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第七百六十五話 伝書にまつわる本

 司書に案内され辿り着いたC六書棚の伝書。

 冊数が多いが、該当しそうな項目を探す。


 一番大切だと思われる本を含め、三冊程手に取ってみた。

 俺が手に取ったのは以下のもの。

 伝書と歴史。

 伝書図鑑。

 そして、伝書の発現方法と用途。


 ……人が書いたものを鵜呑みにするのではなく、本は多角的に読み解く必要がある。

 絶対にそれが正しいと言い切れるものが書物にはない。

 だが、知識は詰め込む事により正しさが見えてくるものだ。

 だからこそ一冊ではなく複数の書物を読む必要があるのだが……歴史に

関するものが、これ一冊しか見当たらなかった。

 それ以外のものに関しては複数種類ある。

 不明点があれば他のものを見てみるのもいいかもしれない。

 ……でも一度に大量の本を担いで持って行ったら、司書に睨まれるだろう。

 ということで、三冊だけ見てみる事にした。


 本を抱えて日当たりのいい席へと移動する。

 利用者は数人といったところ。辺りからは本の頁をめくる、心地いい音しか聞こえない。

 実に素晴らしい静かな空間だと思う。図書館はやはり、こうでなければ。

 金貨を取られたし、入館証を求められたから、簡単に利用できる施設といったわけでは無いのだろう。

 早速一冊目の伝書と歴史という本を開いてみた。



 【伝書と歴史】

 この書物は、ゲンドールにおいて、極稀に発見される遺物である伝書に

ついて、発見された事例やその内容についての書物である。

 そもそも伝書とは、ゲンドールにおける神の手によるものか、或いはまた別の存在によって

記されたものかは定かでない。

 しかし伝書が実在するのは事実であり、伝書が生物に与える影響は大きな財産となる。

 最初に伝書が発見されたのは、シーブル―大陸のある山脈地帯と伝えられる。

 それを手にした魔族は、大いなる力を得て魔王にまでのし上がったという。

 


 ……俺は一度ここで読むのを止めた。

 この書物はいつ頃書かれたものだ? 確かこの大陸の年号をエンシュが話していたな……。

 裏面の年号を確認すると……シフティス大陸歴、五二六八年と書かれている。

 確か今は五三六三年だったな。

 たかだか百年程度しか経っていない。

 歴史書であるならもっと古い物の方がいいんだが……仕方ないか。



 ――――再び本に目を通すと、それ以降は伝書を使用した魔族の事について書かれて

いるが、それ以外の前例が、ほぼ書かれていない。

 しかも表現に関しては憶測が多い。

 これはきっと外れの本だろう。

 実際に伝書を使用したものの話だと助かったんだけど。


 次の本へ移ろう。伝書と図鑑と書かれている本。

 つまりこれには発見された伝書の種類などが書かれている可能性が高い。

 本に厚みがないところを見ると、そこまで多くは無いのだろう。

 年号を見ると、こちらはそれなりに古い物を再度書き直したようだ。

 紙質が新しい。この世界の紙は前世と異なり、魔力を帯びた

木から作っているのだろう。

 紙の保存性がとても高い。

 しかしさすがに長い年月が経てば劣化はするのだろう。

 こうやって書き写す必要はあるのだと思う。

 書き写したのはあの司書なのか? 

 

 年号は初版と書かれている部分に四一一三と書かれていた。

 千年以上も前に書かれた物か。これは期待できる。


 【伝書図鑑】

 本書における伝書はあくまで仮定、仮説のものも含まれる。

 それらのものに関しては、仮の文字を記載すること。

 追加の発見された伝書報告があれば、それらをわかる範囲で

書き留め、未来へと託して欲しいと願う……とここで一度目を離した。



 これは冒頭部分に誰かの願いが書かれている。

 初版の著者の項目を探すと……ランスロット・バーニィ……だと? 

 どういうことだ。この名前……確かランスロットとはギオマが話していたところの

英雄と称される人物の名前だったはず。

 それがこの図鑑の著者……? 

 しかもバーニィというのは、レオやグレンの家系名だったはず。

 ……後で確認する項目が増えたな。


 銘が確かであるなら内容もとても気になる。

 初版でないから手をいれられたらそれまでなのだが……続きを読むとしよう。

 


 シフティス大陸における最初の伝書発見は、七十二世ランスロットである著者自身であると

思われる。

 それまでに伝書はいくつか発見されている報告があるが、実際にその能力を

目にしたわけではない。

 また、伝書の能力自体も千差万別であり、確実に伝書の能力を引き出すのに

成功するとは限らないとも考えている。

 著者が発見した伝書は全部で五つある。

 そのうちの一つについて、先に紹介しておこう。


 次の頁を捲ると、その伝書の模写と思われる物がイラストで描かれていた。

 挿絵が入っているのはとても有難い。昔の書物であれば皆このように書かれていた。

 これは、間違いない。俺が発見したものと酷似している。

 その本はやはり読めない文字が記されていた。

 

 そして挿絵の部分には中訳のようなものがしっかりと書かれている。

 あの文字を解読したのか? 凄いな……それには、こう書かれていた。


 書物の言葉は己に渦を巻き、自身を取り巻く力となる。

 汝その力恐るるなかれ。

 どのような力であっても受け入れよ。

 決して拒むな。

 力は使い方次第。

 我を手に取り我を飲み込め。

 我は書也、我は力也。


 伝書の表紙にはこう書かれていたのか。

 ……この後の続きも気になるが……これ以上時間をかけてみていると日が暮れてしまう。

 最後の一番大事な本を読まなければ。

 しかしこの本はまた時間があれば見てみたい。借りられたら最高だったんだけどな……。


 次の本を手に取り、確認してみる。

 グレンさんが話していたのはこの本だろう。

 ……これが恐らく、最も大事な本だ。

 伝書の発現方法と用途。

 さて内容は……。

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