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異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー  作者: 紫電のチュウニー
第五章 親愛なるものたちのために

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第七百九十八話 ルーンの町初の武闘大会

「武闘大会……ですの? わたくしの部下が? あなた方と? なぜ?」

「ベルベディシア殿が攻めてきた時に、俺の町の奴らは随分と殺気だってね。

みなどうも、戦いに飢えているような感じだった。ここ最近激しい戦闘も無い。

なまってもらっても困るからな。何せこの町……いや、大陸を狙ってる奴に

思い当たる節が幾つかある。戦える奴はきっと、武器を手に取り戦うだろう」

「ふぅん。いいですわ。テンガジュウ。戦いなさい」

「またテンガジュウを!? 我が君!」

「ビローネも暴れたい!」

「別に参加者は一人だけじゃなくてもいいぞ。複数でも」

「それならわたくしが出ますわ!」

「あんたはダメだ。観客席に特等席を用意してやるから、そこで見て、ある判決を

する側に回ってくれ」

「ある判決ですの? 何をするんですの?」

「戦いとは勝ち負け以外にもあるだろう? 例えばある選手の行動のこの部分が

優れていた……とか。このコンボの繋ぎが実にいいが、惜しくも負けたとか。

そういった参加者の中からえりすぐりの部分を探して評価する役。

これは強者で動きを見切れるような、一部の役割の者にやってもらいたいんだ」

「敗者も評価対象ですの? 評価だけでいいのかしら?」

「ああ。そこに褒賞を出す」

「おかしなことを考えるのだな。貴様……いやルイン殿は」

「おかしいか? 評価される部分は、評価して然るべきだろう? 勝敗は

確かに勝者のみ評価されるだろうが、対戦には相性や運もあるだろう」

「へぇ……あなた、変わってますわね。いいですわ。そちらも面白そうですわね。

ではわたくしたちからは、ビローネとテンガジュウを出しますわ。ベロアでは

少々、手加減をしないと殺してしまいますから」

「くっ……我が君がそう仰せであれば従います」

「んじゃ、それも含めて連絡するよ。だから一度城に戻ってくれ。

まだあんたらが攻めて来たことに、警戒してる奴らもいるんだ」


 特にランスロットさんはいい顔をしないだろう。

 あの二人も探さないと。

 ひとまずルーンの安息所へ行こう。


 雷帝ベルベディシアとのやり取りを終え、ルーンの安息所へ赴く。

 室内にはビー、レナさん、メナス、ルジリト、そしてランスロットさんと

モジョコの手を引くグレンさんがいた。


「お早う皆。ちょうどいい面子が揃ってる」

「おいおいシー。子供の許に居なくていいのか。こっちは慌てず連絡受けながら

仕事してもいいんだぜ」

「お早うございます。ルインさん。この町に来て、幸せに暮らせています。

あの……先生の事、聞きました。私、先生の分も音楽を奏でますから!」

「レナさん……ブネの事は残念に思ってる。有難う。ビーと仲良く過ごしてくれ。

俺の子供は平気だよ。それと、ランスロットさん、グレンさん、モジョコも。

昨晩はすまなかった。町の運営に関してはルジリトに一任させて

しまっている。皆も手伝ってくれてありがとう」

「ルイン君。グレンと二人で町をよく見させてもらった。それとルジリト殿

より昨晩の話も伺った。驚いたよ。私の町に最も不足している、木材の資源の

調達も容易なようだ。ジパルノグにある泉と君の泉へ繋げられる方法があるとも

聞いた。こちらは実行に移してもらって構わない」

「本当ですか!? それはとても助かります。これでまた新しい交易路が開け

そうですね」


 一つの課題だった他の地域との取引が確立出来た。

 これならモジョコもミットちゃんに会いに行きやすいな。

 

「それと君の伝書の修業の件。これは私がここに住み込みで行うとしよう。

しばらくは厄介になるよ。そうそう、レンブランド・カーィが後ほど鍛冶場に

来て欲しいと言っていたよ」

「有難うございます。わかりました。必ず伺います……ルジリト、報告を聞いて

もいいか?」

「主殿。さすがにここでは。執務室を設けましたので、そちらで」

「わかった。メナス、ついて来るか?」

「私が行っても? 私なぞ、大した役には……」

「何言ってんだ。銀髪長身のメナスは執務室の秘書に決定だな」

「はっはっは。主殿。それは良いお考えですな。何せメナス殿は元々貴族の家系。

よくお似合いでしょう」

「執務をメインで執り行うのはルジリトだ。よく守ってやってほしい」

「わかった。任せて欲しい」


 メナスはよく目立つからな。美しく長い銀髪が、きらきらとよく揺れる。

 面は銀色の装飾の無い面を装着してる。素顔、見られるのはやっぱり嫌なんだな。

 そんな傷、この町に気にする者などいないが本人は嫌なのだろう。

 ニーメにもう少し綺麗な装飾をしてもらった面を頼んでおこう。

 その方が美しさが際立つ。


 ――それからしばらくは、ルジリトの話を聞き、鍛冶場へと赴いた。


「ようやく来てくれました! 待ってました! ルインさん!」

「到着早々ばたついてしまってすまない。カーィ。どうだ? 町に来た感想は」

「私、ここに住むって決めました」

「気が早いな……」

「だって、アーティファクト生成。出来るんですよ!? これがどれほど凄い事か

信じられますか? 絶対頼み込んで教えてもらいます。いいえ、技を盗んで見せます!」

「落ち着いて欲しい……相手はまだ……あれ? ニーメは幾つになったんだ? 

