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第六百五十七話 マーキング

 エプタたちと話していたら、その話を読み取っていたのか、アメーダが二階へと上がってくる。

 しかし表情はなぜかそっぽを向いたままだ。その恰好で進んでくると、とても怖いんだけど。


「話は聞きましたが、王女はやはりあなたを苦手としているようでございますね。首を前に

向けたいのですが、あまりいう事をきいてくれないのでございます」

「そのままでもいいけど、話は聞いてたんだよな、それなら……」


 先ほどの件についてはアメーダも考えるところがあるらしい。

 それもそうか。自らの主人の家に、知らない者や神の遣いを何名も押し寄せたら、いくら

ロブロードの相手が増えるとはいっても躊躇するだろう。

 それにエプタも同行するなら失礼な者に該当するかもしれない。


「提案に提案を重ねるのは少々気がひけるのでございますが……ツイン様の領域。

そちらと死霊族の領域を繋げる……という提案をシカリー様にしてみるのはいかがでございますか?」

「却下だ。あそこは安全じゃねえ。改造する必要があんだよ」

「失礼な方は黙っていて欲しいのでございます」

「……けっ」

「だがエプタの言う事も本当なんだ。あの領域は現状確実に安全とは言えない。

何かあれば直ぐ連絡は来ると思うけど」


 そもそも長期間留守にしているのだって本当は気が引けるんだ。フェドラートさんとアルカーンさんが

いなければ、とてもじゃないけど離れられなかっただろう。


「死霊族との領域を結び付けつつ安全面を向上させればよろしいのでございますね? 

現在シカリー様の許で動ける死霊族は、アメーダを含めると十九名。シカリー様を入れて

その数二十名でございます。その二十名全て、領域を荒らす事のない契約を結ぶ事を約束

出来るのでございます」

「なぜそこまでこやつに加担するのだ? シカリーは」

「……ブネ。あなたはツイン様に加担していないとでもいうのでございますか?」

「それはルインをずっと見てきたからだ。キゾナ大陸の頃からずっとな」

「おやおや。それならば我々の場合はずっと探していた……が的確な発言でございますね。

魔の王として最高の器である、ベリアル様を……でございますが」

「ならば貴様はベリアルをどうにかするためにルインを?」

「いいえ、そうではございません。まさかロブロードを考案したものがベリアル様と

同一人物であるとは、最初から考えていたわけではございません。

別々にお誘いするつもりでございました。つまり我々にとって彼は最大重要者と

なってしまったのでございます。その彼の頼みであるなら、安全を最優先に提案することが

可能……ということでございます」

「それほどまでに重要な任務をルインに任せたのか」

「そうでございますね。我々死霊族には行えない事でございます」

「主が不在だけど、あいつならこういう時どうするのか、誰を頼るかは理解してる。

アメーダの意見を受け入れよう。ルーンの町と死霊族の領域。繋げてみてもらえるか」


 俺はメルザの事を考えていた。

 あいつならきっと「いいんじゃねーか? その方がおもしろそーだ!」って言うに決まっている。

 それに今更だろう。愉快な骨やモラコ族、トカタウロスのラッパーに、幻の竜。

 多くの獣人、亜人も暮らす町だ。

 規律は必要だろうけど、皆仲良く暮らしている。

 ジャンカの森も既に村となり、開拓が進んでいるだろう。


「しかし、どうやってルーンの町へ? ここから町を目指していたら、かなり時間がかかると

思うけど」

「ご安心を。一度王女から離れるのでございます。その間にシカリー様へご報告し、また戻って参れるように

マーキングを施させていただくのでございます。

ツイン様の領域には、余っている入口……となるものはございますか?」

「余っている入口? うーん……泉ならいくつかあるけど」

「他の領域と開通していない泉はございますか?」

「ああ、それならある。そのうちの一つとどこかを繋げるっていうのか?」

「その通りでございます。こちらへ戻る前に通った道を、北にそれた場所に

廃坑がございます。こちらはグールと化した者が出てから使用禁止となっているので

ございますが、この廃坑の奥にちょうどいい泉があるのでございます。こちらへ

領域を繋げることをお勧めするのでございます」


 北の廃鉱山方面? それならば位置的にはジェネストたちを向かわせた場所にかなり近づける位置だ。

 リュシアンの力を借りられれば、ビーたちの場所へも寄っていけるか……。


「しかしどうやって泉を領域へ繋げるんだ?」

「そちらはシカリー様の許可を得れば、お持ちできるのでございますが……ツイン様。

あなた様にアメーダが戻れるマーキングをさせて欲しいのでございます」

「マーキングって何……」


 俺の許可を得る前に、アメーダはさっと手を取り、手の甲に口づけをする。

 マーキングってこれかよ! これなら王女とかでもよかっただろ……。

 横にいてそっぽを向くミレーユ王女に酷い目で見られてるじゃないか。


「この場所に戻ってくる方法が必要でございました。王女ではダメでございますよ。

数日お時間がかかるのでございます。皆さまは明日にでも出立され、泉を目指して欲しいので

ございます」

「わかったよ。急な話だが皆に話してみるよ」


 そう言うとアメーダは懐から鈴のような物を取り出し、チリーンと鳴らすと、姿が見えなくなった。

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