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第七百四十一話 夜明けの泉に花束を

 翌早朝……気づいたら深い眠りについていたようで、目が覚めると……。


「もうちょっとまともに眠れないのか、こいつら……」


 ラルダさんを含め全員雑魚寝していた。布団がかけられているにはいるが、恐らくアメーダが

上からかけてくれたという感じだ。

 これ、ラルダさんの宿屋なんだよな? 宿屋とは何たるかをせっちゃんに学んで頂きたい。

 ギオマとエルバノはぎりぎりまでロブロードをやっていたのか、ピースを抱えて

寝ている。

 そんなに面白かったのか? そういえば二人は何かの遊びで競っていたようだったが……。


「あなた様、お目覚めでございますか」

「うわぁ! 何で背後にいるんだよ。心臓に悪い」

「しーっ……皆まだ眠っているのでございます。今のうちに花を手向けに

参るのでございます」

「……そうだな。起こしても悪いし」


 アメーダと二人、外へ出ると……結界の外は異様な雰囲気に包まれていた。

 地面が勝手に蠢き、草花などを飲み込んでいる。

 自然現象としてはこの上ない恐ろしい現象だ。


「これが芽吹きの時……っていう現象か。こんな土地でよく生活できるものだ」

「そうでございますね……シフティス大陸東側は過酷な地でございます。ですが芽吹きの時が

あるからこそ、この地に居座る者もいるといっていいのでございますよ」

「どういう事だ? 気をつけなければ地の養分にされてしまうんだろう?」

「そうでございます。養分になるということは……物の作り替えが容易ということでございます。

作物が実りやすく、美味なるものも多いのでございます。生活するものはこの地で工夫をこらし、芽吹きの

時をやり過ごせば、豊かな生活が過ごせるのでございますよ」

「それは、モンスターにとっても同じことだろう? 土地が豊かって事はそれだけ強いモンスターも

集まりやすい。違うか?」

「仰る通りでございます。東側中枢まで進むと、とても強いモンスターとも遭遇するかもしれない

のでございます」

「そうか……」


 泉の方面までゆっくりと歩きながら外の景色を再び確かめる。

 砂が背丈ほど舞い上がり、何かを地に引き込むかのように蠢いている。

 結界内は完全に無風であり、そのような現象は一切発生していない。


「魂吸竜の加護により守られている以上、この地は安全でございます。

死霊族の数はそこまで多くはございませんが、この町自体は大切なものでございますから。

全てをあなた様の領域へ移したいのでございます」

「できれば生まれ育った場所で生活したいだろうし、可能なら構わないよ。

メルザはそんなこときにしないし」

「あなた様の主様はむしろ、喜ばれるかもしれないのでございます。

元は同じ種族でございますからね。さぁ……まもなく泉でございます」


 泉の前まで来ると、この泉に見覚えがある事に気づく。

 これは……形など全て、トリノポート、ジャンカの森にあった泉や、廃鉱山にあった泉とほぼ同じだ。

 ただの泉ではないんだろうな。

 

「そろそろ教えてもらっていいか? なぜ俺じゃないといけないんだ?」

「あなた様に宿る幻魔の宝玉。それはウガヤの力を宿した宝玉でございます」

「やっぱりウガヤの力が関係してるのか」

「その通りでございます。宝玉を宿し続けられるのは恐らく、ベリアル様のお力でございましょう。

あなた様は呪いの類に縁遠いお体。どうかこの花で、我々の呪縛を断ち切って欲しいのでございます」

「それは、紫苑の花? 普通の花でいいのか?」

「これにはちゃんとした思念が込められているのでございます。どうか、こちらを」

「わかった。紫苑か……鬼の醜草、悲しみを忘れる草……か」


 アメーダに言われた通りに泉へと花束を手向け、手を合わせる。

 そのまま指示通りに泉へと足をつけた。

 水は冷たいが、ただそれだけじゃない。なぜだろう。とても悲しい気持ちになっていく。

 これは……「あなた様。どうか見てあげて欲しいのでございます。

始祖の始まりの調べを……」

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