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第六百六十五話 新たな旅路 這い出る腕

 雪を踏みしめながら確実に進んでいく俺たち一行。

 アルカーンさんは能力が封印されているので、サラたちと同じく乗り物に乗っている。

 エプタ、ルジリトたちの協力のお陰で、地図が完成しており、道に困る事なく最速で目的地への

道を動ける。この辺りはメイズオルガ卿やコーネリウスのお陰なのだろう。

 アースガルズへ戻る時も、モンスターを殆ど見かけずにすんだ。

 俺は後方をメナスとリュシアンに一時任せると、ジェイクのいるあたりまで向かう。


「街道の整備が全然追いつかないな。これでは大幅に物流が滞るだろう。

今のところは備蓄で事足りるのだろうが……あまり時間はかけられない」

「でもこの場所は本来はモンスターが多いじゃんよ。街道を用意しても壊されるじゃん?」

「それなら壊されない街道を敷設すればいいだろう? それとか、モンスターが

嫌がる音を発するようにするとか。工夫次第で道は安全となるだろう?」

「……そんな発想普通考えないじゃんよ。やっぱりシーは特別じゃん。俺っちは結局王女様に

一言もお礼を言えなかったじゃんよ……」

「そういえばジェイクは何で王女様を助けようと?」

「……つまらない話じゃんよ。それよりそろそろやばい場所じゃん。

気を付けるじゃんよ」

「……このあたりか。ビーが友人を失いレナさんを助けたっていうのは」


 そこは廃鉱山へ向かうにもう少しある場所。

 見晴らしは悪く、草が生い茂っている。

 先頭を行く白丕や彰虎に乗っているナナーやビュイの頭がギリギリ見える程度だ。

 長い草を剣で刈り取りながら進むが、こんな場所で不意打ちをくらったらたまらないだろう。

 ……と考えている間もなかった。

 次々地面にボコボコと穴が空き、地中から出てくるのは……腕だけだった。

 

「なんだこれは……ターゲットに反応が無いぞ?」

「無作為に襲い掛かる死者の怨念の塊だ。生者に纏わりつき、地中に埋める。

油断しなければ大した相手ではない」


 ブネがそう叫ぶと、乗り物の周りに何かを振りかけていく。

 聖水のようなものだろうか? 


 地中から出てきた腕に対し、急ぎ取り出したティソーナで斬撃を飛ばす。

 しかし場所が悪すぎる。草が邪魔でどこから出てくるのかが非常にわからず、攻撃対象がランダムなため

居場所も察知出来ない。


「何かいい方法は……いっそ斬撃で辺り一面薙ぎ払うか……?」

「やめた方がいいじゃんよ。どう考えても味方にあたるじゃん!」

「……」


 ジェイクと横並びになり考えていたまもなく――――ミレーユ王女が空に浮かんでいた。

 話には聞いていた。王女は数百もの招来術を行い、国民に挨拶をしてみせると。


 それは紛れもなく本当の話だった。

 王女は言葉が喋れない。つまりメルザがラージャを呼び出していた時のように無詠唱で

招来術を行使した。

 そこには幻術招来とは明らかに異なる魔の生物たちが次々と地面から生えてきた腕に攻撃を開始する。

 

「……凄いな。なぜあんな的確に位置がわかるんだ」

「きっと何かに反応してるじゃんよ。それが何かはわからないじゃん」

「もしかして、体温か? 俺たちはこの雪の中でも移動しているから高体温だ。

あの腕は地中から出てきたそれこそ死体のようなものだろう」

「その可能性はあるじゃん。でも王女は喋らないじゃんよ」


 冷たい目線を上空から地上へ向ける王女は、指揮棒を振るうように大きく腕を振るうと、地中から

這い出た腕はバラバラに飛散していく。さらに……招来された者は、視界を遮る草を次々に

風術のようなもので刈り取っていった。

 一気に開けた視界。その先に見えたのは……。


「あったぞ。あれが廃鉱山……なんて禍々しい鉱山だ、入り口からして毒のような色をしているな」

「あの中に入るじゃん? とんでもないじゃんよ……」


 刈り取られた草が吹き飛び露になった道の先には、紫色の怨念渦巻く廃鉱山の入り口が見えた。

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