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第六百八十一話  死霊のプリマ

 翌朝起きると、目の前には明るい食卓が広がっていた――――あれ? 夢をみているのか? 

 と思ったら、夢ではなく現実。

 アメーダがいつのまにか現れて、朝早くから支度をしていたらしい。

 ナナーとビュイが争いながら食事をかきこんでいる。


「おはようございます。お食事のご用意ができておりますが、先に水浴びでもいかがでございますか?」

「新婚夫婦のやり取りみたいなのはよしてくれ。泉の方は無事に済んだか?」

「ええ、滞りなく。こちらの崩落現象についても調べて参りました。

それよりあなた様。空の旅はいかがでございましたか? ――――ああ、そちらの石は差し上げます。

二つは使用済みでございますから、ただの石でございますよ」

「使い切りだったのか。貴重なものじゃないのか?」

「そうでもございません。あなた様のお知り合いにもこういった術がお使いになれる方がいるのでございましょう?」

「コーネリウスの事か……本当によく知っているな」

「そうでございますね。巧みに隠蔽された情報でもない限り、知る事は難儀ではございません。

それよりも、席に着いて欲しいのでございます」

「わかったよ……あれ? このスープ……」


 俺は見覚えのあるスープに驚いた。そこに出されていたのは紛れもない……ミソスープならぬ味噌汁だ。


「これをどうやって作ったんだ?」

「カル豆というものを煮詰め、発酵していった段階のものを用いているのでございますよ」

「……どう見ても味噌汁だが、味が全然違うな。これはこれでいいと思う」

「やはりあなた様はこれに近しいものをご存知なのですね……うふふふ……あなた様の勝ちはやはり、計り知れないものでございます」

「味噌汁を知っているだけでか?」

「いいえ、そちらではございません。あなた様は味が全然違うと。つまりもっと美食を知るということ

でございましょう」

「確かに料理は好きだ。あらゆるものを作ってみたことがある。視覚がない分味覚が鋭かったのか、自分の

気に入る料理を作りたかったんだ」

「世界を滅ぼせるものが、なぜ世界を滅ぼさないか、考えた事はりますでございましょうか?」

「世界を滅ぼすものが、世界を滅ぼさない理由……?」


 思い当たる節はある。それは家族であり権力であり象徴。

 優しい気持ちがあるから……などという事ではない。

 娯楽があるからだ。


「そしてあなた様はそれらを提供できる……いわば破壊者にとっての玩具……となりうるのでございますよ」

「だがそうすると……待てよ。俺以外にも転生者はいるんだよな。それが、ヨーゼフ? 狙われた?」

「お察しがいいのでございますね。あの崩落は自然現象ではございません。確実に狙われたということで

ございます。つまりは危険な状態にある……こちらで一晩休まれたのは実に正解でございました」

「急いで全員集めないと!」

「安心して欲しいのでございます。危険なのは崩落の先。下のものを助けるとなればそれ相応の

危険も生じるのでございましょうが……」

「俺はビーを見捨てたりはしない。それに、ヨーゼフに会わなければならないんだ」

「それこそが、あなた様でございますね。いいでしょう。最悪の場合、無理やりにでも連れ帰るのでございます」

「お前がそう思うほど、まずい相手なのか」

「死霊族についてはお話を少ししたと思いますが覚えておいででございますか?」

「ああ。メルザと同じ原初の幻魔……アルカイオスの流れをくむものの死霊……だったか?」

「その通りでございます。その中にシカリー様やアメーダも含まれるのでございますが……

それ以外の者。原初の幻魔、死霊のプリマ。あの崩落はその者による行動の可能性が高いのでございます」

「プリマ……? 初めて聞く名前だな」


 その後アメーダに、詳しい話を聞いた。

 プリマとは良好な関係ではないこと。未だゲンドールを今の形にした絶対神に恨みを持つ事。

 現状敵対するのが好ましくない事など。


「ここで考えていてもわからないし、現地へ向かおう」

「そうでございますね。それでは早急に支度を整えるのでございます」

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