第五百九十四話 クルージーン・カサド・ヒャン
オズワルは上空の俺に向けて、高密度の紫色に染まる光を放出した。
左右に持つ神剣で防いでいるが、分が悪い。
取り込めないかとも思ったが、吸収できるような類の技ではないようだ。
「お前ら、そろそろ目覚めているだろう。力を貸せ」
「な、なんおことかしら。あちし、よくわからない」
「てぃーちゃんもわからないでごじゃろ。な、何のことでごじゃろ」
「早くしろ。ここで俺が死ねばお前らはあれに取り込まれるぞ」
「いやーー! あちし、あんなののお嫁さんにはなりたくないっ!」
「エーナちゃんがいない場所なんて嫌でごじゃろ! 仕方ないでごじゃろ!」
『プロテクシオン』
ティソーナとコラーダを併せて防壁を出し、逆に攻撃をはじき返してやる。
その攻撃がオズワルへ直撃して多大なダメージを負わせた。
地上では煉獄トウマたちが暴れまわっている。
「ぐっ……その剣、攻めだけでなく守りにも長けようとは……青年に持たせるには少々厄介すぎる武器だな」
「こいつらにもそろそろ、真の力をはっきしてもらわないと困るんでな」
「それに先ほどから視線の呪いを付与しようとしているが、青年にはまるで効果がない。
こちらも、このままでは勝てないようだ。わしの本気を見せてやるとしよう。
魔力融合! 魔核爆破!」
「戻れ、トウマ。ティソーナ、コラーダ。全力プロテクシオン!」
辺り一面を吹き飛ばす程の大爆発が起こる。エヴィルフォアー、フォルフ、フォクスたちは消滅し
術を解かれる。
「くっ……かなり強い爆風だ。魔核を爆発して自爆したのか……?」
先ほどまで吸い上げていた管が軒並み破裂して、魔力供給が停止する。
どうやら城を動かすのを止め、本気でこちらへ挑んでくるつもりになったらしい。
そして、今までとは違い、人のような形態となり、一本の巨大な剣を持つ老齢な悪魔のような男が
こちらを見据えていた。
「青年。降りてくるがいい。このオズワルと真正面から打ち合い負かせてみるがいい」
「あんたの流儀で戦って、俺に何か得でもあるのか?」
「この闇のオーブ、欲しくは無いのか」
「……さっきの爆発はそいつを切り離すためのものか」
「言ったはずだぞ青年。闇のオーブは言うなればこの空間そのものだと。
これはあくまで器にすぎん。私を倒せばこの空間の闇はここへ集約される。さすればこれは
闇のオーブとなるだろう。打ち合い倒せばこれは君の物だ。どうかね」
「……いいだろう。あんたの誘いにのってやるよ。俺の目的はソレの入手だからな」
地上へと降り立ち、二本の剣を構える。
恐らく、剣での戦いで俺に勝ち目はないだろう。
相手の構えに隙も容赦もない。
一刀のもとに切り伏せられる。
「このクルージーン・カサド・ヒャン。斬ったものが気づかぬ程の力を秘めている。
わしに勝てればこれも、青年にくれてやろう。青年には既に立派な剣がいくつかあるようだが、所有権を
持っていて損はない剣だ」
「そりゃどうも。でもあんたはそれを条件に、こちらの剣の権利も譲れ斗言うんだろう? 悪いが
この剣の権利をやるわけにはいかない。こいつらは意思のある剣でね。あんたを嫌ってるようなんだ」
「……それは残念だな。あれほどの力を持つ剣に嫌われるとは少々心が痛むが……持ち帰ればどうにでも
なろう。それでは正々堂々、いくぞ!」