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第六十一話 グフ亭 しらかばにて

「へくちっ……ちくしょう何で俺様がこんな目にあわなきゃ」


 メルザは濡れた身体を布で拭きながら、俺の無幻闘舞をはおらせておいた。


「いくちっ……くそ、なんで俺が水浸しなんだ、ちくしょう」


 セフィアさんも布で身体を拭いているが、まるで姉妹みたいだ。

 やっぱこの二人似てるな。


「いや、あのまま放置してたらまずかったからな。色々と。それでさっきの話の続きだが」

「俺様、腹減った!」

「俺もだ、まず飯をよこしな!」


 ……食いしん坊まで被るのかよ。

 しかもこの二人息ぴったりだな。


「あー……わかった。何かもってくるか」


 すると部屋をノックする音がした。

 どうぞと言うと、カチューシャを身に着けた女性が入ってくる。


「やはりこちらでしたか。ルインさんお加減はもうよろしいんですか?」

「おうミリル! 腹が減ったから飯を食いにいこーと思ってよ!」

「おう、そいつぁいい! おいハーヴァル! でかけるぞこら!」

「え? ここじゃダメなの?」

「ダメに決まってるだろうが! おめぇは女三人こんな

狭いとこに押し込めて飯食わすきか? あぁ?」


『そーだそーだー!』と拳を上げて女性陣一同が相槌をうつ。


「けどなぁ……あー、わかったからその玉降ろせって! 

お前のは洒落にならないんだよ」


 はぁ……と師匠とハーヴァルさんはでかいため息をついてうつむく。 

 セフィアさんは「勿論てめーらのおごりだぞ?」とトドメを刺す。

 ライラロさんはライラロさんで大変だが、セフィアさんはセフィアさんで

違う意味で大変だな。


 ――それから部屋を出た俺たちは、大会会場を一旦出てすぐ近くの綺麗な店

【グフ亭シラカバ】とかいう店に入った。


 毒魚を食べれるようにした一品料理とある。

 これってもしかしてフグなのか? 

 グフだと青い巨大な星の奴に思えてしまうんだが。


「それで、俺様に何の話だ? あ、ファナの事は聞いたぞ。

ありがとな! ライラロ師匠がいれば安心……いや不安だけどよ」


 俺たちは道中の事を思い出し暗くなる。


「心配しなくても大将がいるって。

それで本題だが、俺たちはルインを仲間に誘いたいと考えている……と言って

もだ……特別厳しい拘束条件があるわけじゃない。そこのベルディスも

そうだが、自由にやってるだろ? たまにこういう集まりはあるがな」

「けどよ、ルインは俺様のもんだぞ? 誰にも渡したりしねーしよ」

「あらっ」

「へー、言うじゃねーか」


 メルザがはっ! としてボンと赤くなる。


「それはルインからも聞いた。絶対守るべき対象がおまえさん

なら、お前さんがリーダーでメンバーがルインのままでいい」


 ルインから聞いたと言われ、ますます赤くなる。

 ハーヴァルは小声で回りを十分確認してから呟く。


「……俺たち傭兵団、ガーランドの活動拠点は三夜の町、幻魔神殿の地下室だ」


 それを聞いて色々と話が繋がった。

 師匠とバウザーさんが何故知り合いなのか。

 ここへ来るときライデンさんがなぜ俺たちに、三夜の町ではなく

ベッツェンから来たことにしたのかを。


「そっか、ならいいぜ。あそこが俺様たちの住むとこだしな。

ただ、具体的に何すりゃいいんだ?」

「わたくしも聞いてしまってよかったんでしょうか……? 

いえ、わたくしはメルザさんのお友達です。誰にも話したりいたしません!」

「あぁ、なんならあんたもメルザの一員として入ってくれて

構わない。具体的なことは飯を食ってから話そう。じゃないと俺が殺される」


 セフィアはもう空腹の限界のようで、玉を持ち上げようとしている。

 俺たちは一通り食事をすませた。

 料理はやっぱふぐ刺だった。いやグフ刺しだわ! 

 味はちょっといかっぽかったが、美味かった。

 料理を堪能していると……「みられてんな……」

「あぁ、いってくるか」

「後ろ、七席。二人いる。一人でいける?」

「ふざけんな嚙み殺すぞこら」

「冗談に決まってんだろうが、まぁ殺されねぇけどな。ふんっ」


 セフィアと師匠が物騒な話をしている。

 あれ、師匠がいない? 

 後ろを振り返ると、猫づかみで男女二人を持ち歩いている。

 全く見えなかった。


「さすがはベルディスの悪夢だねぇ……」


 そういえばどういう意味だったんだろう? 今度聞いてみよう。

 

 ――師匠が猫掴みで連れて来たのは、見覚えのある奴らだった。


「ベルディアとベルドじゃないか。怪我はもういいのか?」

「余裕っしょ。あんなの痛くもかゆくもないし……エッチ」

「僕の傷は母上が治してくれた。かなり重症だったがもう平気だよ。

ところで……ベルディスさん。俺たちを降ろして握手をしてください!」


 そう言われて師匠は二人を降ろす。

 あの狂犬二人を子猫のように扱ってる。凄ぇ! 


「バルドスんとこのガキだった。どっちも敵じゃねえよ」

「ほう、君たちがそうか。随分と大きくなったな」


 二人は一礼をする。


「突然つかまれたような感覚があってびっくりしました。

ベルディアが君たちに気付いて、そちらを伺い挨拶に行こうと思っていた

ところです」

「バルドスとメディルはどうした? 一緒じゃねえのか?」


 二人は首を横にふる。


「父と母は二人でベッツェンにいったっしょ。旧友に誘われたって。不憫」

「ライラロさんと誰かを送るって言ってました。

我々は団体戦が残っているのでここに。

ボルドは訓練をしています」

「そうか、ちょうどいい。お前さんらにも話がある。バルドスには通してある」


 そう言うと二人に同じ話をした。

 彼らも迷ったようだが受けるようだ。


「場所を変えて話すか。ルイン。お前さんの宿屋に行くぞ。

あそこはマリーンンのとこだから安全だ」

「わかりました」


 俺たちはグフ亭をあとにして、急ぎ宿屋へと向かった。


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