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第五十一話 消えたファナ

 疲れ果てたメルザを担いで宿屋に戻ると、ニーメが迎えに来てくれた。

 近くに採集に行き、いい素材が沢山あったようで喜んでいた。

 道中はファナが手助けしてくれて、大収穫だったんだとか。

 そのままファナは買い物に出たらしく、ニーメは家でお留守番をしていた。


「お姉ちゃん、そっちには行ってなかったの? もう随分経つけど」

「こっちには来てないな。メルザを助けてくれたっていう人に会って

話を聞いていたんだ。夕食までには帰ってくるんじゃないか?」


 そういえば……普段から見かける事が少なく、行動も共にしなかったから、ファナが

向かいそうな場所にはあまり心当たりはない。

 

 ――俺たちはしばらく部屋で過ごすと、扉を叩く音が聞こえる。

 ファナが帰ってきたのだろうか。


「あの、こちらにいらっしゃると聞いてお伺いしました」

「ああミリルさんでしたか。いらっしゃい」

「あら? どなたか来客予定でも? それでしたら出直しますが」

「いえ、仲間がまだ一人戻ってきていなくて。ファナっていう女性で」

「ああ、ファナ選手でしたの。あの方もお仲間でしたのね。

皆さん強くてびっくりですわ」


 ――ミリルを部屋に招き入れて、大会に参加する

経緯や竜の卵が何故欲しいのかを訪ねた。

 どうやら自分の竜を死なせてしまったらしい。 

 メルザの顔色が途端に悪くなる。

 自分のせいだと思い、平謝りする……が、ミリルは首を横に振って、自分のせいだと伝える。


 互いを自責するなとは言わないが、どうにもならない事はあるものだ。

 俺も死んだとき、あの子供を決して恨みはしなかった。

 状況がそうさせる事はよくある話だ。

 それが例え、誰かの死だったとしても。


「二人とも、自分を責めるのはそれ位にして少しずつ

気持ちに整理をすればいいさ」


 二人はハッと顔を上げ、再び下をうつむく。


「新しいドラゴンの卵は俺たちが必ず手に入れる。

ミリルさんには出来る事を協力してもらえれば十分だよ。な? メルザ」

「おう……俺様も出来る限りのことはするから。その……がんばる!」

「はい、あなた達のような方がいてくれて本当によかった。

相談できる相手も父くらいしかいなかったもので。

あの……これからもちょくちょくお邪魔させていただいても……?」

「勿論だ! ミリルはもう俺様の仲間だからな! にははっ」

「まぁ嬉しい。わたくしお友達ができたの、初めてですわ!」


 二人が嬉しそうに話していたが、急に扉が勢いよく相手ニーメが入ってきた。


「どうしたニーメ?」

「大変だよ、お姉ちゃんが行方不明みたいなんだ!」

「なんだって? まだ戻っていないからおかしいと思ったが……」


 急いで武器を手に取る。

 ミリルもメルザも行く気満々だ。

 しかし、夕暮れ過ぎに女性がこれほど多くの人が往来する

外へ出歩かせるのは危険だと説得する。


 ニーメもまだ子供だ。心配なのはわかるが連れてはいけない。

 三人を説得して、ここで待つように伝える。俺は全身大会用ではない、フル装備に急いで着替えた。

 詳しい話をマリーンさんから聞いてみる。


「あのお嬢さんなら一度戻った後、深刻な顔してまた出かけていったよ。

ローブを着た女性たちと一緒だったかねぇ……アルエス幻魔神殿に行くって聞こえたような

気がするわね」

「場所は……わかりました! ありがとうございます。すぐ向かってみます!」


 俺は嫌な予感がして急いだ。

 もっと警戒しておくべきだった。ここは俺にとって初めて来た地だ。

 どんな悪い奴がいるかもわからない。

 ファナに何かあれば、またメルザのあんな顔を見なきゃいけない。

 それだけは絶対に嫌だ。

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