第七十一話 見えざる幻手
先駆けで12時に第四章新章を公開させて頂きました。
続きは本日18時に間に合うようアップ予定です。
また俺は死んだ。
折角両目、見えるようになったのにな。
人の優しさに触れて、笑顔でいられるようになった。
大変だったけど楽しかった。
どうにか大会にも勝てて、やっとパモも治してやれる。
心からメルザを喜ばせられるって思ったんだ。
皆でファナを支えて生きていこうと。
なのに……何故だ。
皆は……メルザは無事逃げきれただろうか。
常闇のカイナ……許せない。
ああ、死にたくない。メルザの傍を離れたくない。
ずっと……ずっと。
「それが……君の……願いなんだね」
誰だ? 声だけ聞こえる。まさか、神か?
「さあ、どうだろう」
神だよな、こんな時に話せるなんて。
いや話せてはいない……一発殴らせろ。
「……どうして?」
そりゃそうだろ。何で俺はこんな不幸に生まれた。
前世でも現世でも、ひどい仕打ちで生まれたんだ。
「前世? 君は二度生きているのかい?」
そうさせたのはお前だろう?
やっとまともに生きれると思ったのに。
「僕じゃあないよ」
じゃあ一体誰がこんな不幸にしたんだ!
「何言ってるの。君は信じられないくらい幸運だよ」
は? どこがだよ。そう言って俺をあざ笑って楽しいのか?
「だって君、まだ生きてるし」
え……? あんな状況で生きてるだと?
胴体を切り離されたはずだ。生きてるわけ、ない。
「そろそろ、動けるんじゃないかな、意識の念通切るよアルカーン」
は? おい待てよ。どういうことだ?
「またあとで、会えるから。今はもう少し休みなよ。
面白い話聞かせてくれてありがとう。君はやっぱり……」
おい。おい! くそ、なんだってんだ。
いや、死ぬ最後の幻聴か。あれだけ血を流して倒れたんだ。
無理もないか。
――――何だろう。何かに引っ張られるような。
見えない無数の手に引っ張られるような感覚がする。
だめだ、これ以上意識を保てない。
――――メルザ……。