第八百七十五話 最強の管理者、冥暗のタルタロス戦その二
三部構成となります。
明日その三をお届け予定です。
吹き飛ばされた俺は、再度形成を立て直すが……容赦ない追撃が差し迫っている。
「くっ! 妖楼! 流星!」
「悪くない判断だ」
追撃された触角を妖楼で回避しつつ、更なる追撃を備え流星で一気に移動した。
移動距離は調整出来ないものの、通常移動するより離れた位置まで一気に行ける。
「てぃーちゃんそろそろ帰りたいでごじゃろ……タルタロス怖いでごじゃろ……」
「お前……久々に喋ったと思ったらそれかよ」
「コラちゃんも怖がってるでごじゃろ。魂抜かれるでごじゃろ!」
「そーよそーよ! あちしだって戻りたい……もう消えてもいーい?」
「リーサルレデク!」
「いやーーー!」
コラーダがギリギリと赤い閃光を発して手元から離れる。
望み通り手元から消してやったぞ、コラーダよ。
……リーサルレデクは回避されたことがほぼ無い。
しかし……回避ではなく触角で受け止め切られた! 信じられない、何て奴だ。
「剣戒….驚、懼、疑、.惑! やはり三本しか出ないか。リーサルレデク・ターナリー!」
三本の産み出されたコラーダを指の間で挟むように持ち、リーサルレデクをぶっ
放す。
それらはギリギリと手元を離れ、赤い閃光をかざして、まるで三角形を描くよう
にしてタルタロスへと解き放たれる。
「四門地獄」
「なっ!?」
三本のリーサルレデクは、タルタロスが保有する玉へと飲み込まれていた。
その光景に映し出されていたのは、無数の剣が突出する林のような場所。
何だ? この能力は。
「お前はやはり運が無い。よりによってこの地獄か」
「一体何を言っている。勝負はまだこれから……」
言いかけた途端、風景が先ほどあの玉に映し出されていたような景色へ変貌している!
バカな……ここはヒューメリーの領域だったのだろう?
領域を越えて違う空間でも持ってきたってのか。
それか俺があの玉を覗き見たから幻覚を見せられた!?
「剣戒……剣は戻るか。それなら幻覚じゃないな」
「ここは四門地獄、位置は剣葉林。動けば身を斬る林だ。さぁどうする?」
周囲一帯が鋭い刀の集合体。確かに身動きが取れない。
開いてるのは上空だが、上空はあの触角の餌食だろう。
俺が絶魔で放てる幻術を駆使するか、或いは……ラモトでの奇襲か。
奴は動いていない。
まずはあの触角を防ぎつつ周囲の剣林をどうにかするのが先だろう。
「両星の殺戮群……来い!」
赤と黒のヒトデ群をその場に招来し、剣の林を食うように指示する。
奴らは直ぐに行動を開始し、美味しそうに剣を丸のみにしていく。
だが……「その能力では食えんぞ」
「何?」
ヒトデたちは剣を頬張り、その場で次々と消滅していった。
剣を吸収出来ていない? これじゃ能力の無駄遣いだ。
しかも奴はこちらの能力を探るような動きしかみせていない。
この状況を見て、タナトスが茶々を入れ始めた。
「もー、しょうがないな。四門地獄まで出して。大人げないよタルタロス!」
「……試合は試合だ。お前は黙っていろ」
「これじゃどうあがいても太刀打ち出来ないでしょ。ヒントを上げるよ。彼の産み出した
この地獄に構わない方がいい。構ってる暇があったら本体を叩くんだ」
「それは、ヒントって言わないだろ。こんな林で戦闘したらバラバラに……」
いや待てよ。そうか、それなら条件を変えてやればいいか。
「妖氷雪造形術……冬の嵐!」
凍てつくような猛吹雪を放出させ、周囲一帯を凍らせる。
ヒューメリーが寒そうに身を更にもふもふで包むのが一瞬見えた。
「なかなかの氷量だ。地獄でも使えそうだな」
「そんな場所で働くつもりはない! 行くぞ、タルタロス!」
剣の林を丸ごと凍らせたそのときだった。
封印にしまったベリアルが姿を現した。ようやくかよ。
「くそ、色々と危ねえとこだった! なんだあのげろ不味い飲み物はよ!」
「遅いぞおい。行くぞベリアル」
「思い切りぶん殴ってやるぜタルタロス!」
再度現れたベリアルは現在鳥の状態。
ここからが巻き返しの時間だ!
今更ながらですが……
コラーダの剣戒、こちらは適当につけたものではありません。
剣道をやったことがある方ならご存知かと思いますが剣道における四つの戒めより用いております。
1.驚
予期せぬ相手の動作に驚くとき、心身が混乱し、正当な判断を失い、呆然自失する場合がある。
2.懼
恐怖の念にかられると、精神活動が停滞し、手足がふるえその働きを失う。
3.疑
疑がわしきとき、相手を見定めず、迅速な判断、動作ができない。
4.惑
戸惑う場合は混乱を引き起こし、迅速な判断、動作が出来ない。
これらを戒めるものを差しています。
ティソーナにおけるサルバシオンはまた別の設定を考え、用いています。




