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異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー  作者: 紫電のチュウニー
第五章 親愛なるものたちのために

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第七百八十一話 大がかりな出発

 ――レンブランド・スミスの帰りがてら、宿屋を訪れる。

 こちらでも心配されたが、お詫びをちゃんとしてお礼の品を渡すと、とても喜んで

もらえた。

 またジパルノグに来たらいつでも訪ねて欲しいとも。

 ミットにもモジョコとお揃いの髪留めを渡すとおおはしゃぎして喜ぶ。

 それと、ミットは眼鏡姿のモジョコを羨ましそうに見ていた。

 色の無い世界から、色がある世界というだけでも、モジョコにとっては

大きく違うのだろう。

 嬉しそうに辺りをキョロキョロ見て、ミットの顔辺りもみようと頑張っている。

 でも、顔までははっきり見えないんだろう。

 手を伸ばし、ミットの顔を触っていた。

 ミットも嬉しそうにもジョコの顔を撫でていた。

 お友達が出来て本当によかった。この宿を紹介してもらったことに感謝しないと。


「また会おうねモジョコちゃん。私、待ってるからね」

「うん。また来るの。元気でね」


 挨拶を済ませて宿屋を出る。ナチュカーブを探すのも悪くないが、少し運動不足だ。

 

「モジョコ。走って帰るけどいいか?」

「うん。大丈夫なの?」

「問題ない。十分以内に辿り着いてみせる」


 バーニィ家まではそう遠くはない。モジョコをしっかり担ぎ、速度を上げていく。

 思えば何度も三夜の町まで往復したな。

 あの頃は体力も全然無くて、苦労したっけ。


 ――ものの数分で館まで到着すると、走って帰るのがモジョコにあは楽しかった

ようで、とても喜んでいた。

 そして、館前ではグレンさんがうろうろして待っていた。

 あらら……過保護に火がついちゃってるよ。

 心配だったのかすぐ駆け寄って来た。


「遅いから心配したぞ。走って帰って来たのか?」

「ああ。少し運動不足で。そんなに時間かかりました?」

「鍛冶屋によっただけにしては、随分とかかったぞ」

「そっか。宿屋によっていくって伝えてなかったですね。

帰りの挨拶をしてきたんです。ミットがモジョコのお友達なので」

「そうか! すっかり忘れていた。私も挨拶をー……」

「大丈夫ですって。それより、レンブランド・カーィさんが来てませんか?」

「おじい様と話をしているよ。まもなく出発するのだろう?」

「ええ。まずは紅葉洞に」

「そういえばギオマ殿もきているぞ」

「はい?」

「ギオマ殿が来ていると」

「……はい?」

「おいおいルイン殿。大丈夫か? だからギオマ殿が……」


 ……なんでだ? ギオマが来てる? ここに? いつ? どうやって? 


 ――急いでギオマの許へ案内されると、ギオマは腕を組み、肉を食らっていた。


「ようやく来たかァ。我を呼び出して遅刻出来るとはァ。いい度胸だなァ」

「あの。まだ呼んでませんよ。場所まで一体どうやってわかったんですか?」

「なぁに簡単な事よォ。貴様が散々我の名前を呼ぶが故になァ。場所も何もかも

筒抜けよォ。暇だったのでなァ。飛んできたのだァ」

「飛んできたって、あんたそれまずくないか……」

「抜かりはないぞォ。我なら平気だァ」

「あんたが平気でも見られたら……確か南から飛んでくるとベルベディシアに

雷で撃ち落とされるんじゃ……」

「我は南からなど来てはおらぬがァ……懐かしい名前だなァ。洟垂れの小娘かァ」

「……何の事かは聞かないようにしておくよ。それじゃギオマ。改めてお願いが

あるんだ。俺とモジョコ、それからランスロットさんにグレンさん。後は鍛冶師

のレンブランド・カーィさんを運んでもらえるか?」

「随分と増えたなァ。あの時助けた娘はそれかァ。変なものを身に着けておるなァ」

「助けてくれた怖いおじさんなの。こんな色してたの」

「怖いおじさんだとォ!? 魂吸竜ギオマを相手に物怖じせぬとは気に入ったぞォ!」


 確かに怖いおじさん何て表現、怖くて出来ないわ……。

 

「あのー、ルイン殿。一体どういう意味だ? 目的地へはナチュカで行くのだろう?」

「いや。説明するとあれなんで、町の外の人目がつかない場所まで行きましょうか……。

ランスロットさんとカーィさんも、腰を抜かすだろうな。はぁ……」


 結局紅葉洞まで行く手間は省けたけど。

 こんなの人に見られたら大騒ぎじゃすまないよ。

 しかも絶魔王とやらが住む場所だって近いのに。

 ……いや、あんな城から雷で撃ち落とせる奴がいるくらいだ。

 もうとっくにばれてるんじゃないだろうか。

 

 ……嫌だなー。そいつらの遣いとかが来たら。

 さっさと死霊族の場所まで戻り、直ぐに領域へ行こう。

 そうしないと絶対また、何かに巻き込まれる気がする。



 ――ランスロットさんたちにも事情を説明すると、町の外の何もない開けた

場所まで来てもらった。

 全員少し不安そうだが、ギオマにお願いして竜の形態となってもらった。


「……ってことなんです」

「驚き過ぎて腰が抜けた……」

「ででで、伝説の魂吸竜って実在ししししたんですね。う、鱗とか一枚もらえませんか」

「ふむ。書物を読むのは好きだが、生きているうちに伝説の一枚をこの目で見れる

ことになるとはね」


 三者三葉の驚き方です。カーィさんは驚きつつも違う方向にシフトしている。

 グレンさんが一番まともに驚いている気がする。

 ランスロットさんはさすが。年季が違うようだ。


「グッハッハッハッハッハァ! 我に膝まづくのはァ、無理もないことよォ。

さぁ乗るがいいぞォ。貴様らは運がいいなァ。我の盟約者に感謝するがよいぞォ」

「俺というよりベリアルのお陰だな……さぁ早く戻ろう。いい加減戻らないと

アメーダまでこっちに向かいそうだ。もう領域には繋がったのか?」

「うむゥ。戻ってみればわかるぞォ」


 俺たちはギオマの背に乗ると、空高く舞い上がり、魂吸竜ギオマの骨跡まで

飛び立っていった。

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