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第六百四十七話 霊族の言い分

「お待たせいたしました。到着でございます」

「ここ……は」


 霊族のアメーダ。それに案内され、転移した場所。そこは……まさしく宇宙空間のような場所。

 辺り一面煌めく星のような空間。


「シカリー様。お連れしました」

「誰も……いないように見えるが?」


 しかし直ぐに目の前へ真っ白な建物が現れる。

 そして……外見がはっきりしなかったアメーダの姿も現れた。


 こいつは……「幻魔……? メルザと同じ原初の幻魔か?」

「おや? あなた様の目にはそのように映るのでございますか」


 アメーダはメルザそっくりの美しい髪色を持つ、紅色の瞳をした女性。

 その瞳、その髪色を見るとどうしても思い出してしまう。


「こちらでございます。シカリー様に失礼の無いよう」

「なぁなぁ。ここ、どこだ?」

「悪いがお前たちは一度、俺の封印の中へ。ここからはリスクが高い場所だ……」

「構わぬが、ちゃんと食糧を確保するのだぞ」

「頼んでみるよ。霊に食事が必要かはわからないけど」


 全員一度封印し、白い建物へ入っていく。

 中は……まるでアルカーンの部屋のようにへんてこな物が無数にある場所だった。

 奥へ案内される最中、何かの気配はあるものの、人の気配はまったくしない。

 

「こちらでございます。シカリー様、よろしいですかな?」

「待ちくたびれた。早くしてくれ」

「どうぞお入りください。おもてなしの準備をして参ります」


 真っ白な扉がゆっくりと開くと、果てしなく続くほどの白い空間の中に、一人掛けの椅子が四つと

テーブルが一つ。

 そしてそのテーブルの上には……ロブロードの駒と台があるだけ。

 シカリーと呼ばれていた人物もまた、紅色の髪に紅色の瞳の、線の細い男性だった。


「イネービュの手の者。異界の魂を持つ不孝な青年。二つの魂を持つ者。

神に嫌われ、神に愛された者。そして……呪われし運命により霊族の呪いすら打ち消してしまう者。

ルイン・ラインバウト。与えられる名前の前はベルアーリ。間違いないかな」

「こちらから名乗る前に、出来ればあなたの方から紹介してもらえると助かる。

こちらは何が起きているのか、あまり把握できていないんだ」

「かつてこの地がゲンドールと呼ばれる前のこと。我々死霊はこの地にて悠久の時を過ごしていた。

アルカイオス幻魔の一部のみが霊体となり、死んだときに、極稀にこの形態となる。

それが死霊族……我々だ。そのうちの一人であり、そこにいるアメーダの主。

シカリーという存在が私だ」

「アルカイオス幻魔の死んだ……霊体?」

「違うよ。霊体が死んだ状態の事。言うなれば霊体のアンデッド……のようなものだ。

複雑でなかなか理解しがたいかな?」

「いや、その説明であれば理解できる。それで、俺の事を知っているのはなぜ?」

「我々は名でその人物を追う力がある。それは自分の中で定めた名前ではない。

他人が決めた名前。名とは自分で決めれる者は嘘になる。これは理解できるかな」

「言われてみればそうかもしれない。そうか、つまり俺がアルカイオス幻魔のメルザに名づけされた

からか」

「いいや。それ以前からだ。君は、タルタロスを知っているだろう? タルタロス・ネウス」

「直接会った事はない。名前だけは知っている」

「そのタルタロスが魂を君に入れた時から、私は君を知っている。

君に興味を持ったのは、コレが原因だがね。ロブロード。君が考案したものだろう?」

「それを考案したのは確かに俺だが……」

「ゲンドールが誕生して幾千年。この世界は娯楽が少ない。

我々霊族というのは死ぬことを許されぬ者。この形骸化した存在……これは神もそうだが、それらが

何を望んで生きると思う?」

「死……か?」

「いいや違う。それは不可能な望みだろう? そうではないよ。

永遠に楽しめる玩具だ。神の玩具が人。我々の玩具は人が考案する様々な物だ。

もう少し正確に言えば、神々の玩具には人が考案する様々な物も含まれる」

「つまりあなたたち死霊族は、人に危害を加えたりはしない……と?」

「残念ながらその答えはノーだね。私やアメーダと敵対するなら容赦なく君を殺すだろう。

だが私は、このような遊び道具を考案してみせる君を殺したりはしない。今日はどのような

楽しい人物なのか見定めるために呼んだ。なんならイネービュに加担してもいいとさえ思っている程に、この

ロブロードを気に入っている」

「絶対神とはそもそも敵対関係であると?」

「中立……という形をとっているかな。別にどの絶対神とも仲がいいわけではない。

興味の埒外ではあるがね」

「……」


 少し話を整理して考えたいと思ったところ、気を利かせたのか、アメーダが飲み物らしき入れ物

を持って入って来た。

 

 そちらへ少し目を奪われた瞬間、俺はシカリーを正面に向き合う形で椅子に座っていた。

 そして、俺の手の中には……「一勝負、してもらえないか。考案者よ」


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