第六百七十四話 ガードネスクロウル戦前編
エプタの情報により地形を把握。
いよいよ作戦に移行する。
「いいな、暴れ過ぎるんじゃねえぞ。他のモンスターが来る可能性もある。
この場所から先と奥はまだ調べられてねえ。あいつに見つかっちまうからよ」
「わかってる。俺はなるべく暴れないように攻撃するつもりだ。だが……」
「よっしゃーおめえら! 骨蔵族の実力、とくと見せてやろうじゃねえか!
気合入ってるかー!? おお!?」
『ひゃっふーい!』
「よーし十分じゃねえか。いざ、突撃ーー!」
「えっ? ちょ、まだ何も……」
こちらの言うことを聞かずに下へなだれ込む骨たち。
全然準備してないぞ!
「ビュイ、ナナー。ここから攻撃を。ドーグルは封印内でサポートを頼む。
ファナ、サラ、ベルディア、レミは出てくるなよ。お腹の子供に響いたら大変だ」
「ちっ。なんななんだあのアンデッド共は。真正面から突っ込みやがって……」
「エプタ! お前は奇襲で頼む。その剣ってああいうやつに効くのか?」
「効いてたら俺だけで余裕に決まってんだろ! くそが、おいナナー! さっき
手に入れた短剣を貸しやがれ!」
「これ貸しちゃってもいいだ? 未鑑定だと危ないってルインがさっき言ってただ」
「構わねえよ。足手まといになんざなっちまったらやってられねえだろうが!」
「わ、わかっただ。そんなにどならないで欲しいだ」
「あ? 俺は別に怒鳴ってなんか……あー悪かったよ。もっと丁寧に言えばいいんだろ、くそが」
「こやつ、全然理解しておらんな。一発くらわすか?」
「だー! 全面的に俺が悪かったって。早く貸してくれ!」
エプタの様子を少し見ていた。こいつは初めて会った時と比較にならないほど
変わったな。
イーファとドーグル。二人と行動したのが本当に大きかったんだろう。
あの感じだと、ナナーとビュイ二人と組ませるのも悪くはない。
「……本当、悪くないな……先行する! 封剣、剣戒!」
「ティーちゃん参上でごじゃろ!」
「あちし、がんばる!」
「……相変わらずシリアスなシーンを破壊してくれるな、お前たちは」
「何でごじゃろ? あのモンスター」
「本当ね。見た目はロークロウルだわね」
「二人ともあれを知ってるのか?」
「硬くなる技や弱毒を吐く古代のモンスターでごじゃろ」
「古代のモンスター……」
「でもあちしが知ってる形と随分違うの。どーして?」
「喋ってる暇はないぜ。そろそろ最下部だ。先に行ったツァーリさんたちは……
本当に無視されてるな」
共に戦うと意気込んだツァーリさんと骨蔵族。
先に話していた通り、本当に無視されている。
自分の骨を投げつけたり、つついたり、頭蓋骨を乗せたりもしているのだが、微動だにしていない。
「おいこっち向けやガードネスクロウル! 今日は中央に陣取ってる邪魔なおめえを
退治しにきた! いっつもおめえを避けながら動く俺たちの身にもなってみやがれ!」
「……」
「聞いてんだろこのナメクジ野郎! 出でよ、死神の騎士!」
「フォー!」
「いけ」
「フォー?」
おいおい、ツァーリさんも変なやつを呼び出したぞ。
こいつはレウスさんの死神の遣いみたいなやつか?
見た目は一メートル程のサイズの騎士……の骨だ。
スカルナイトってやつか? これは期待できそうだ。
招来されたスカルナイトはかっしゃかっしゃと走る。
ガードネスクロウルとは反対方向へ。
……あれ? なんでそっちいくの?
「かー。あの野郎、相変わらず命令とは逆に動きやがる。まぁいいか」
「いや、よくねえよ!」
思わず突っ込んでしまった。そしてその声に反応したのか、ガードネスクロウルが
動き始めた。
「ギシギシギシギシ……」
黄色い胴体を動かし、斑点の黒ぶちがついた巨体は、スムーズに旋回。
俺の居る円柱下の螺旋階段を降りた方へ体を向けると、全身から一気に糸を放出し始めた!
「やっべぇ! 全方位攻撃かよ! 赤閃!」
慌てて二剣で斬撃を放つ。しかし斬撃でスパッと斬れるはずが、糸に拮抗して
斬撃が消滅。そのまま二剣で受け止める姿勢となった。
「なんだこの糸!? 全然切れないぞ。お前ら切れ味落ちたんじゃないか?」
「失礼でごじゃろ! この糸をよく見るでごじゃろ!」