年がわからなくなったぞ。そもそも年齢は定かじゃなかったか」


 声が聞こえたのか、ニーメがやって来た。

 随分と背が伸びた。可愛さが取れてきて、立派な男の子って感じだ。

 たくましく育ってくれた。本当によかった。


「ルインお兄ちゃん! お帰り。このお姉ちゃんがどうしてもここで働きたいって。

いいのかなぁ? アル師匠に怒られない?」

「そうだな……彼女はレンブランド・カーィという、ジパルノグという国で鍛冶の店を

経営する、確実な鑑定眼を持つ者だ。ニーメも学んで欲しい所がある。

俺はお願いしたいくらいなんだが……カーィ。時計は造れるか? ここに沢山あるような

物なんだが」

「これ……凄い。こんな細かい細工を。部品全て、手作りですか?」

「そうだよ。手伝ってもらったりはするけどね。僕ともう一人の鍛冶師だと町全体補えないから」

「町全体をほぼ二人で……ルインさん。信頼出来る者を四名、呼んで参ります。

絶対に問題を起こさず町の役に立つと誓います。どうかこの鍛冶場に居候させてください!」

「そうだな……もう一人はブルザさんという鍛冶師だ。以前、町を襲われている。人に対して

良くない感情を持っている。説得するのは骨が折れるが、それでもいいなら」

「はい。それとルインさん。あなたの籠手装備。それ、動きますよね」

「やっぱり見抜いていたか」

「え? 見た事無いのにわかるの? お姉ちゃん凄い!」

「えへへ……私の鑑定眼は伝書の力なんです。私はそういった、道具に生命の力を付与する

方法をずっと探していたんです。伝説的な物は書物で知る事があったんですけど、実際

見るのは初めてでした。必ず生きているうちに造って見せると。ずっと頑張って来た

んです。でも……」

「この装備はアルカーンという世界の理を曲げる程の力の持ち主が造った者。

もう一人こういった物を作れるフェルドナージュ様を知っている。つまり恐らくは

妖魔の国、地底に行かねばこういった装備は造れないのだろう」

「地底!? 書物でしか見た事がありません。地底……それは難しいですね」

「いや。地底には必ず向かう。素材集めからやりたいのであれば、方法を考えて

おこう」

「本当ですか!? 有難うございます」


 やはり彼女が持つのは伝書の力か。幻魔には強い眼の力があったのだろう。

 それを伝書に託したのかもしれない。


 ――鍛冶場を後にした俺は、町の皆に説明をして回った。

 やらなければいけない事が山のようにあり、パンクしかけたが、それを

しっかり支えてくれる仲間たち。

 町の人数が増え、規模が大きくなれば、人一人で賄える事なんてたかが知れてる。

 個性溢れる仲間がいて、それを最大限に引き出す知能を持つ者にも恵まれた。

 

 おっと。牧場にも行って、モンスターたちの様子を見に行かないと。

 こちらは明日だな。随分増えたからなー。アクリル板が山のようだよ。

 ようやく眼の力も使えるんだ。アナライズして回らないとな。


 ――執務を終え、家に帰ると待っている笑顔。

 だからこそ、明日への糧として、生きていけるのだと。


「お帰りルイン。俺様、しっかりカルネを見てたぞ! 飯もいっぱい

くったんだ。見てくれよ、一杯飲むんだぞ」

「どわ! ちょっと待て。今はいい! しまってなさい!」

「そーなのか? ファナのは好きなくせによ……」

「そんなことは無いぞ。小さいのは小さいなりに……っておいやめろ何を言わせる

つもりだ。それよりもだ。今すぐじゃないけど、俺はまた旅に出なきゃいけない」

「ああ。リルとカノンの事だろ。わかってる。とーぜん俺様も行くぞ」

「いや、カルネが……」

「カルネならへーきだ。一緒に連れてくから」

「それは危険じゃないか?」

「ルインが守るからへーきだ。ぜってーにな」

「う……しかしなぁ……いや、そうだよな。念入りに準備をしてからだ。

絶対大丈夫というところまで引き上げないと……そうだよな……ベリアルも」

「ん? なんか言ったか?」

「いや。わかった。地底に向かうのは、そうだな……三か月。

いや、半年後かもしれない。リル……絶対無事だと信じてるからな……」


 俺は心に誓い、旅立ちの事を考える。

 ――再び、地底へ向かうその日の事を。

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