第六百四十五話 町に戻るかビーを追うか
コテージを退出すると、外でジェネスト、コーネリウスが待機していた。
すぐ傍らに沖虎、彰虎、白丕、ルジリト。それに寝ていたビュイ、ナナー、もいる。
「全員迷惑をかけたな。すまない。しばらく王女と行動するようにメイズオルガ卿へ告げられた。
これからの事を話したいんだが、その前に……コーネリウス。俺の仲間がどうなったのか聞いていいか?」
「ああ、そのつもりだったよ。それじゃ……」
詳しくコーネリウスに話を聞くと、皆下町に居て俺を待っているようだ。
早めに顔を見せに行った方がいいと言われたが、ビーの話を聞き、そちらも気になってしまった。
「ビーが迎えに出向いた人物が、ヨーゼフで間違いないんだな?」
「ああ、間違いない。知り合いなのか?」
「こちらが一方的に知っているだけだ。その人物で間違いないかどうかは、会ってみないとわからない。どうすべきなのか悩ましいところだが……」
「まずは奥さんに顔を出すべきだろう?」
「そうだな。これ以上留守にしたら、愛想をつかれそうだ」
「それはないと思うよ。君のことはよく理解している。
ただ間違いなく心配しているはずだし、それに、心に傷を負ってしまっている仲間がいる」
「メナスか……ビーも心配だが一度アースガルズへ向かおう」
「主殿、一つ助言してもよろしいかな?」
「ルジリトか。勿論そうしてもらえると助かるよ」
「では……これまでの様々なお話をまとめて察するに、主殿、並びにコーネリウス殿が
担わなければならぬ仕事が多岐に及びます。そしてこちら側の主殿の信における仲間。
それら全てをうまく動かさねば、無駄に時間を浪費してしまうでしょう。
それぞれが適切な役割を担う必要があります。しかし各々動いている仲間も多い。
まずは現在動ける仲間をアースガルズで確認し、そのうえで役割分担をしてはいかがか」
「ああ。それは考えていたが……」
「まだ話に続きがございます。聞けばビー殿が向かわれた場所へはアースガルズへ向かえば
逆方向。ですのでこの場にてビー殿の許へ向かう者を指定されてはいかがでしょうか。
適任はジェネスト殿、沖殿、サーシュ殿。最悪の事態を想定して、物資補給にパモ殿」
「しかしジェネストとビーでは面識がない。ビーは警戒心が人一倍強いから俺の仲間だと
どう伝えれば……」
「その隊章の印はこの国の象徴です。突然攻撃したりはせぬでしょう。
落ち着いた交渉であればジェネスト殿が適任と考えますが……いかがですかな?」
「わかった。ジェネスト、毎度のことで悪いが……頼めるか?」
「いいでしょう。そちらの二人とは少々連携の練習もしたかったのでちょうどいいです」
「私には不服などありませぬ。姉上、彰をよろしくお頼み申す」
「では一度メイズオルガ卿に挨拶をして早速向かおう。コーネリウスは哨戒任務をこなすのだろう?
ミレーユ王女はこちらでしっかり守っておく。安心してくれ」
「君の許より安全でない場所を思い浮かばないくらいだ。ミレーユ王女。
大丈夫です。彼は私より強く、私より紳士です……心配な顔をせず、いつものように微笑んでください」
「……」
何かを言いたくて仕方がない。だが声は一切でなかった。
白丕へ王女を乗せると、俺たちは二手に別れ、それぞれの行く道を目指した。