第七百二十一話 トラブルの始まりはいつも彼女から起こるのだろうか
本日から第五章へ突入しますー!
突如として膨れ上がったルーニーに驚く俺とジュディ。
一体どうしたんだ? 新種の病気か?
これまでルーニーを可愛がってきた。
背中に冷や汗が走るのを感じる。
「ぶっはぁ! 狭い! でもでれたわ! あれ、私だけ?」
肥大化したルーニーがペッと何か吐き出すと「ホロロロ……と少し元気がなさそうにして
再び元の形へと戻る。
吐き出されたそれに、とても見覚えがある。
妙齢の女性で額には一本の美しい角。
俺の師匠の自称嫁であり、知り得る限り最も慌ただしい行動を取り、なおかつ
酷いトラブルを巻き起こす爆心地。
ライラロその人である。
「……あのー、ライラロさん。何でルーニーから出てくるんですか?」
「ふふふ……上手くいったのよ! 驚いたでしょ! 指定転移!」
「はぁ……指定転移? 何ですか、それ」
「アルカーンと私の共同作業による、転送付与術よ。
アルカーンも驚いているでしょうね。私程の女性を転移で送り込めたんですもの」
「あの、どこから突っ込んでいいんでしょうか? まず一番いいたいのはですね」
「わかってるわ。ベルディスがいなくて寂しくないのか? それは浮気じゃないのか?
でしょ? 全然平気よ。だって私たちにはもう、相思相愛の夫婦なんですもの。
それに弟子であるあんたなら旦那も許してくれるわ、遠路はるばる会いに行ってもね」
「見当違い過ぎて逆に返す言葉もないです……それにしてもしばらくみかけなかったんですが、また
みょうちくりんな恰好してますね。フリルの短いワンピース? ライラロさんらしくないな」
「あら。フォニーの最新作なのよ? これ一枚で金貨七枚もしたんだから」
「高っ! あの、わかってるかどうか知りませんけど、ここはシフティス大陸でも
かなり寒い場所ですよ。ここは洞穴だからまだマシですけど」
「確かに寒いわね。ちょっと服貸しなさいよ」
「お、おい。なんだその女は? 突然現れて……そいつも招来したのか?」
ジュディがあまりにも驚いて全ての腕の武器を手放している。
無理もない。呼び出した形になっている俺が驚いてるんだから。
「あら、新しい仲間? へぇ、珍しい種族ね。無機人族かしら。
私と同じく希少な種族ね」
「あんたは一体……」
「申し遅れたわね。私は……シーザー・ライラロよ!」
「あんた、シーザーを勝手に苗字にするな!」
「いいじゃないの。どうせ妻なんだし。うふ」
「もういいです……それよりライラロさん。何の用で来たんですか?」
「え? 暇だったから」
「はい?」
「だから、暇だったのよ。菓子巡りから戻ったら、みーんな忙しそうにしてるし?
あんたの嫁たちと遊ぼうと思ったらお腹がこーんなに大きくなってて。ずるいわよね。
一度に五人も子供を孕ませるなんて」
「俺がやったみたいに言わないでください! まったく」
「ふんだ。私もイネービュに頼んでみようかしら。ベルディスったらちっとも
構ってくれないのよ。それでね……」
「ちょっとストーップ! ライラロさんが喋り出すと止まらないし
話が進まないんだ。まずはこちらの状況を報告する。そしたら帰ってくれて
構わないから」
「帰る? どうやって?」
「さっき来た時みたいにルーニーに……いや、残酷なシーンは見たくないけど……」
「アルカーンがいないと無理よ」
「おい、まさか帰り方も考えずにここへ来たっていうのか」
「そうよ。だってあんたといれば面白い事が起きるかなって。
あの国じゃ私、あんまり出番無かったし」
「……はぁ。今頃師匠、帰ってるかもしれませんよ?」
「いいのよ帰ってきたらきたで待たせておけば。少しは待つ方の身にもなって
欲しいものだわ!」
「それを師匠に言っても無駄でしょうね……仕方ない。現状を説明します……」
俺の胃袋がぐっと重たくなった。
手合わせを邪魔されたあげくとんでもないものが飛び込んできた。
戦力的には申し分ないが、絶対問題事を起こすだろうな……。




