第六百六十六話 廃鉱山前、布陣
奇妙な腕に襲われた事で警戒を強めた俺たち。
しかし目的地となる廃鉱山付近にはひとまず辿り着いた。
ここから少し部隊を分けなければならない。
まずヨーゼフの許に向かったビーと合流する者。
これには空中から向かってもらう必要がある。
未だ戻らないということは何かがあったと踏んだが、ジェネストがこちらへ向かっている。
廃鉱山へ向かうように指示を出さねばならない。
次に廃鉱山奥の道を確認する者。
これは洞察力や地図作成に向く者が好ましい。
中は当然危険なので戦力も必要だろう。
次に廃鉱山前へ本陣を構えて護衛する者。
帰る場所がなくなれば身もふたもない。最も重要な役割だ。
そしてできれば一名か二名。素早く動ける者で、メイズオルガ卿に報告できる者。
こちらは機動力があればそれで十分だ。
「全部で四部隊だな」
そう呟くと、近くに待機していたルジリトが頭を垂れる。
「私もそう思います。最も危険な道がジェネスト殿が向かわれた方と考えますが、いかがかな?」
「俺とは少し違うな。ここで護衛する方が厳しいだろう? それに廃鉱山の中もわからん」
「いえ……あのジェネスト殿がてこずる程の相手。しかもサーシュまでおります。
上空、地上を制覇して尚てこずるような相手となると、相当厄介な状態にあると思われます」
「……確かに。優先すべきはジェネストたちの方か……」
「いえ、廃鉱山でしょう。あちらは偵察と進行を同時に行うべきです。
時間がかかって仕方がありませんからな」
「ではジェネストたちの方は?」
「ミレーユ王女、それからリュシアンに向かってもらいましょう。
王女の護衛にもう一名、レッツェル殿でしたかな。彼女をつけられてはいかがでしょうか?」
「そうだな、レッツェルならかなり高位の魔術師だ。適任かもしれない」
「では誰がどこに向かうか、どうするかを割り振りましょう。主殿は廃鉱山へ進んで頂きたい。
いつアメーダ殿が戻られるかもわかりませんし」
「できればビーの居る方……ジェネストの方に向かいたいんだが」
「そちらは上空から情報収集、可能であれば接触を試みる程度にとどめるべきです。
そちらへは私が行きましょう」
「廃鉱山の探索には誰が適任だと思う? 俺以外に……白丕と彰虎あたりか?」
「いいえ。エプタ殿、それとビュイとナナーを。ドーグル殿を封印へ。それと
奥方様の中でもファナ殿は変身術でバットに変身できるとか。ぜひお連れください。
廃鉱山で聴覚が鋭いバットは特に有望です」
それはそうだが、ファナの能力までもう把握しているのか。
さすがはルジリトだ。頼りになりすぎて怖いくらいだ。
「こちらの守りは大丈夫か? イーファがいるとはいえ、エー、レッジとジェイク、メナスで守り切れるかどうか……」
「あちらの老人は体操お強いようですから大丈夫でしょう。それに守るべき対象の方も。
というわけで白丕様と彰虎にはメイズオルガ卿への報告を任せましょう」
「そうだな。いざとなったらベルディアやサラ、ブネだって戦うか」
「四幻それぞれがバラバラに行動している以上、戦力は分散されてしまいます。
どれも重要な役割。抜かりなきようお伝えくだされ」
「ああ。皆、聞いてくれ!」
ルジリトと話し合った内容を伝えると、各々組み通りへ移動して、行動を開始した。