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第六百九話 小さいゲンビュイ

 ギュルルルと突然大きな音が鳴り響く。

 

「あん? おめえの能力の地響きか? 今のは」

「そ、そうだ!」

「にしちゃ目の前から聞こえたような。自動発動型のバフか。厄介な

能力があるな」

「……こいつ案外バカかもしれん」

「何か言ったか? それより早く取り込ませろ」

「ベリアル。そなたは何か勘違いしているようだが、取り込むといっても

この巨体、どうすると?」

「おめえが本体なんだろ? この山みてえなのを動かして」

「確かに意思はこの……ゲンビュイが動かしておる。だが本体はこの山そのもの。

取り込めるはずなかろう」

「名前はゲンビュイか。おめえこそ勘違いしてるな。確かに以前の俺ならただ対象を取り込み召喚、使役する能力だった。

だがこいつと融合し、妖魔として生きるようになってから、封印する取り込みを行えるようになった。

幸い今は空きもある……でてこねえのもいるが。快適らしいぜ」

「それは妖魔吸収するということか! ならば尚更取り込まれればおしまい。

初めからだますつもりだったのだな!」

「落ち着け。説明を最後まで聞け。つっても俺でも取り込まれるわけにはいかねえって思うけどよ」

「何を言って……」


 再びギュルルルルという大きな音がしたかと思うと、ぱたりと倒れるゲンビュイ。

 そして起き上がる気配もない。


「おい。話の途中で寝るやつがあるか。おめえバカにしてるのか」

「バカにしているのはどっちの方だ! 取り込み、使い捨てにする妖魔になど封印されてたまるか!」

「だから違うって言ってるだろ。普通に出入りが自由な部屋みたいなものだ。中は快適らしいぜ。

ぐっすり眠れるんだとよ」

「誰が使い捨てな部屋になどなるものか! 出入りだって自由! ……なんだと?」

「お前、それわざとやってんのか?」

「……ダメだ。腹が空き過ぎて思考が回らん」

「なんだよ腹減りか。んじゃちっと待ってろ。とってきてやるからよ。そしたらちゃんと話聞け」

「……どうせ毒か惚れ薬でも入ってるんだろう」

「そんな無駄なことしねえよ。ダンタリオンじゃあるまいし。しかしめんどくせえな。

おまえここから出れねえのか」

「無理だ。移動を止めておくことは出来る。食糧を探し歩いていた」

「ふうん。道理で攻撃してこねえわけだ。茶屋のガキを連れてくる。背格好もおめえと

同じくらいだ」

「茶屋だと!? ゴンゴのやつめがいるのか! 早く連れてこい! いつになったら食べ物を持ってくる

つもりだったのか問いただしてやる!」

「なんだ顔見知りかよ。それなら……」

「絶対に許さぬ。こんなひもじい思いをするのは全てあやつのせいだ!」

「そいつもう、死んでるけどな」

「そうだ! 死んで詫びをいれさせてやる! 死んで……死んだ?」

「ああ。餓鬼にやられたみてえだ。娘一人だけ取り残されててからな。俺の飯係として拾った」

「なんなのだ……それに飯として拾っただと!? 貴様も餓鬼種だったか!」

「……おめえと話してると少し疲れるな。まぁいい。少し待ってな」


 急ぎ来た道を戻り食料を取りに行くベリアル。

 あっという間に戻ってきて、ナナーを連れてきた。

 食事をゲンビュイに与えるよう指示し、しばらくゲンビュイがいたあたりの様子を伺う。


「ふうん。幻魔界ってのは面白い構造を持つ能力者がいるんだな。

これはなかなかに技術がいる能力だぜ……」

「はぐっ、うまい。お主が作ったのか? こら、勝手に入るでない!」

「いいだろ別に。どうせ取り込まれればいつでも見れるだろうが」

「これはなんと……どうやって作ったのだ?」

「……聞いちゃいねえ。まぁ、飯を食いたいってことは生きてぇって証でもある。

羨ましい限りだぜ、まったくよ」

「ご主人、この姉ちゃん、ナナーより小っちゃいだ!」


 がっつくゲンビュイの頭をペチペチと叩きながら笑うナナー。

 それを見てめんどくさそうに修羅場を想定するベリアルであった。


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