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第六百十八話 朱色の炎

「その力。一体どこで身に着けたのか……」


 少し恐れるような目でベリアルを見る白丕。

 ラーヴァティンを地面に打ち込むと、竜の口が開く拳を前に出して警告する。


「そんな事はどうでもいいだろう? それよりどうすんだ、おめえ」

「非礼を詫びる。だが……取り込まれるのは勘弁願いたい」

「そんならさっさと幻深の朱ってやつの場所へ向かうぜ。案内し……」

「ベリアル殿! 避けろ!」


 突然建物がばっさりと真ん中から割れると、地面に突き刺さったラーヴァティンの

上に朱色に染まる鳥のようなものが舞い降りてきた。


 真っ二つに割れた建物の切り口もまた、朱色に燃え上がり、やがてその色は濃くなって

強く燃え始めた。


 場所が悪かった白丕と沖は身を焦がしてしまう。

 ベリアルはナナーとビュイを両脇に抱えて後方に飛びのき、ジェネストはその前で

六指の剣をそのものへ向け構える。


「アニヒレーションズ!」

「アニヒレーションズ! 双!」


 ジェネストのアニヒレーションズに重なるよう、上空よりクリムゾンが突っ込んでいき

その者へ攻撃をしかける。

 しかし朱色の衣のようなもので覆われたそのものには

いくら斬撃を放ってもまったく効果がない。


「姉御! しっかりしてくれ! 姉御!」

「うぅ……」

「ぐぉ……あ……」


 その様子を見てベリアルに抱えられているビュイは大声を上げる。


「幻深の朱! あれは間違いなく幻深の朱だぞ!」

「向こうから来てくれるとはありがてえな。一日分ロスしなくて済みそうだぜ。

しかしいきなり訪問してくるだけじゃなく、攻撃してきやがるとは。おいジェネスト! 

クリムゾン! どっちも下がりやがれ。俺にやらせろ……ククク、いいぜえ。

ここにきてようやく親玉らしいのが出てきたじゃねえか。十分に楽しませてくれるんだろうな」


 ナナーとビュイを封印したベリアルは、ラーヴァティンを引き寄せる。

 すると、朱に焼かれた白丕、ブラックヘイローに取り付けられた二人の弟も引き寄せられる。


「まだくたばっちゃいねえな。もう一度聞くぜ。俺に取り込まれるか、或いはここであれに

殺られるか。三秒で選べ」

「……取り込まれて……やる」

「ぐぉ……主……様……」

「姉御! このままじゃ姉御と沖が!」

「おめえらもいいな。いいなら首を縦にふれ!」


 苦しそうな沖と、悲しそうな彰は互いを見合わせ、コクリと頷いた。


「いい答えだ。悪いようにはしねえ! ここら一体まもなく朱の海となる! 

一気に飛ばすぜぇ!」


 ラーヴァティンの上へ乗るように形取ると、ブラックヘイローがまるで車輪のように

取り付けられる。クリムゾンとジェネストを傍によらせると、朱と思われる者と対峙する形をとる。


「こいつの行動、目的が定かじゃねえが……ここで戦うにはちと不利だな。燃えるものが多すぎる。

さて、どっちに行ったもんか」


 考えている間も朱色の鱗粉のようなものをあたりにまき散らしていく。

 舞い落ちるたびにそれらは朱色の炎を立て、辺り一面朱の炎で包まれていく。


「無尽蔵かよ。こいつは確かに別格だな。取りこめられれば上等な炎が使えそうだが……

そう簡単にはいきそうもねえ。だが……ククク、試してみる価値はありそうだな」


 朱色のそれは、クルクルと回転をすると、人の形を模していく。

 どこか揺らめくようないで立ちは、まるで実体がないかのようにぶれて見えた。


「いびつな現況、ここにアリ。排除する役目、我にアリ」

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