻撃。やはりこいつらは厄介極まりない。
ベリアルは更に上空へと飛翔し、半径数百メートルにも及ぶであろうブレスをそいつらへ
放出した。
リッチーの幻術も上級以上。並み大抵の威力じゃない。
だが、ベリアルには関係ない。
俺は一匹の竜、ドラゴントウマに力を与え過ぎたのかもしれない。
それ程までに、今のベリアルを強く感じる。
「おら、見とれてるんじゃねえ! てめえの役割を果たしやがれ!」
「ああ。半分は俺が仕留める。両星の殺戮群……!」
更に一際大きくなったヒトデ型のそいつらは、残忍の化身のような奴らだ。
地上にて待ち構えたままのリッチーがおり、それらへ向け集団で襲い掛かる。
幻術を食らって倒れてもまた起き上がり、ひたすら捕食を求めるその姿はまるで悪魔の
ようだ。
「おい。あいつらも能力の統合を試してみねえのか?」
「そんなの、どうやって……両腕を天秤に乗せりゃいいのか」
「まぁやってみろよ」
「……あれ、先に放出した奴らの数が減ったな……うわっ!?」
次の瞬間、ずしりと巨大な星が降ってきた。
いや、ヒトデ型のでかいあいつだ。しかもヒトデっていうより人に近い恰好に
なっている巨大生物だ。
相変わらず口しかないが、何でものみ込んでしまいそうな巨体だ。
色は赤でも黒でもなく、肌色に近いから余計不気味だ……。
「何だ、あれ? 失敗だろありゃよ」
「お前が試せって言ったよな……リッチーもこいつらに任せるとし、て次はどうするんだ」
「南側がやべえが、中央は雷女の影響でほぼ制圧してんな。北と南に兵力が分散して
やがる。俺たちゃ南だろ。しかし解せねえな」
「何がだ?」
「大将はまだ一人か二人だろ。残りは何処にいやがるんだ?」
「敵本陣……海の上じゃないのか。後は南と北? 地下を解放したからそこからも来
るだろ」
冷静にリッチーを対処しながらベリアルと話を進める。
以前の俺ならこうは出来なかった。これも常時神魔解放出来ているお陰かな。
「上空が余りにも手薄だと思わねえか?」
「確かキゾナでは空は危ないって聞いた気がするんだが」
「つまり、いんだろ。竜種がよ」
「中央で雷帝が焼いてたんじゃないのか?」
「あんな雑魚竜じゃねえ! ばっきばきの奴が来るに決まってる」
「ばっきばきの竜? 何だそりゃ」
「いいから行くぞ! 胸騒ぎがしやがらぁ。西に突き抜けるぜえ!」
「お、おい! 南の軍勢はどうするんだよ!」
「なんとかしやがるだろ。合図出しとけ。本命は最後尾、非本陣の最南西に違いねえ!」
勝手に行動を進めるベリアル。
相手軍勢の一万以上が南から進軍してきてるってのに。
いや、戦の経験はベリアルが豊富。
此処は言われた通り合図を出すか。
ルジリトより託された合図を打ち上げつつも、ベリアルに乗ったまま西端まで到着す
る。
こんな場所、今まで一度も来たことが無いが、なかなかいい場所だ。
だが……「ったく何で嫌な予感ってのは当たりやがるんだろうな」
「な、なんだあれ? あんなのありかよ」
「バルフートにベヒモス。バルフートはてめえの世界でいうならバハムートともいう」
「あれ、魚だろ? 竜には見えないぞ」
「あの形態は魚だが、形を変えればあっという間に巨大竜だ。部類でいうなら竜に属さねえから
最強竜の類には入ってねえが……とんでもねえものを持ち出してきたな」
「あいつら、何なんだ、一体」
「古代種だ。キゾナってな古代種の巣窟みてえなところだ」
そういや移動牢ってのもあんな感じに足が無数にある化け物のようなやつだったな。
あれも古代種だったのか? 古代樹の図書館があったのもキゾナだ。
ロキめ……あんなのまで子飼いにしてたのか。
「足が数万はあるが、ゆっくり向かってきてるな」
「到達される前に落とすぞ。あれが到着したらひとたまりもねえ」
「上に乗ってるのはどうすんだ」
「俺が上のベヒモスをやる。おめえはバルフートをどうにかしな」
「どうにか? あんなのどうしろってんだ」
「頭を使え! いいか。おめえの封印能力は最強にして最悪なんだよ。あいつを封印してみやがれ。
そしたら俺がその能力を食らってやる。いいな、気合いれろ!」
なんつー無茶振りだよ。あんな怪物封印出来るのか?
