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異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー  作者: 紫電のチュウニー
第五部 主と建国せし道 第一章 ジャンカの町 闘技大会

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第八百三十八話 リベンジマッチ! 

「本日の二戦目を間もなく開始します! アメーダ選手対テンガジュウ選手。どうぞ!」

「ようやく出番でございますね…今度は容赦しないのでございます」

「はぁ、やり辛いあの女か。適当にやって負けちゃおうかなぁ。でも見られて戦うっての

は悪くないもんだな」


 二戦目はテンガジュウとアメーダ。

 両者の実力は多少知っているが……アメーダの力はそこまで把握していない。

 あの雷鎧を貫通するのは至難だろう。


「この戦いはどうみる?」

「テンガジュウが有利かと思ってるけど、死霊族って幻術使いなんだろ?」

「原初の幻魔。それはゲン神族の持つ神の力を強く受け継いだ種族だ。死んだ魂は本来

作り替えられるが、彼らの魂はゲンドールへと留まろうとする。極一部がやがて肉体を

得て蘇る。それが死霊族」

「ゲンドールという世界が死霊族を作ったってことか?」

「分かり易く言うならそういうことだね。つまり……」

「この大気が強い影響を彼らに与える……とか?」

「少し違うがそのような雰囲気だ。苦しめられた彼らは、何かの力で守られている。そ

れが何なのか……管理者でも分からないんだ。でも、絶対神ウナスァーがこう告げてい

たんだ。彼らは死して尚、ゲンドールを支えている。彼らを失えばゲンドールを維持出

来ない……ってね」

「ウナスァー? そういえば全然知らない絶対神だな。タナトスの想像神か。ゲンドー

ルを支える……か。そういえばそんな感じの性格だな、アメーダは」


 いつも助けられてばかりだった。彼女には大きな恩返しをせねばならいと思っている。

 アメーダは開始前、こちらを見て微笑んでいるようだった。

 なぜ俺へそこまで奉仕するのか。それはきっとカイオスの……「試合開始です!」


 先に動いたのはテンガジュウ。

 雷電の魔鎧を迸らせ、睨むようにしてアメーダの前に立つ。

 一方アメーダは、仄かに笑みを浮かべたまま、片足をゆらりと上げる姿勢を取る。

 そのまま身に着けていた衣類の一枚を、少し離れた場所へと放り投げた。

 観客から違う歓声が沸き起こる。

 

「いくぜ姉ちゃん、恨むなよ! 連電活性鎧砲!」

「うふふふふふ……」


 すると、電撃を放出した方向にアメーダはおらず、放り投げた衣類の方へ瞬時に移動し

ていた。

 あれは……俺の手にしたマーキングと同じか? 

 あんな風に移動してたのか。幻術の類なのか? 


「あれ、どうやってるんだ?」

「君には出来ないことだから、考えても仕方ないと思うけど。あれは存在転移だね」

「存在転移? 転移の一種なのか」

「そう。自分の存在を植え付けたものに条件を付与して転移する恐ろしい力だ。彼女は何

処かで強いカイオスの影響を受けたんじゃないかな」

「カイオスの影響なら、俺にも出来るんじゃないのか?」

「君、あれどうやってるか想像つくの?」

「いや全く。これっぽっちも。理解不能」

「……」


 じっと俺の方を見るタナトス。

 こいつにじっと見られると、どういうわけか殴りたくなるのは何故なのだろうか。

 日頃の行いか? どうにもこいつからは真面目な雰囲気がしない。

 敵ではないのだろうが、味方と強く感じられないような相手だ。

 死の管理者っていうくらいだし、近くにいると生きた心地がしない……のが原因か? 

 俺はあまりそうは感じないのだが。

 肩書きを改名してくれないかな。

 死神の遣い、フワーとかでいいだろ、こいつは。

 いや、あの技は絶対レウスさんがそれっぽく着けただけで死神でも何でもないのだが。


「一気に勝負をつけるつもりだよ。ボーっとしてると見逃すんじゃない?」


 アメーダはくるくると指先を回転させ――掲げた中指に氷を薄く伸ばした円状の巨大な

ものが出来上がる。

 

「器用だ。あれほど氷幻術を薄く引き伸ばすとは。しかもそれだけじゃない」

「あの氷、先端が鉱物を含んでるな」

「よく気付いたね。さぁどうするつもりかな、雷電鎧のテンガジュウ」

「あいつ多分まともに受けるぞ」

「え? さすがにあれは避けるでしょ。雷じゃ撃ち落とせないよ、あんなの」

「だってあいつ、脳筋だ。毎回ベルベディシアの言う通り筋トレやってるし」

「そういえば……基本否定はしないよね、彼」


 予想通りというか、腰を低くして正面から受け止める姿勢をとるテンガジュウ。

 アメーダは薄い笑みを浮かべたまま、巨大な薄い氷の円をテンガジュウへ向けて投げ飛

ばす。

 空気を切り裂くヒューーーという音が聞こえたのも一瞬。

 空中で百八十度綺麗に回転して、テンガジュウの胴体を真っ二つにしかねない動きで向

かっていったのを、テンガジュウが挟み込むようにして止めにかかった! 

 覆いかぶさるようにして止めてはいるが、そこへはバチバチと雷が迸る。


「止めれば俺の勝ちだ!」

「いえ、あなた様の負けでございます」

「へ?」

「あいつ脳筋だろ?」

「そうだね。避けるしかなかったのに」


 氷の円に乗るアメーダは、テンガジュウの顎先を蹴りあげ、氷の円を上空へと放った。

 テンガジュウはどさりと倒れ、上に打ち上げた氷円を丁寧にキャッチするアメーダ。


 観客からは大声援と、女性陣の黄色い声が上がる。

 衣類を脱いだとき上がったのはこの声だ。つまり……今日のアメーダは黒いタキシード

のような恰好をしている。

 まるで美男子のように見えるその姿は、実に美しいものだった。

 ……そう。これは商戦。アメーダは既にベルローズブランドの虜。

 何せ背中のマークはどの商品よりも大きく、【ベルローズ】と刻まれた美しい文字が書

かれている。


「動く看板だ……」

「あの服いいね。仕立ててもらおう」

「勝者、アメーダ選手……あれ? もういない!?」

「あなた様! やっと傍で見てくれたのでございますね」

「おい! いきなり飛び込んでくるな!」


 勝利を祝ってもらうため、手の甲に突如現れたアメーダだった。


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