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異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー  作者: 紫電のチュウニー
第五章 親愛なるものたちのために

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間話 どんぐりの背比べ

「ほら見てよ。このクウの顔。完璧に勝ちだわ。私の」

「はぁ? 何言ってるのよ。見て、このクリクリの目。確実にエイナの方がルインに似てるわ。

クウは可愛いけど、リルに似てるじゃないの」

「バカ言わないで。お兄ちゃんのやる気ないほんわかお目目とクウのを一緒にしないでよ。

エイナだって可愛いけど、その鼻はあんたそっくりじゃないの」

「……結局二人共、子供にデレて褒め合ってるだけっしょ。ね? ルティア」

「だうー」

「くっ。今の聴いた? だうーですって。何てあざとい喋り方をするのかしら。

ルティアったら。可愛いすぎじゃない!」

「クウ。あんたも言ってみなさい。ほら。だうー」

「あうあー」

「……これ、父親に似たのかしら。そうよね」

「確かにルインならこういう感じよ、きっと」

「ふんふふーん。レインが一番、大人しくていい子ねー。キャハハハ」

「キャウキャキャ……」

「……あんたそれ、子供にも移ってるじゃない。止めなさいよね」

「えー? 可愛いでしょぉ? ねー、レイン」

「あうあー」

「……やっぱルインの子よ。クウと同じ返しだったわ」

「……そうね」


 四人の母親たちは、新しく建てられた家で、子供と向き合っていた。

 そして今、子供たちは大きなカメの背中に乗っている。


「もう降ろそうよぉ。僕、ルインの子を落としたりしたら困るよぉ」

「しっかしイビン。あんたがまさか変身出来るようになって戻って来るとは思わな

かったわ。これ、カメって言うんですってね。不思議だわ」

「見てよこの放心状態のレインとクウ。まるでルインだわ……」

「ぷっ。確かによくこういう顔してたっしょ。今頃何処にいるのかしら」

「……ファナには言い辛いんだけど、カッツェルからロッドの

町に行くって言ってたわ。幻魔神殿について調べて来るって」

「そう……私には嫌な思い出しかない場所ね……でもあれは、デイスペル

だったから……」

「リュシアンも一緒だったから、デイスペルにも寄って来るんじゃない? 

他に幻魔神殿って何処かにあったかしら?」

「世界各地にあるらしいわ。詳しい場所はアメーダが知ってるみたいよ。

でも、何で今更あの神殿に? ジョブってよからぬ力だったんじゃ

ないの?」

「それはジョブカードの話ね。ジョブ自体は恐らく……幻魔の力よ。

そういえば妖魔のあんたには使えないんだったわね。地上の奴らと

妖魔人って構造が違うのかしら」

「そうじゃないの? だって地底で誕生させられたんでしょ、私たちって」

「妖魔と幻魔か……相容れないような組み合わせを持つルインって、そこが

魅力なのかしらね……」

「それだけじゃないっしょ。責任感もあるし、行動力もあるし。そして何より

強いし」

「でも、戦うのを避けてる。そんな気がするの。特に最近はね……」

「それは私も感じてるわ。それってきっと、私たちのせいよね……」

「私ね。この子が育つまで、領域から出るのは止めようと思ってるの。

そりゃあ外で羽を伸ばしたい気持ちもあるわよ? でもね……エイナと

私が、ルインの足かせになるのは嫌なんだ……ただでさえ、私が足かせに

なってるのに……」

「はぁ? 何言ってるわけ? あんたなんか足かせでも何でもないわ。

ルインが気にしてくれてるのはクウと私に決まってるじゃない」

「ああん?」

「また始まったっしょ……それ、どんぐりの背比べっていうらしいっしょ。

ほらルティア。笑ってあげよ。でもファナの言う通り、領域から出な

いってのは賛成っしょ。うちなりに子供は育てたいし。カルちゃんに

負けてられないし」

「それは言えてるぅー! レミだって、レインがカルちゃんを

引っ張って連れ回すいい男に育てたいしー」

「ちょっと待ちなさいよ! その役目はクウに決まってるじゃない! 

何言ってるの?」

「あら。第一王女はカルネに譲っても、第二王女を譲るつもりはない

わよ、ベルディア」

「生まれた日が一緒でわずかに先に産まれたのがカルちゃんなんだよ

ね……第二王女がエイナ、ルティア両方だわ……」

「第一王子は?」

「クウ」

「レイン!」

「これ、争いの火種になるんじゃないかしら……」

「ルインに聞いて決めてもらったらいいっしょ」

「……聞くまでも無く、答えに予想がつくわね……」

「本当よ……」

『どっちも第一王子でいいだろ』

「そうよねぇ……レイン第一王子! どう思われますかぁ? 

キャハハハ!」

「あうあー」


 イビンの上に乗せられた子供たちは、すくすく育っている。

 イビンはカメになりながらも思うのだった。


「僕、幸せ者だけど不幸せだなぁ……町の巡回警備もしないとなんだけど

なぁ」

「そうだわイビン。あんた、幻妖団メルの第二隊長に任命され

てたわよ」

「えぇ!? ぼぼぼ、僕が第二隊長? 無理だよ、無理ー! そそ、そん

なぁ」

「っていっても、あんたは私たちの子供の世話係も任されてるから、ルイ

ンにとことん信頼されてるのよね。お兄ちゃんがいない今、あんたが男で一番頼られて

いるのかも。ビーさんもだけどね」

「ミズガルドさん? ミズガルドさんが第一隊長なの? そういえば最近見てないよ?」

「それは……ねえ?」

「ねえ? 聞くだけ野暮よねえ?」


 ファナとサラは向き合って笑う。

 なんだかんだで喧嘩する程仲がいい典型的な例の二人。

 こうやって毎日のように、どんぐりの背比べをする二人を見つつ、ベル

ディアもレミニーニも過ごすのであった。

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