第六百六十一話 強すぎた仲間たち
前方の敵は数が多い。この大陸のモンスターは強力だと聞いていた。
最初に現れたブラックボアやシザーマンティスなどは、この大陸のモンスターとしては弱すぎるはずだ。
なにせ前方にいるのは……地竜アビシャフト。以前この辺りで襲われたやつと同じ個体だろう。
十数匹はいる。
後方を見るとあちらは翼竜。種族は確認できないが四匹の竜種だ。
挟み撃ちとなる形で各々対応しなければならない。
「お、ご飯だ!」
「ちゃっちゃとやっつけるか」
彰虎、白丕から降りた二人は半数のアビシャフトへ向け突撃を開始する。
それに彰虎、白丕も向かっていった。
残り半数の方面へは、イーファ、ドーグル、エプタが既に向かっている。
前方をサポートするべく、着地とともに剣を呼び出し後方から追う。
全員素早い……先鋒を任せるのにうってつけの力だ。
ナナーはベリアルが渡した武器から角の生えた兎のようなものにまたがり移動している。
サイズ的にはアビシャフトの方が断然大きい。そのままぶつかってはひとたまりもないだろう。
ビュイは凄い速さで駆け寄り、そのまま格闘戦闘。
彰虎はナナーの後に続き、白丕はナナーを追い抜いて、一足先にアビシャフトへ攻撃を開始した。
「ちょっとだけ新しい仲間の戦闘をみてみたいね」
「わらはそれより早く片づけて、久々に領域でゆっくりしたい」
「おめえらは相変わらず呑気だな。だが賛成だ。早いとこ片付けてゆっくりしてぇところだ」
イーファたちは既に万全を整えている。イーファの混合術をエプタが吸い込み、それを倍返しで
吹き出す。さらにそこからドーグルが先頭の動きを念動力でわずかに封じて、絶対回避不能の道筋を造る。
……あっちにフォローはいらないな。
更にもう一度地面から跳躍して白丕のいるところまで一気に飛び……白丕が対峙していたアビシャフトが
それと同時に崩れ、その上に乗ろうとしていた俺は体制を崩す。
「おわっ!?」
「何を遊んでおられる。こやつはもう始末しました。次!」
アビシャフトには深々と何かが突き刺さった後があった。
白丕自身が戦うのは見た事が無かったな。
凄まじい程の脚力で、不動の体感を持ち、彰虎以上の力を持っているのは確かだ。
しかしこの傷は……牙か?
更に次から次へと押し寄せてきていたアビシャフトを、同じ要領で次々に串刺しにしていく。
ビュイは滅茶苦茶な体術で、こちらもどんどんアビシャフトに致命打を与えているようだ。
おいおい……どこのフー・トウヤだよ。
以前の俺なら膝から崩れ落ちるところだぞ。
「こいつ食ったらうまいのかな?」
「後で焼いてみるだ」
「ナナーは一匹しか倒してないからちょっとだけだぞ」
「それじゃもっと倒してくるだ!」
兎のようなソレは更に倍化するほど大きくなり、ついている角も大きくなる。
それには目があり標的を探すように目が動くと……残っているアビシャフトに向けて、今度は
勝手に走り出した。
自分の肉体事アビシャフトへぶち当たり、兎は消滅したが、アビシャフトも絶命した。
「ナナーのその武器。ベリアルからもらったんだよな?」
「そうだ。主は本当に凄いだ。いろんなものだせるだ。サーシュにはラーヴァティンとかいう
武器をあげてただ」
「ラーヴァティンて、あれ、一応俺のだったんだけどな……」
「あれで肉体構築させたみたいだぞ? うまく使えているかは知らぬけどな」
腕を組み少し考える。しかしうまく戦ってくれたこいつらをまずはほめよう。
頭をくしゃくしゃと撫で回して褒めてやる。
「二人とも見事だ。ベリアルも喜んでるぞ、きっと」
「えっへへ……沢山肉食べるだ」
「ごちそうごちそう!」
「とりあえずパモにしまって、食事はそのあとな。後ろがまだ片付いて……るわ」
後方を見ると、メナスの招来した術と、リュシアンが手を上に挙げていた。
更にはレッツェルと王女が魔を行使していたのがわずかに見えた。
そういえば王女はあの国一番の魔術使いだったな……。
どんな戦い方をするのか見たかったが、今はこの物騒な場所を早く抜けよう。