第六百八十四話 プリマとセカ、ロブロード対決前
「経験者ならルールはわかっているな?」
「いや、久しぶりだからすべてのルールを把握していない」
「……いいよ。それならルールブックを渡してやる」
既にルールを書物化してあるのか。
俺がロブロードをレェンたちに託して随分と経つ。
あれからルールなどは変わったのだろうか。
一応駒はいくつかエーナにもらったものがある。
黒いフードの性別不明者、プリマ。背丈は小さいが、覗く瞳は紅色。
こちらに反抗の意思なしとみると、ゆっくり鎌を下ろし、上へ放り投げる。
それは地面に突き刺さらず、地面へすり抜けていった。
その代わりにロブロードの台となるようなものと、椅子、そして飲み物を入れる容器が出てくる。
さらにもう一人、黒いフードの者も現れた。
……違う領域からなのか。
或いは……いや、考えるのはロブロードの方だ。
ロブロードのルールブックをじっくり見てみる事にする。
……ルールはこんな感じだった。
・六枚のピースで構成される。アタックピース二枚、ディフェンスピース二枚、アーティファクト一枚、
ロードピース一枚。ロードが弾かれて落ちると負けとなる。
・アーティファクトは使用効果発動が二回。それ以降の効果は発動しないが強力。アーティファクトは破壊されない。ただし落とされる可能性はある。
・弾くのはアタックピースのみ。一アタック目でロードを最初に直接狙う事はできない。
・アタック、ディフェンスピースを全て落とした場合、自らのターンの時に、ピース補充を宣言できる。
ただしそのターンには補充されず、次のターンに一枚の補充となる。
・ロードを狙う時はいずれか二つのピースの間を狙う必要がある。しかしアーティファクトを覗くその他の
ピースを落とし、間を挟めない場合に限り、直接ロードを狙う事が可能。これをキリングタイムという。
……こんなところか。変わった部分もあるが、おおまかには変わっていないな。
「読み終えたら返して」
「ああ。ありがとう、ええとプリマでいいのかな」
「いいよ。君の名前は聞かない。予測はついているから。質問権がないし」
「……駒は俺の持っているの、使えるかわからないけど使っていいのか」
「当然。そうじゃないと勝っても奪えない。経験者と戦う楽しみがなくなる」
「それじゃ、始めよう。サポーターはアメーダ」
「こちらのサポーターはセカ。所有はこの十枚。うち六枚は左側の穴、補充可能用は四枚右側の穴にいれて」
「ああ。見せなくていいのか?」
「見せたら置く楽しみがなくなるでしょ。何が置かれるかが楽しいんじゃない。
でも相手のを見て替える事はできない。だから事前に伏せて置ける穴がある。別に変な事は
していないから。そんなことしたらつまらないし」
「イカサマ、嘘は嫌いなんだな、死霊族ってのは」
「……始めるよ。最初にプリマから置く。交互にいちまいずつだ。一番最初にロードピースから
置く事。後は好きな順番に置いていい。セカ、飲み物を入れて」
「……主よ。戯れの者にでございましょうや?」
「そういう決まりだからと言っているのを忘れた?」
「……御意。こちらは最高級の種を焦がし、熱い湯を通した飲み物。戯れの者には勿体ない飲み物。
有難く啜るがいいでしょうや」
「口が過ぎるのでございます。そちらにご用意されずとも、こちらで用意できるのでございます」
「セカ。訂正しろ。相手は死霊族のアメーダを連れてる。戯れに違いないが恐らく探していた奴だ」
「……ふむ。ではこちらを。多少の礼儀は払いましょうや」
「またおかしな口ぶりの奴だな。しかしこれは……珈琲のようなものか。いい香りだ」
「……それも失言でございます」
「ふうん。まぁ今は勝負を楽しみたい。ロード、置くよ」