第七百四十話 遊びに夢中な仲間
ギオマとエルバノに連れられて、ラルダの宿まで戻る。
ベリアルは疲労困憊で俺と交代した。
だが肉体が疲弊しているのが治るわけでは無い。
かなり、だるさを感じる。
――――宿にもどると……「はい、プリマの勝ちだぞ」
「もう一回、もう一回やろう! 頼む!」
「へっへーん。もっとうまくなってからかかってこい。でもプリマをバカにしたことは許してやるぞ」
「本当? 勝ってないのに?」
「いいぞ。だけどもっと上手くなるよう練習してこい。わかったな」
「うん。頑張って次こそ勝ってみせるよ!」
二人は仲良くロブロードをやっていた。
そういえばプリマはロブロードが好きだったな。
しかもライラロさんとラルダ、それにミレーユにジュディまでやってるじゃないか。
「うむう。貴様らァ……」
「おぬしら……」
『混ぜろ!』
「はぁ……こいつらならそういう反応すると思った」
「あらぁ……本当に魂吸竜様にぃ……肉体を与えちゃったのねぇ……凄いわぁ……」
「全然凄く無さそうな反応、恐れ入ります。ラルダさん、悪いがこいつらに酒を」
「あらぁ。今ちょっと手が離せないのぉ。悪いけどぉ。とってきてくださるぅ? 勝手に持って行って
構わないからぁ……」
「そうよルイン。あんたは散々この遊びで楽しんだんでしょ。私たちは初めてまもないの。だから今日の料理はあんたに任せるわ」
「アメーダがやるのでございます。あなた様はお休みしていてほしいのでございます」
「だめよぉ。アメーダちゃんはぁ。私にやり方を教えてくれないとぉ。うふふ」
「姉様。それはあなた様でも可能な事でございますよ」
「だめなのぉ。アメーダちゃんが教えてくれないとぉ。お姉ちゃん泣いちゃうよぉ?」
「……仕方がございませんね。あなた様、お願いしてもよろしいでございますか?」
「ああ。酒を用意するくらいなら……だが体がだるくて料理はうまくできるかどうか」
「それなら俺が作りますよ先生。これでも一人で生活してましたから。料理くらいはできます」
「なんだ。それならプリマも手伝ってやるぞ。お前、疲れてるんだろ?」
「それじゃ任せるか。二人とも、喧嘩しないように」
爆酒……とよくわからない酒を手に持ち、ギオマとエルバノのところへ置く。
二人とも早速ロブロードのピースをいじり、台の上においては叫んでいる。
「そなたが考えた遊びと聞いたぞ。よくできておるのう。わしのピースも作ってくれんかの?」
「何を言うかァ。我のピースの方が先であろうがァ! ふむう。これが供えの酒かァ。
味わう事、再び叶うとはァ……プハァ! 喉が焼けるようだぞォ! 実に美味い!」
「そりゃよかった。ギオマ、体の調子はどうだ? 随分と人間ぽく造られたみたいだけど」
「うむう。悪くはないぞォ。どれ、神話級アーティファクトの力も使ってみるかァ! ふんぬっ……」
一瞬で宿の天井を頭から突き破り、どこかへぶっ飛ぶギオマ。
あれ? まずくない? これ。
「結界の外にでよった!? あやつ一体何をしておるんじゃあ?」
「そういうアーティファクトの効果を説明してなかった……」
「あらぁ。お家に穴が、開いてしまいましたぁ……うふふ」
「うふふってあんた、あれ平気なの?」
「魂吸竜様がぁ。張った結界ですからぁ。大丈夫ですよぉ……それよりもぉ、大分ルールが
わかってきましたぁ。これをシカリーちゃんもやってるのねぇ……楽しみねぇ」
「あ、戻ってきよった。どうじゃったぁ? 久しぶりの結界外は」
「うぬう。力の抑え方がわからぬ石だァ。溢れんばかりの力を秘めているゥ」
「石の事を聞いてるんじゃないんじゃがのう……」
「我が竜型の時よりもォ、遥かに高い場所まで飛べたぞォ……これはいいなァ。
ベオルブイーター、きゃつと戦う時にもォ、役に立ちそうだァ!」
「突き破った結界は平気なのか?」
「直ぐ修復したァ。結界術ならば、我の右に出る者などおらぬゥ」
「お主、こやつの力をちゃんと使いこなせるのかぁ? ツワモノの軍勢を一発で
崩壊させるほどの凶悪な力の竜じゃぞ?」
「俺もドラゴントウマっていう巨大な竜を仲間に持っているが……それ以外だと
グリーンドラゴン、アビシャフトくらいしか封印してない。
後は仲間にクアドロプルドラゴンっていう合成竜がいるけど。それ以外は竜騎士の竜使い
のる―っていう竜くらいかな。あと、ルーンの町にはリンドヴルムが住み着いてるんだった」
「ほう。それだけ密接に竜と交わってきたのかァ。ならば我の居場所としても相応しいなァ。
さて、遊びを開始するぞォ! 今度こそ貴様と決着をつける時だァ!」
「ふん。返り討ちにしてくれるわ! ギャーッハッハッハッハ!」
右も左もロブロードを開始しだしたので、食事の事はプリマたちに任せ、俺は
一足先に休む事にした。
「この遊びを考えたお陰で、皆暇そうにせずにすんでよかったよ……おやすみ」
騒がしい中でも、簡単に眠りに着く事ができそうだ。
だが、目を閉じていてもメルザの顔がちらついて離れない。
休憩したら泉に花を手向けに行こう。
それで一体何が起こるのか、わからないけれど。




