表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
621/1120

第五百四十九話 状況は極めてよくない

「起きろ、起きろ! ……だめか。ばかやろう、無茶な戦いしやがって……お前まで死んだら……」

「男爵には見られたであろう。王女のような影を飲み込んだかに見えた。

あまりよい状況とは言えぬぞ」

「なぁ……俺っちとんでもない人にかかわっちまったのかなぁ……今でも震えがとまらねーじゃん。

こいつ、本当に平気なのか? 暴れ出したりしねーじゃん?」

「そんなの、知るわけないだろ! それにどうだっていい。シーは……守るんだ。

今度こそ俺が守るんだ……」

「へっ? 何言ってるじゃん?」

「……何でもない。怖いなら、勝手にどこへでもいけよ。トループは、仲間を見捨てたりなんかしない」

「……その通りじゃん。悪かったじゃんよ」


 話し込む三人に男爵の護衛が近づいてくる。表情はとても険しいものだった。


「君たち。無事でよかった。それに……彼もだ。だが、あのような危険人物、いくら恩人でも

このままオズワル様の許へ連れて行くわけには……」

「伝令だ! 大変なことになったぞ!」

「どうした!? 一体何があった!」

「オズワル様が……亡くなられた!」

「何だと!? 一体どういうことだ!」

「二十領区は酷い有様で……見るも無残な状態のようだ。このまま一度引き返す!」

「くそ、一体何が起こってるんだ! どうしてこうなる!」

「ここは従うしかなさそうぞ。行く末は神のみぞ知る……か」

「恩人にこんな仕打ちをしてすまないと思う。だが……彼に手かせをつけさせてくれ……」

「手かせは別につけてもいい。だがこいつは俺が運ぶ」

「ああ。構わない。それと一名君の馬車で結界も張らせてもらおう」

「好きにしろ。あいつが本気でああなれば、そんなものなんの意味もないだろうけどな」

「その通りだ。それほどまでに強大な力だった」


 護衛の表情を再度見ると、真っ青になっていた。

 無理もない。伝染病を食い止めるべく必死に動いている彼の姿は驚嘆に値するものだった。

 その彼を、裏切る形となってしまうことに、この護衛も心を痛めているのだろう。


 ビーがシーを担ぎ上げ、馬車に乗せる。その直後ベニーが馬車の中へ飛び出てきた。

 口元に指をあてている。意図を呼んだビーはメナスにも合図を送る。

 護衛はまだ気づいておらず、ビーが馬車に乗り込むのを待っていた。


「護衛殿。少し帰り道について話がしたいのだが、こちらへ。地面に書く」

「うん? ああ。手短に頼む」

「やべっ。閃光弾が落ちる!」

「何か言った……」


 キィーーーン! と辺り一面がまぶしさで包まれた。

 その隙に馬車から駆け下りたベニーは、直ぐに木陰へと隠れる。

 

「悪い。疲れてるのかな」

「無理もない。あれほどの戦闘をした後だ。帰りの道はしっかり休んでくれ。

我々はほぼ何も、出来なかった……」

「あんたたちは男爵の護衛をしていただろう? 直接の護衛より俺たちには、戦闘の方が

あってるんだ。気にすることはない」


 ベニーの動きに気を配りながら、位置を調整し、十分にひきつけた。

 ベニーの肩には小さい白い生物も乗っていた。


 きっと伯爵の領区へ向かうつもりなのだろう。かなり心配だが、今は信じるしかない。

 

「それじゃ護衛さん。よろしく頼むよ」


 ジェイクはゆっくり馬車を走らせ、十二領区へ戻っていった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