いや待て。レウスさんですら封印出来たんだ。きっとあのノリで行けば!
「ちなみによ。あいつに敵として認識されてからしばらく経つと消滅のブレスを放出する。
それにあたりゃ俺もお前も粉微塵だ。覚えておきな」
……全然聞きたくない情報だった。
くそ! どうにかするしかない。覚悟を決めるか!
――ルインたちがバルフートを目撃した頃。
ルジリトはのろしが上がった場所を捜索していた。
「ようやく見つけた。ふむ、聞いていた通りだな」
「ルジ……リト。それ以上近づかないで」
「ミレーユ王女……それにアメーダ殿までハルピュイアに変わっていたのか」
「危険よ。恐らくハルピュイアの羽に触れると姿が変わり納涼が封印されるの」
「ハルピュイア本来の力はつかえないのですかな?」
「無理みたい。だからこそ私を逃がしたんだわ……でも、もう食べ物が無くて。お願い。
食糧だけ持って来て欲しいの」
ルジリトは思案する。
羽に触れたものをハルピュイア化出来る。
そしてその者の能力は封印される……か。
これは手を返せば非常に強力な戦力になる。
「今は戦時中。あなたの力を最大限に利用させて頂きたい」
「でも! 私は役に立たない! 魔術だって使えないのよ? 近づいただけでみんなを弱
らせてしまう。それが恐ろしくて……うぅっ……」
「アメーダ殿までハルピュイアに変えてしまう程の力。でしたら敵方にも効果があるので
はなかろうか」
「えっ? それは……そうかもしれないけど」
「その羽、少し落ちておりますな。ミレーユ殿自身その羽を持つことは可能ですな?」
「うん。もっていける。アメーダの羽も触っても私は平気」
「では、共に罠を張りに参りましょう。食事でもとりながらゆるりと」
「あなた、発想が本当におかしいわね。この状況で可憐な女の子を利用しようだなんて」
「そうですな。例え一国の姫君であろうとも、主の弟子であろうとも、ルジリトの役割は
決まっているのです。それにあなた自身、主殿の役に立ちたいと思っているはずですが?」
「……分かった、行く。アメーダはずっと意識が無いの」
「ふむ……失礼」
「駄目! 触ったらあなたまで!」
「構いませぬ。ルジリトの能力を如何に封じたとて、この頭脳を封じれるはずもござらぬ」
アメーダに触れ確認を始めるルジリト。
衰弱はしているが肉体に負った傷は癒えている。
意識が無いのは休眠状態に近いからか……。
「触れて直ぐハルピュイアに変わるわけではないのですな」
「うん。何日かしてから。でもどうするの? 一生戻らないかもしれないのよ?」
「そんなことはあるまい。仮にそうだったとしても己で選んだ道だ。後悔すまい」
二人を連れたルジリトは、リュシアンに伝えると、自分も構わないといい二人を背中に
乗せる。
その間にも戦況は変化を始め、徐々にルインの軍勢は敵軍に取り囲まれる形となってき
た。
「ふむ。戦況は予想通り我が軍の圧倒的不利。戦を返すのはこれからだ。策とは敗北を想
定したときにこそ、真価を発揮するもの也」




