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第八十話 妖陽炎術の練習

 ――しばらくして、リルとサラが戻って来た。

 いや、来たんだけどあきれ顔だった。


「……ちょっと目を離すと君はとんでもない事をしているね」

「あの、ごもっともです」

「あたしこれ欲しいかも。もらっていい?」


 やっぱり俺の封印の仕方が普通ではなかったようだ。

 そもそもリルたちはモンスターの取り外しなど出来ないし、そんな前例はない。


 俺が掃除機で……とかアクリル板が……といっても伝わらなかった。

 そのイメージこそが大事なのだろう……が、前世で見てないとわからないよな。

 しかもスライムを出して一緒に戦わせるシーンを見せたら頭を抱えてしまった。


「君は無茶苦茶だけどますます気に入ったよ。僕の妹と結ばれる気はないかい?」

「あたしもあなたならいいわ」

「待て待て勝手に話をすすめるな!」


 気に入ってくれるのは有難いが、俺にはメルザという心に主と決めた方がいる。

 これは死んでも譲れない。


「そういえばリルたちはモンスターを捕まえられたのか? あんまり移動した

ようには見えなかったけど」

「シャドウムーブっていう特殊移動方法があってね。影になる場所を

結んで移動する方法なんだけどね。邪術が使えないと出来ないんだ」


 影を使って移動とは便利そうだ。特に夜間において行動範囲が異常に

上がりそうだ。


「君はまず妖術から練習しないと。まったく……妖術の根底をひっくり返す

なんてね。フェルドナージュ様が聞いたらまた君を……」

「自重するから! それで妖陽炎術ってどうやって使うんだ?」

「サラ、見せてあげて」

「わかった。こうするんだよー」


 そう言うと術を行使し始める。

 すると、サラが突然凄くブレて見えた。

 陽炎ってその陽炎か!? これなら俺もイメージしやすい。


「なんか、すごい嫌な予感がするんだよね。またおかしな事をしそうで」


 確か陽炎って密度の違う大気が混ざりあってぐにゃって曲がってみえる

やつだよな。こう、ぐにゃって……。

 俺はイメージ通りに表現しようと試みる。すると……。


「くっ あははははは、なんだそれ。やっぱ君は面白いな」

「ぷっ。うふふふふ。お兄ちゃん、笑っちゃ悪いよ。うふふふっ」

「そんなに面白い状態なのか?」

「だって君、すんごい横に引き伸ばしたみたいになってるよ」

「あー、お腹痛い。涙出てきた。あたし」

「いいかい、イメージとしてはそこにあって無いもの。目の前に見える

のに、触ろうとしても触れない。そんなイメージさ」

「ほら、あたしのここ、触ってみてよ、触れないから」


 そう言うとサラが自分の胸をさす。

 触れない試し場所として適切か? そこ。

 まぁ触れないならいいか。


 むにゅ。


「ああ、あたしもうお嫁にいけない身体になっちゃった。責任とってよね」

「ちょ、え? 自分で触れって言ったんじゃ!? しかも触れないんじゃ?」


 ずるいぞ! ハニートラップや! しかもこれじゃ使えない技の説明だ……。


「サラ、それじゃ使えない技の説明だよ。やれやれ……さっきの説明

でできるかい?」


 考えをフォローしてくれたリル。妹をなんとかしてくれ……。


 ……もう一度妖陽炎術について考えてみる。

 触れそうで触れない……陽炎とはちょっと違う。

 そうか、蜃気楼か! 確かに陽炎を蜃気楼とも言うな。

 改めて砂漠で見るような蜃気楼を思い描いてみた。


「おー、出来てるね。触れないや」

「あら、ほんとね。私の胸を触った手を触れない」


 すみませんでした。秘密でお願いします。


「ただ、今の君じゃその状態、もって三秒ってとこだろうね。

すごく疲れるから気を付けてね……言うのが遅かったかな」


 大の字に倒れる俺。メルザと出会い立ての頃より体力がないんじゃ

なかろうか。


「仕方がない。このままシャドウムーブでフ領域に行ける泉まで連れ

てってあげるよ」

「あたしも行くね。面白そうだし」

「悪いなリル。何から何まで」

「気にしないでよ。僕は君を気に入っているんだ」


 そういうと、リルは俺とサラに触れて移動を開始した。


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