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異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー  作者: 紫電のチュウニー
第五章 親愛なるものたちのために

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第七百三十一話 魂迷の町ギオマ

 アメーダに導かれて到達したギオ・マ・ヒルドの骨があった場所。

 そこはギオ・マ・ヒルドのひざ元にある町のようなものだった。


 俺たちは一晩明かしてから用事を済ます事となる。

 やる事は花を手向けるという事だったが、これで王女の声が戻ったり

するのだろうか? 

 それに手向けるといってもどこに手向けるのだろう。

 色々気になるところだが、今日のところは宿で休む予定だ。


 そして今、その宿屋前辺りまで到着したところ。

 すっかり暗くなっており、ここが外の状況と連動していることがよくわかる。


「結界といっても外の時間軸と変わらないんだな」

「そうでございますね。時を操る事など管理者以外には出来ない事でございましょうから」

「アルカーンさんか……アメーダはアルカーンとも面識があったのか?」

「いえ、初めてお見受けしたのでございます。存在自体は存じていたのでございますが……

何分表側に出てこない方でございましょう?」

「確かに。いつでも時計をいじってるからな」

「けれどあの方がお味方でよかったのでございます。すべての管理者の中で

最も変わった能力の持ち主でございますから」

「俺の知る管理者はブレディー、タルタロス、アルカーンだけだ。

もう一名いるよな」

「はい。そのうちお目にかかることもあるかもしれないのでございます。

それでは宿に入るのでございます」


 どこか見覚えのあるような建物の中に入る。一体どこで見たのか……そうか。シカリーのところだ。

 建物内は静けさに包まれており、誰かいるような気配はない。


「あらぁ。アメーダちゃん。よくきたわねぇ……何年ぶりかしらぁ……」

「ラルダお姉様。お久しぶりでございます。お元気そうでございますね」

「うわっ! いきなり現れた! お姉さん?」

「そうでございます。アメーダの姉様でございます。こちら、アメーダの新たな

主人でルイン様でございます」

「まぁ。妹のご主人だなんて。ようこそぉ。魂迷の町ギオマへ。姉として、とても嬉しいわぁ。末永く、可愛がってあげてねぇ……」

「う……別に結婚したわけじゃ……にしても何というか……」


 とてもゆっくり喋る方なので、会話のテンポが合わない。

 おっとりとしていて上品な雰囲気がある女性だ。

 髪色はやはり紅色で、アメーダよりは少しふくよかだろうか。

 口許の笑いぼくろが特徴的だな。

 

