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第六百九十話 はちあわせ

 おい、団子屋に向かえ。


「あれ?」


 聴こえてるだろ。団子を食わせろ。


「……悪いが団子屋で少し話さないか」

「団子?」

「トリノポート、元三夜の町銘菓、団子屋モギだ」


 三夜の町が無くなってから一度も行っていない団子屋。

 この言葉に反応して、封印されていた全員が一斉に外へ出た。


「ふあー。良く寝ただ。お腹空いただ」

「もう領域へ着いたのか? 随分早かったな」

「流石に総じて色々ありましたね」

「少々白丕様と彰虎が心配ですな」

「サーシュ、後ほど出迎えを頼みたいんだが……構わないか?」

「了承。サーシュの役目、ここにあり」

「悪いな……セーレも一緒に行ってもらえないか頼んでみるよ。俺は来客の相手をしないと」

「そっちは私が行きましょう。ちょうど用事がありますので。シュイオン先生の様子も見に行ってあげてくださいね」


 ダメだ。お前はひとまず俺と交代。休んでな。


「……わかったよ。各自暫くはゆっくり行動してくれ。話し合いやヨーゼフの一件が片付いたら

急ぎシフティス大陸の東側に向かう。早くしないと子供、産まれちゃうし、メルザも戻ってくる

だろうから……」


 パモだけ肩の上に残すと、全員一斉に動き出した。

 セーレへの言伝はジェネストが引き受けてくれたので、俺は団子屋へそのまま直行した。


 団子屋モギは商店街エリア中央付近にある。

 いつのまにかこの商店街エリアは活気に満ち溢れており、お店の数も増えていた。

 獣人や亜人のお店が目立つ気がする。これはきっとムーラがうまくやってくれているのだろう。

 

「アメーダ」

「何でございましょう」

「暫くベリアルと代わる。少し……不遜な態度を取るかもしれないが、大丈夫だろうか?」

「あらかじめ伝えておけば大丈夫でございましょう。シカリー様はともかくとして、プリマ様は

そこまで礼儀を求めるお方ではございませんから」

「そうか……えっと、プリマ……さん?」

「ぷっ……君ね。今頃そんな呼び方する?」

「一応来客者だから、それ相応の応対をと思ったんだけど……」

「いいよプリマで。話も聞こえたし構わないよ。魂のぶれている方と代わるんだろう。

そっちとも話してみたいと思ってたんだ」

「どうにも団子に眼がないらしくて」


 バカ野郎。団子目当てだけで言ってるんじゃねえ。

 あいつの術……やばすぎるんだよ。

 歪術なんざ神でも使えねえ代物だぞ。

 原理を捻じ曲げる破壊者の術だ。まったくヒヤヒヤしたぜ。

 まぁだからこそ、手なずけちまうおめえは傑作なんだけどな……ククク。


「相変わらず悪い笑いをするな、お前は……それじゃ後は頼んだぜ……」


 ちょうど団子屋モギに入った時点で俺は意識を手放した。

 疲れた……といえば疲れた。

 やはり目的ってのはスムーズに行くものじゃないな。

 世の中そんなに都合よく出来てはいない。

 守りたいと思う者が多ければ多い程、その道のりは険しくも、重くもなる。


「げっ……いきなり出くわすのかよ。やべえ!」

「イネービュ……イネービュー!」

「うん? やぁ。プリマじゃないか」


 激しい怒りで団子屋が揺れ始める。

 店長のモギは口をお盆で覆い、おろおろとしだした。

 一方のイネービュは何事も無かったかのように団子を口に入れている。

 

「おい!団子もらうぜ! 金は後で払う」

「え? あれルインさん? 何か雰囲気全然違うような……あの、は、はい!」


 ベリアルはすぐさまモギがいる後ろのテーブルから団子をひったくり、プリマの口に放り込んだ。


「怒る前に食え。店が壊れたらこいつが食えなくなる」

「モガッ……ビネービュ! ……うむ、美味だ」

「怒るなとは言わねえが、暴れるな。頼む。そして俺の指を舐めるのはよせ」

「……そういう約束だった。悪かった」

「へえ。まともに話し合いが出来るようになったんだね、プリマは」


 再び油に火を注ぐイネービュ。

 こいつぁわざとやってやがるな。

 はなっから遊び半分の神だとは思ったが……。

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