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異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー  作者: 紫電のチュウニー
第五部 主と建国せし道 第一章 ジャンカの町 闘技大会

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第八百四十一話 死霊族の封印

 急激な睡魔に襲われて目が覚めると、俺は地面に突っ伏していた。

 ゆっくりと起き上がり上空を見上げると、そこには夕闇の世界が広がる。


 タナトスの領域。

 死の領域というその場所は、相変わらず上空に無数の鳥がおり、こちらを見下ろす薄気

味悪い場所だ。


 俺の近くにはアメーダ、そしてプリマも横たわっている。

 二人を揺り動かすが、全く目を開けないので仰向けにして寄り添わせておいた。

 

「起きるのが早いね」

「タナトスか。何処にいる」

「君の感覚なら分かるんじゃないかな」


 感覚? 第七感まで常時解放されてるんだったな。

 やっぱり目が見えてるってのは感覚が大きく阻害されるのか。

 目をゆっくり閉じてタナトスの気配を探ってみると……上空から嫌な感覚が凄くするのに気づく。


「上か。鳥に入れ替わり遊んでる場合か? 一体あの後どうなった」

「正解。慣れるのには時間が掛かりそうだね。君の絶魔が不十分過ぎて、このままだと周りの

皆を自分の力として取り込んでしまう。私は君に最大の欠点を制約として与えたんだ」

「どういうことだ? 俺が……周りを力として取り込む? 最大の欠点? 何だそれは」

「君は意識を失うと昏睡する。つまり制御出来なければ役に立たない力だ」


 それならまだ、以前の形態の方がよかったんじゃないか。

 戦闘中昏睡したら……使えないに等しい。


「その顔は、使わない方がいいって顔だね。危険性を考慮して行動しないのは如何にも人間の

考えだ。魔族はそんな慎重じゃない。周りがどうなろうと気にしない者が殆どだ。だから君が

ただの魔族だったらこんなことはしなかったのさ」


 タナトスなりの配慮……っていうより、暴れて無茶苦茶になったら俺が手をつけられないか

らっていうのが正しいのだろう。

 初めてタナトスに会った頃からそうだが、他者のために行動するタイプにはみえない。

 タルタロスとは仲がいいみたいではあるが……。


「それで、戦闘中昏睡となったら困るだろう? そこで! 弟の領域で戦闘訓練をしても

らう。弟を呼ぼうと思うけど、いいかい?」

「弟ってお前、兄弟がいるのか。管理者ってそもそも何なんだ」

「君は君自身が妖魔であり元々人間だったということを証明するにはどうしたらいいと思う?」

「信用してもらうだけの行動と実績……か?」

「いいや、そんな話じゃないよ。もっと分かり易く言おう。君がこうして存在している証

明はどうやってする?」

「それは……難しい質問だな。俺が俺である理由?」


 まるで哲学のような質問だ。管理者っていうのはどれも本当に癖がある。

 俺の存在表明……或いは、そうか。


「他者だ」

「その通り。君は君自身の存在を、君だけで証明出来ない。周りに誰も居なければ、自らの存在を

肯定出来ない。君がここにいてどのような存在かを認識する必要があるのは他者。つまり……もう

分かるかな」

「世界の人々を肯定する存在が、管理者……」

「うん。いい答えだ。そのために私たちは造られた。生物は死を、魂を、闇を、時を肯定される。

ここまで言えば皆まで言わなくても分かるね?」

「ああ。あんたの言う弟は、眠りを肯定する存在。寝ているということは誰かに認識されないと

意味を持たないってことか」

「あらゆる面でそういった肯定する存在がいる。それが、管理者だ。絶対神が直接手を下したのは

四名だけだけどね」

「そうか……その四名が何故俺を見染める。何故俺へ手を貸したりするんだ?」

「君は、存在が面白い。それだけだよ」

「……ふっ。はっはっは。お前、案外面白い奴なんだな。俺より面白そうな存在、沢山いるだろう

に。あまり笑う方じゃない俺が、面白い……か。分かったよ。絶魔の力を受け入れ修行する。どう

したらいい? ここはアルカーンさんの領域と違って、時は流れてるんだろう?」

「弟の力を使う。君は眠りの中で修練を積む。起きるのは明日となるだろう。そして、その眠り

に彼女たちを連れて行く覚悟を決めるんだ」

「アメーダ、プリマを封印しろと言うのか。死霊族ってそもそも封印出来るのか?」

「可能なはずだよ。言っただろ。彼女たちはアルカイオス幻魔の流れを組む者。魂は死してなお蘇

り、このゲンドールを存続させる強い存在。当然死霊族二名を殺したりしたら大変だ。つまり君は

また一つ、死ねない理由が出来たわけだ」


 二人とも起きていたのか。

 出来ればこれ以上封印者を増やしたくは無かった。


「ようやくあなた様の許へ。ずっと待ちわびていたのでございます」

「すげー快適なとこなんだろ。レウスが毎回自慢するから早く入ってみたかったんだ」

「本当にいいんだな」


 しかし、二人とも覚悟を決めている顔だ。

 封印が増えれば増える程、他者の命を背負う重みが増す。

 それでも、もうこいつらは失いたくない家族だ。

 メルザを女王として建国を決意したときから、何十、何百という命を背負う覚悟はした。

 

「アメーダ、プリマ。その強い力、貸してもらうよ」

「君の封印は黒衣へと統合した。数を増やすのはカイロスに頼んでね。とはいっても君が

絶魔の力を制御出来ないと、黒衣を自由には出せないけれど」


 二人を封印する箇所を指定……出来ない。

 どうすればいいんだ? 

 ベルトが消失して見えないままだから、このままだと封印出来ないんだけど。


「おい。どうやって黒衣に封印するんだ?」

「えーっと……絶魔して直ぐ?」

「いい加減だな……仕方ない。やるか」

「終わったら直ぐ弟のヒュプノスを呼ぶから。この領域、親族は自由に入れるんだよね」

「……いっそお前を封印したらいいんじゃないかと思って来たわ」

「それは勘弁して欲しいな。世界の理を封印なんて……そういえばディーンを封印したん

だっけ。スキアラが激怒しそうだけど」

「やっぱお前を封印するのは遠慮したいわ。腹黒そうだし……よし、腹くくるか!」

【絶魔】


 再度襲う高揚感に負けまいと、急いで二人を封印した。

 そして……直ぐに眠気が襲って来る。


「やれやれ。ついでだからそのまま弟を呼び込もう。後は眠っている彼女と対談もさせよう。

ことは一気に動くだろう。いや、ここだけじゃない。地上も、地底も……」

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