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第六百九十九話 目的とは異なる場所。ラウンズの墓場

 泉から外へ出ると、聞いていた通り外は吹雪いている。

 気温差が三十℃はあるだろうか。

 十二分に支度はしていたので、ここからはプリマ頼みではある。


「それで話してた目的地ってどこだ?」

「覚えてないのか? パトモスっていうここから北西……いや、アースガルズから見てずっと

北西にある場所だ。その場所からずっと東に進んでいくつもりだ」

「ラウンズの墓場付近でございますよ。プリマ様」

「なんだ、それなら……こうだな。よし、入っていいぞ」


 そう言うと、あの恐ろしい鎌で空間を切り裂き、歪みをその場に覗かせる。

 本当になんていう術を持ってるんだ、こいつは……。


「ほら、早く入れ。閉じちゃったら労力の無駄だろ」

「わ、ちょっと押すなって……」


 俺とアメーダを押し込むように歪の奥へとおいやると、自分も後を追って入った。


 

「……ここはラウンズの墓場でございますね……」

「……おい」

「ここに来たかったんだろ? こんなところに来てどうするんだ?」

「だから違うって! 行きたかったのはパトモスって言っただろ!?」

「だからパトモスってどこなんだよ?」

「あなた様は少々勘違いしているようでございます。プリマ様には町の名前など伝えても

その術で向かう事は出来ないのでございますよ」

「そうなのか? 町には興味がないとか?」

「いいえ。そういうわけではございません。死霊族は霊と密接に関わるような場所に通ず……でございます」

「つまり、町の名前じゃなくて教会とか町の墓地の名前とかを伝えなきゃいけないのか。うん? アメーダが以前俺にマーキングしたっていうのは……プリマと似たような事が

出来るって事? つまり俺も霊と密接に……考えるの、やめとこう……」

「異なるものではございますが、そういうことでございます」

「……さすがの能力も、万能ってわけにはいかないってことかな。でも、あの泉付近には来れたよな」

「あの場所はそもそも、元々は鉱山の墓場だった場所でございますから」

「なんだよ。ここから近いんだろ? だったらさっさと行けばいいじゃん。

ほら行くぞ」

「わかったから引っ張るなって。まるで子供だな……」



 辺りを見渡すと、かなり大きい墓地だ。先ほどと違ってこの辺りは吹雪いていないが、雪は

積もっている。

 戦後に沢山の墓が出来て埋葬した場所……なのだろうか。

 こんなに多くの墓……今まで見た事が無い。


「ここは死霊族にとって知られている場所なのか?」

「ええ。シフティス大陸がどういった大陸か、ご存知でございますか?」

「魔王や人、神々などが激しく争う地……って聞いた事がある」

「そうでございますね。パトモスへ向かうまでに知っておいた方がいい情報もあるのでございます。

僭越ながらお話させて頂きたいのでございます」


 プリマは墓の上に乗りながら、次々と墓へジャンプして遊んでいる。

 死者を冒涜するなと注意したいところだが、そもそもプリマも死者だった……。

 混乱しそうなので辞めておいたが、雪で滑ると危ないだろうと告げて、普通に歩かせることにした。


「ラウンズ……それはここシフティス大陸で起こった大規模戦争の名称でございます。

多くの者が命を落とし、そして多くの時代が失われ、そして大きな力が産まれたのでございます」

「大きな力が、産まれた?」

「お前、何でこの大陸で永遠と戦闘が起こってるか、知らないのか?」

「知らない。争いなんて無い方がいいに決まってるだろ?」

「争いが起こらず全員生きてたら、食糧が枯渇するだろ」

「だったら生産すればいいだろ? これだけの大陸なんだし」

「芽吹かないのでございます」

「芽吹かない……?」

「大地ってのは栄養が無いと芽吹かない。還元されないと土地は死ぬ。土地が生まれ変わり力に

なるにはそこへ栄養がいきわたらないといけないだろ」

「それってまさか……」

「あなた様のお考えとは違うのでございます。安心して欲しいのでございます」

「それは力の行使。血や肉じゃないぞ」

「変なもの想像させるなよ。墓場で心臓に悪い……」


 少し嫌らしく笑うプリマ。これはわざとやったな……。


「だったら殺しあう必要はないって今、考えただろ。食糧や土地を奪い合うのなんて

どの世界でも一緒だ」

「それは……確かにそうかもしれない。食糧を、温かい土地を、幸せを、より贅沢を願うのが人だ。

この世から争いが消えぬ事もその心理から来るのは事実だが……」

「それでも法があればどうにかなるはずだ……と考えているのでございますね。

ですが話しあいがまともに行われるのは、意思疎通や行動原則、道理、倫理間が重なって

初めて起こり得るものでございます」


 言わんとしていることは理解できる。

 でも殺し合いにならないよう、動いた者だって沢山いただろう。


 俺がそう考えると、アメーダは首を横に振る。

 まるで俺の考えを見透かされたようだった。


「それほど、根深い戦争か……」

「その通りでございます。そして今も尚、その争いは続いているのでございます。

さぁ、そろそろ墓地の外でございますよ」


 そう言われて辺りを見回す。

 白い雪がシンシンと降り注ぎ、辺りを真っ白な世界に変えている。

 とても遠くに見えるのは……廃屋が乱立して見える街並みだった。


「あれがパトモスなのか……?

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