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第七百八十六話 歓迎の仕方

 二人の名前を聞いて、とても嫌な予感がしたが……考えていても仕方ないので

泉の前まで向かうと――「オラァ! もう一発いくぞ! 風牙撃衝連刃!」

「一度に三つも出しやがって! ちっとは余力考えろ。そろそろ来るかもしれないだろ!」

「知った事か! 来たら来たでまた気合入れればいいだけだろうがよ!」


 ……俺は来るべきではないところに来てしまったようだ。

 泉の上空では、ばかでかい師匠の顔をしたでかい三つの何かが、筋骨隆々のでかい男を

襲っている。三つ首のケルベロスならぬケルウルフだ。

 そんなものを見たかと思えば、ギオマの骨かと思うほどでかくなった剣で、ほこりを払う

ようにそのケルウルフをかき消す男。


 ……あんたら泉の前で何してるんですか? 

 このまま気付かれないように泉に入れないかな。


「お師匠様! 凄すぎて近づけないんんですけど、お師匠様ならまざれ

ますよね? あの戦いに!」

「あら。それはいい案だわエンシュ。師匠として私たちに戦いのお手本を見せて

くれるのよね?」


 ……おいおい。この弟子二人は何を言い出すんだ。冗談はよしてくれ。

 二人の男のおりなす熱いララパルーザにおれを混ざろとでも? それはよくない。

 俺までララパルーザになってしまう。

 そう、ララパルーザとは異常なものを指す言葉だ。

 よくない。断じてよくない。


「おい! ちょっと待て……ルイン! 戻ったかぁ、いや待ってたぜ! ちょうどいい汗

かき終わったところだ」

「おうおう。随分とぬるい顔してるじゃねえか。また小僧戻りか? こりゃいけねえな」

「え?」


 二人はこちらを見ながらそう叫んでいる。

 エンシュとミレーユ王女は既に俺の傍から離れていた。


「おらちゃんと打ち返せよ!」

「まずは手始めの挨拶代わりだぜ」

「うわ! 封剣! 赤閃!」


 いきなり斬撃を飛ばす二人に、大慌てでティソーナを出し、応戦した。

 二人がかり!? 冗談じゃない。しかも真剣(マジ)だ。

 やらないと殺られる勢い。

 くそ、こうなったら……俺は早速新しく手に入れた伝書の力を試してみる事にした。

 そっちが真剣ならこっちもだ! 久しぶりに師匠への挨拶、しっかりやらないとな! 


「えーっと……そういやランスロットさんみたいに俺も地面に這わせるように出来ないか……」

「おいおい何だその手のやつ……また新しい力手に入れたのか、お前さん。見てみようぜ」

「カッハー! こいつはいいぜ。やっぱおめえはそうじゃねえと。おいおい、早く

見せてみろ。俺たちのは遠目に先に見てやがったんだろ?」

「いや、まだ覚えたてで使い方がよく……こうか?」


 最初にやった時と同様、両腕に文字がいきわたるのを確認する。

 これを前方に突き出しつつ叫ぶと、正面に青白い渦の炎が飛んでいった。

 それなら、地面に向けて発したらどうなるんだ? 


「二人とも、どうなるかわからないけど、覚悟してくださいよ! ラモト!」


 俺は地面に突き刺す感じでラモトを発動した。

 当然地中に埋まるただの文字だと困る。

 だが……文字は地を這いずり、師匠とハーヴァルさんの真下から突き出る渦の炎となった! 


「うお! あぶねえ……小せぇが、奇襲になりやがるな」

「おいおい、青い炎だぜ。しかも渦巻いてやがる。殺傷力も高そうだな。どこで

こんな技身に着けたんだ?」

「伝書ってやつらしいです。お二人とも知ってます?」

「伝書? 聞いた事はあるがおめえ、そりゃ外れ引くと最悪なのもあるって聞くぞ。

ライデンでもびびって手を出さなかった奴に手をだしたのか」

「まぁ、お前さんは俺と違って呪いが効かない体質だからな。案外いいのかもしれん」

「そうだった。小僧は異常体質だったな」

「呪いですか……呪いと言えば……セフィアさんやイビン、シュウさんは?」

「セフィアはほれ、その泉のほとりで大人しくしてるだろ。イビンはルーンの町で

浮かんでるぞ。シュウは……あれ、シュウはどうしたんだっけ?」

「さぁな。見てねえぞ」

「はい? どこにいるんですか? ……イビンが浮かんでる? えっと、どうしよう。

俺はどこから突っ込んだらいいんでしょうか」


 泉の傍にいるのは、兎耳をした獣人ぽい人だ。俺の知らない人に違いない。

 決してセフィアさんはあのような物を装着するタイプではない。

 外見が似ていても本人であることなどあり得るはずがないのだ。

 しかもイビンは町で浮かんでいる? どんな修業したんだろう。


「ちょっとよくわからないんですが……その人が本当にセフィアさん?」


 そう言う前に、こっちをくるっと見るセフィアさんでなさそうな人。

 ……確かにセフィアさんを兎っぽくするとこうなるよな。


「わらしはぁーー、セフィアれすぅなんれすかぁ、ちっとも気付いてくれないなんて

わらしが怒るなしたよぉ」

「げっ。酔っ払いバージョンのセフィアさんじゃないですか!」

「いや、それがよぉ。通常がこれになっちまったんだよ。酔っぱらうと怖い奴になる。

しかも勝手に酒ひっつかんで飲むから手に負えねえ」

「なんれすか! 人を無視してずっと暴れてらしたらいいんれすかぁ!?」

「ちょっと何言ってるかよくわからな……これはこれで大変そうですね」

「はぁ……まぁそういうわけだ。スキアラもおかしな事してくれるぜ」

「そういえば何でお二人はここで戦ってるんですか? 町の訓練場は?」

「あっちは今いっぱいなんだよ。お前さん随分と仲間が増えたな。

四幻だったか? いい仲間を持ったもんだな」

「そっか。ルジリトが指揮を……そうですね。俺にも仲間が増えましたから。

もう二度とベッツェンのような光景はみたくないので」



 俺はルジリトにお願いをして、組織的な戦闘が行える訓練を依頼していた。

 指導を受けるのは勿論、町にいる住民で、訓練を望むもの。

 家族や故郷を追われた者が多かったから、賛同した者が多かったのだろう。

 ジャンカの村だって、今のままでいいはずはない。

 いつ何時、何が起こってもいいように準備を進めていた。


「さぁ町に戻ってやれ。皆心配して待ってるぜ」

「俺たちはもうちょっと遊んでいくからよ。そういやさっき、変な姉ちゃんが腰抜かして

伸びてたけど、置いといていいのか?」

「変な姉ちゃん……あ!」


 そして俺は、散策に向かったカーィが再び失神しているのを見つけてしまった。

 ……仕方ない。担いで領域へ連れて行くか。

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