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第七百四十五話 マルクタイト鉱石とベルゼレン希石を求めて

 死霊族の町外れまでくると、外の地面は相変わらず蠢いている。

 しかし以前に比べるとその動きは弱くなっているようにも見えた。


「芽吹きの時が始まってから日が経てば、少し大人しくなるんじゃあ。

これでもまだ危ないがのう」

「我にとってみればァ、くすぐったい動きをするだけだがなァ」

「今のお主なら丸ごとのみこまれるじゃろ……」

「はぁ……外に出るとやっぱり死霊族の力が弱まるから取り憑いていくぞ」

「うむゥ。我は武器を所持していないから我にとりつくがいいぞォ」

「そうするか。ルインにとり憑くと邪魔しちゃうからな」

「ふうむ、こやつにラングの耳が生えるのは面白そうだのう……ぎゃはははは」


 全員元気なのはいいが、このまま外へ出ても大丈夫なのだろうか。

 試しに少し足を出してみると……特に問題は無さそうだ。

 突然襲ってきたりするのか? 


「体力が徐々に減っていくと思うんじゃな。完全に弱りきったらぱっくりと食べられるぞ。

わしも芽吹きの時に出歩くのは久しいのう。地を這う虫などは全て捕食されておる。

殺傷力のある虫などを食べつくしてくれるのは嬉しいんじゃが」

「そういうことなら、招来術で移動すればいいか。妖氷雪造形術、コウテイ、アデリー、フンボルト」

「ウェーイ!」

「ほう、移動用招来術か。なかなかに面白いのう。じゃが……」


 呼び出したコウテイたちは直ぐに消えてしまった。

 術そのものを養分とされてしまったのか? 

 参ったな。歩いていくしかないか。


「仕方ない。調整できるかはわからんがァ……」


 ギオマはクラウチングスタイルのような姿勢を取ると、徐々に姿を変え……

魂吸竜の姿へと変わっていく。

 だが、あのばかでかい竜のサイズと比べると、かなり小さい。


「器用に調整しおったのう。これに乗っていけば直ぐつけそうじゃ。

空中なら芽吹きの時の影響もさほどうけんしの」

「凄いな。自分の元の体にも戻れるのか」

「幻術の類はそれが可能。貴様らの妖術とは少し違うのだァ」


 飛翔するギオマの背に乗ると、紅葉洞へと向かってもらった。

 シフティス大陸東側では初めて空を飛ぶ。

 やはり上空から見る世界はまるで違う。

 西側と明らかに違う箇所が、飛び始めて直ぐに目に入る。

 遠くに見えたのは暗雲立ち込める、暗いエリア。

 その奥には城のようなものが幾つか見える。

 落雷が落ちているのか、時折光を発している。


「あそこが気になるのかぁ? 無理もない。あれは魔王城じゃあ。

あんなところによく住めるもんだの」

「魔王……か。そういえばハクレイも魔王だったか」

「なんじゃあ、魔王の知合いがおるのか」

「隠居したっていってたけど。あそこが老師の出身地なのか……?」

「紅葉洞とは方向が違うから安心するがよい」


 それ以外にも気になるところがいくつかある。

 だが今は紅葉洞以外気にしていても仕方がないな。


「ふうむ。どうやら封鎖されておるようだぞぉ。あれは人間かァ?」

「人間? こんな危険そうな場所にか?」


 ギオマの背に乗り東へと進んでいくと、確かにギオマの言う通り、テントのような

物を無数に張っている場所が見えた。

 その奥は美しい紅葉がどこまでも続く深い森となっている。

 森の入り口あたりにある洞が、紅葉洞なのだろうか。


「タイミングが悪かったようだの。このまま下に降りれば人間と鉢合わせる事になろう。

引き返すか?」

「少し遠目に降りて、俺たちも人間として向かうのはどうだ? 

エルバノは手甲になれるんだろう? そうすれば残るのは俺とギオマだけ。

どう見ても人間と大差ない」

「いい考えかもしれんのう。人間が人間相手にいきなり襲い掛かる事はあるまいて。

どれ、ふぅーーーん! ……よし、わしはお主が装備するがよい。エッチな事するでないぞ」

「するか! なんならギオマにつけてもらえばいいだろ……って大きさ的に無理か」


 かなり遠目にギオマに降ろしてもらうと、地面の蠢きが強くなる。


「これはいかんなァ。この辺りは芽吹きが強いようだァ。あの人間どもはどうやって

凌いでおるんだァ?」

「餌か何かを用意しているのかもな。人間は弱いからこそ、どの生物よりも知恵が

働く」

「ふうむ。我々は結界を張っていくかァ。時間はそう無い。急ぐぞォ」

「ああ。本当に頼りになるなギオマは」

「グッハッハッハッハッハァ。もっと褒めてもいいぞォ」


 ギオマが結界を構築してくれたおかげで、周りの芽吹きの時の影響が少し

緩和されたように思えた。

 そのままテントがある方面へとゆっくり歩く。

 確実に何かをしている感じだが、兵士などがテント設営場所に

いるわけではない。

 それもそうだ。ただ突っ立ってるだけならとっくに地面の餌となっているだろう。


「ここで一体何をしてるんだろう。少し探りをいれてみるか……」

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