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第八十一話 ルインの領域

 シャドウムーブの中は完全なる暗闇。

 何も見ることができない。


 リルの説明によれば、場所はフェルス皇国妖兵エリア東南端のため、わかり

やすい場所との事。

 急激な疲労感で倒れた俺は、そのまま意識を失いながら運ばれた。


「着いたよ。ここが泉前さ。ここからは君が領域を開いた上で

僕らに入っていい許可を出さないと辿り着けないから。

ちなみに領域はその人の想像力にもある程度左右される。

区画は決まっているけど中を構築するのは君自信さ。

楽しい場所を用意してね」

「ジオラマアートみたいなものか。それは願ったりだな」

「ジオラマアート? また変な物を想像してとんでもない事を

しようとしていないかい?」

「大丈夫だ。住みやすい場所とこうしたいという場所は用意したい」

「言っておくけど君が実際目にしたものとかじゃないと難しいと思うよ」

「そりゃそうか。空中に浮かぶ城とかお菓子で出来た家とか

想像しても実際現物を見たこともないしな」

「そういうこと。出来ることと出来ないことはある」

「じゃあ行ってくる。期待して少し待っていてくれ」


 そう伝えて泉に飛び込んでいった。

 思い描いたのは、メルザに会って目を治してもらった時に見えた夢。


 巨大な木に大きな穴が開いていて。

 美味しそうな食事ができるスペースと厨房。 

 そこでよくわからない仲間たちととても楽しそうにしていたその場所。


 その光景には武器も見えたから、鍛冶場を。それに温泉も欲しい。

 沢山の個室と来客用に寝れる部屋。大部屋も欲しい。

 畑もあるとカカシが喜ぶな。

 パモやココットやここで捕まえたモンスターが放し飼いにできる

牧場みたい場所もあればなぁ……これは願い過ぎなのかもしれない。

 どれか叶ってくれると嬉しい……そう思い描きつつ、泉から浮上した。


 ――――これ、絶対呆れられるな。

 泉を出て真っすぐ北へ道がある。

 まず右手に牧場らしきもの。

 左手に畑が見えてくる。更に道なりに北へいくと、右手に温泉らしきもの。

 左手に宿舎みたいな物が見えた。

 更に北へ行くと右手と左手に建物がみえる。

 きっとこれ個室だ。

 そこから北へ進むと、巨大な木があり、中がくり抜かれている。

 その中に入ると厨房と広い食事処があった。


 夢でみたような、本当に楽しそうな空間。

 ここにメルザたちを呼べたなら、俺はどれほど嬉しいのだろうか。

 そしてメルザの事を、とても強く思い出してしまい――――。


 俺は膝から崩れ落ちた。

 会いたい、会って安心させたい。

 会って頭を撫でてやりたい。

 あいつはきっと今泣いている。

 俺のせいで。考えないようにしていたのに。

 早く会えると思っていたのに。

 領域に来て一人きりになり……ようやく、内に溜めていたもの

全てをぶちまけるように

 ――――泣き叫んだ。

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