「ラルダお姉様。一晩泊めていただきたいのでございます」

「あらぁ。一晩何て言わず、未来永劫泊っていっても、いいのよぉ……」

「ここに永住するつもりはございません。やらなければならないことが山積みで

ございますから」

「そうなのぉ……でもぉ。今日泊っていけば……しばらく外には出られないかもぉ。

知れないわよぉ?」

「それはどういうことでございますか?」

「そうじゃ! どうにもあの草原に違和感があったんじゃが、芽吹きの時期かぁ!」

「あらぁ。ご存知? あらぁ? あらあらあらぁ? もしかして、あなた、酒鬼魔族?」

「うむ。ギオ・マ・ヒルドの旧友じゃの」

「まぁ! それはぁ、お喜びになるわぁ……今日から七日は、ここに泊まっていってねぇ」

「七日!? そんなにか。その芽吹きの時ってのはそんなに危険なものなのか?」

「俺の招集にはまにあいそうにないですね……やっぱり俺、先生に暫くついて行こうと

思うんですが、いいですか?」

「それは構わないが……いいのか? 族長の招集なんだろう?」

「応じなければどうなるかはわかりません。でもこの状況なら戻るのは難しいと思います」

「俺もその方がいいと思うぜ。芽吹きの時、噂には聞いた事がある。

あらゆる生物を養分と変えようとする地の力……だったか」

「そうなのぉ。よく知ってるわぁ。あなたも変わった種族ねぇ……

結界内なら安全だからぁ。それまではぁ、ここにいてねぇ。この中なら死霊族の

力もぉ。失われないわよぉ」

「……ってことはプリマ。お前さっきから元気を取り戻してるな?」

「……プリマは疲れてるんだ。もう少しこの中で……」

「あらぁ。プリマちゃんもぉ。来てるのねぇ……気付かなかったぁ」

「面識があるのか?」

「はい。お姉様はシカリー様に仕える身ではございませんから、プリマ様とも

仲がいいのでございます」


 それを聞いて取り憑いていたプリマが文句を言いに出てくる。

 やっと離れたか……憑かれているとなんかこう、背筋がゾクゾクした感覚が

続くんだよな……。


「別に仲良くなんてないぞ! ラルダが勝手に……」

「あぁ……プリマ。久しぶりに見ても、可愛い……」

「や、やめろぉ! 耳を触るな!」

「いいじゃないのぉ。昔はこうしてよく、撫でてあげたでしょぉ……うふふ……」

「ひとまず部屋を案内してもらえると助かるんだが……」

「そうだったわぁ。広いお部屋に、案内するねぇ……アメーダ。食事を作るのを

手伝って、もらえるかしらぁ……」

「勿論でございます。新しく覚えた料理の数々、お姉様にもお伝えするのでございます」

「まぁ! ここにいるとぉ。刺激が少なくて。私も憑いていっちゃおうかしらぁ……うふふ」


 ……これ以上死霊が増えたら俺の町はゴーストタウンになってしまう気がする。

 ただでさえ既に大量の骨やトカタウロスや魔族やらで溢れてるのに。

 プリマをいじり倒していたラルダは名残惜しそうにプリマを解放すると、俺たちを奥へ案内した。


「あの。男女別にしてもらえませんか?」

「どうしてかしらぁ……? 仲がいい方たちはぁ。一緒の部屋で過ごすものでしょぉ……?」

「ある意味それはそうなんだが……」


 案内されたのは確かに広い部屋だった。

 そしてなぜか全員同じ部屋だった。

 いやせめて子供のエンシュがいるんだから、男女別にしてもらいたいんだけど。

 しかしこのテンポの悪さ。

 説明しても時間がかかるし、頼んでも部屋を別にはしてもらえないだろう。

 

「それじゃぁ、食事まで少し、くつろいでいてねぇ。水浴びをするならぁ……外に

水浴び場があるから使ってねぇ……」

「酒はないかの?」

「お酒はもう少ししたらぁ、お部屋にお持ちしておきますねぇ」

「うむ! エンシュよ、水浴びに……」

「ダメだ! 女性陣は先に水浴びしてこい。俺とジュディとエンシュは

後から浴びるから!」

「なんじゃあせっかく師匠が弟子の体を満遍なく洗ってやろうというに……」

「あんた、絶対ろくなことしないだろ……」

「ちょっとだけからかってやろうとしただけじゃ! 仕方ないのう。

いくぞ、プリマとやら」

「ふん。プリマはお前、嫌いだ」

「こやつもなかなか小憎らしいやつじゃな。まぁいいからこい。

酒の美味さについて教えてやろう」

「酒の美味さ? それを聞けば酒っていうやつが美味く食べれるのか?」

「酒は食べ物じゃなくて飲み物じゃ。さぁはよこい」

「わかった、行ってくるぞ。プリマが戻る前に先に食べ始めるなよ!}

「そんな早く食事がくるわけないだろ……」

「私はちょっと町の様子を見てくるわね。こんな場所、来ようと思っても来れる場所じゃ

ないし、ついて来て正解だったわ!」

「それはいいけど問題起こさないようにな」

「わかってるわよ。私は子供じゃないわ!」


 ライラロさんはそう告げると意気揚々と町へ繰り出す。ちょっと心配だな……。


 プリマとエルバノは水浴びに向かい、男だけの落ち着いて話せる状況となる。

 先ほどのやり取りの後だからか、俺たちは盛大に大きなため息をついた。

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