第六十六話 ライラロの帰還と団体戦二回戦
団体戦初戦が終わり控室に行くと、ライラロさんがいた。
「あらお帰りルイン。優勝おめでとう! やったわね!
さすがダーリンの弟子じゃない! 妻として鼻が高いわ」
「あれ、ライラロさん。もう戻られたんですか? あれからまだ
日数経ってませんけど」
幾ら何でも速すぎる。どうやって帰ってきたんだ?
妻はスルーしよう。
「あれを使ったに決まってるじゃない」
「ひぃっ」
メルザが悲鳴を上げる。あれ、直ったのか?
俺たちはベッツェンに向かう途中でライラロさんの乗り物に乗った。
それは確かに速かったが、相当やばい代物だったのだ。
あまり思い出したくないので機会があれば語ろう。
「それで、あの子は弟の坊やに任せて預けてきたわ。
あと、カカシだっけ? あの変な生き物に。
バカ弟子の領域なら安全でしょ? ぬいぐるみも
そこに置いてきたわよ」
メルザはバカ弟子とまたいわれてむっとしている。
「それと坊やに義足の依頼を出したわ。
材料も全然ないから自分で集めなさいと。
鍛冶用の道具も立派なものもってたし、なんとかなるでしょう?
あのカカシってのも手伝うみたいだし」
カカシはちょっと不安だが、ニーメはしっかりしてるから
無茶はしないだろう。
「んで、私はライデンとバルドスにちゃんと送り届けた報告を依頼されたってわけ。
んであんたたちはうちの傭兵団に来ることに決めたの?」
「はい、一応そのつもりです。大会が終わったらお話しに行こうかと」
「そう。ならいいわ。それで、ダーリンはどこなの?」
「えっと、多分観客席……かなー?」
「行ってくるわ! 今すぐに! ご褒美をもらいに!」
全力疾走しようとするライラロさんの裾をメルザがつかんだ。
「なぁライラロ師匠、一個聞いていいか?」
「なによ、いそいでるのにこのバカ弟子は」
「俺様、燃斗幻術は得意だけどよ。まだ燃臥斗までしか
試してねーんだ。そこから上、いけるかなぁ?」
「はぁ? あんた、あんなばかでかいの燃斗で出してたの?」
「おう、俺様使っていいかよくわからねーしよ」
「しょうがないわね。じゃあ燃刃斗使ってみなさい」
「わかった! やってみる!」
メルザはガッツポーズする。新幻術か。俺も一つ試したい技はあるが……。
「それじゃ今度こそ行くわね! ベルディスぅー! どこー! どこなのー!」
……まぁ会場に師匠はいないんだがな。
心配ではあるが、無事ファナを領域に届けてくれたことには
感謝してもしたりないくらいだ。
今度甘いお菓子でもライラロさんのために作ってみるか?
……気付いたらだいぶ時間が経っていた。
メルザとミリルを連れて昼食を取りに行く。
これから動くことを考えて、軽めにスープだけ飲んでおいた。
「次の試合こそ活躍してみせますわ!」
「俺様もだ! にははっ」
「メルザさんはもうご活躍されたじゃないですか」
「そうか? ルインの新しい武器はすげーけどよ、俺様のは
ただの燃斗くれーだしよ」
「その前にエレメンタルだしていらっしゃったでしょ!」
「あー、そうだった……」
そんな話をしながらいつの間にか第二試合が始まる
時間になっていた。
試合会場へ急いで向かう。
「初戦では圧勝しましたルイン選手のチームが再び登場です!
ジンジ三兄弟をフルボッコにしておりました!」
「デンジー三兄弟だ!」
会場のどこからかツッコミが入る。
「このまま勝ち進むのか? あるいは負けてしまうのか? 大注目の一戦がまもなくはじまります!」
「……こういう参加者もありなんだな……」
「えぇ、これは困りましたわね」
「俺様の新幻術使っていいのか?」
「いや、燃え尽きるだろ……」
相手はどうみてもマリモだ。ものすごいぴょんぴょんしている。
マリモ三体。どうしろっていうんだ?
「そして、前回の対戦では目にもとまらぬ速度で動き回り、戦士三人を場外に落としたマリモンズ!
動きの速さについてこれるかが注目です!」
マリモンズってなんだよ! 適当すぎるだろ! ……まぁいい。
油断しないように戦う……っていっても殺したら負けだよなぁ。
はぁ……ルールを逆手にとられた感じだ。