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第六百八十二話 出たとこ勝負しかない

 小屋を出て外に出ると、肌寒さが一段と際立っていた。

 しかしアメーダは服を手渡してくる。


「奥方様よりこれを預かっているのでございます」

「ああ、ありがとう。あれ? ポケットに何か入ってる。温かいぞ……」

「ぱーみゅ!」

「おや? 不思議生物がいるのは気づかなかったのでございます」

「なんだよ。置いてくなって?」

「ぱみゅう……」

「悪かったよ。荷物、置いてきてくれたんだな。よし、一緒にいこう。いつも一緒だ」


 そう約束したんだったな。パモを封印し、下山を開始する。

 麓までは直ぐだ。麓に差し掛かると、確かに崩落している場所が見える。

 まるで一部をくりぬいたかのような状態。

 しかもかなり深い。ビーの身体能力でも無事かどうか……いや、そもそもまだ

ビーが崩落に巻き込まれていると決まったわけじゃない。


「他に崩落する可能性のある場所はあるか?」

「見受けられないのでございます。あれも、ある条件下でのみ起こせる天変地異のような術でございます」

「天変地異を起こせるって……それじゃ神だろう」

「神に等しい力があるのでございます。アルカイオス幻魔の流れをくむもの全て」

「全て? それじゃメルザも……」

「ご想像の通りでございます」


 沖虎に乗りながら状況を整理していた。

 狙われたのはほぼ間違いなくヨーゼフ。ヨーゼフを迎えに行ったビーたちは戻っていない。

 崩落を見つけた沖虎やジェネストは支援活動の一環で食糧を受給している。

 強風により崩落下には降りられない。そして、ルジリトが恐らく、策を考えているはず。

 原因を引き起こしたアルカイオス幻魔の死霊、プリマは敵対すべきではない相手だが、絶対神に

恨みを持つ。


「俺がイネービュと繋がっているのはばれてるよな」

「ええ。あなた様の名前を知れば、即座に」

「その場合どうなる?」

「悪い方の予測で拘束、良い方の予測で力試し、どちらともいえない方で無視でございましょうか」

「力量を試されて、認められる可能性は?」

「ございません。桁が違い過ぎるのでございます」

「……ならば名乗らないという選択肢は」

「それもございません。嘘をつけばというお話はしたと思うのでございます」

「つまり、出たとこ勝負しかないか。沖虎、ルジリトはどのあたりだ?」

「恐らくこの山の反対側にある丘付近で崩落の中を見ているかと」


 沖虎に案内され、山の麓の更に東寄りにある丘へ向かってもらった。

 崩落した地点は山の麓部分の少しだけ北側。

 ここから見渡す限り直径二百メートル程の範囲の崩落だ。陣を敷くサイズ丸々といった形だろう。

 自然崩落と決定的に違うのは形だ。すっぱりと切り取ったかのような沈み方をしている。

 これはどちらかというと地底へと引きずり込まれたような形……か? 


「これはもしかして、地底に引きずり込まれたってことはあるか?」

「どうでございましょう……プリマが地底と地上を繋げる事ができるとは思えないのでございますが……

なぜそう思うのでございますか?」

「崩落の形が、単純な崩落じゃなく引きずり込まれるような形に見えたんだ。それで……」


 そう言うとアメーダは珍しく……いや、初めてだろうか。思案しているように見えた。

 

「恐らく地底ではないのでございます。そこは安心して欲しいのでございますが……別の領域の

可能性は否定できないのでございます」


 話しながら目的地である丘付近に差し掛かると、ルジリトが直ぐ見えてくる。

 丁寧にお辞儀して待ってくれていたが、どう考えても寒そうだ。

 俺に渡してくれた服をルジリトに渡すと、着てもらった。


「これは!? おお、なんと温かい」

「猫眼鬼族ってのは猫って言うくらいだから寒さに弱いだろう? 俺は大丈夫だから使ってくれ。

すまないな、こんな寒いところで作業させて。他のみんなは?」

「まだ不明点が多いので情報収集を。それと食糧の確保をしております。

白丕様、彰虎はおりませんか? 力仕事を頼みたかったのですが」

「こちらではなくメイズオルガ卿への使者として向かってもらっている。力仕事なら俺が……」

「いえ、主殿は無茶をしすぎでしょう。まず報告を致します。こちらへ」


 山麓の小屋よりもう少し大きめの風を凌げる小屋へと案内された。

 仮説で作ったのだろうか。よくできている。

 

「状況はあまりよくありませんな。サーシュ、リュシアンに確認してもらいましたが……地の底が

見えません。降りようにも強い風に阻まれ進行不能。肉類なども投げ入れましたが上空へ打ち出され

ます。しかし草や水などは投げ入れが可能でした」

「一団の陣地を敷設していた場所が崩落したなら、食糧はまだあるはずだ。

気になるのは安否だが、確認する方法はないものか……」

「声はとどかないのでございますか?」

「反応はありませんな。呼びかけに答える声は一切無く……」

「あなた様が声をかければ、何かしらの反応があるかもしれないのでございます。

例えばでございますが……ビー殿へ、自らの名を叫ぶよう進言してみて欲しいのでございます」

「自らの……名前? そうか!」

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