第五百二十七話 捕縛されるコーネリウス
その日はコーネリウスを伴い、宿屋へと戻る。
フラフラなで夢うつつなビーと、カチコチに固まったエー。
そして銀髪の女狐メナスもいる。先生とスピア、アネスタ、そしてハクレイ。
シーを含めて全部で八名。
ファニーたちは別途宿を取っており、こちらにはいない。
「……ということだったんだけど、聞いているか?」
「え? ああ、もう一度頼む」
「自分はうまく告白できるでありましょうか……」
「おーい。コーネリウス、何かいい方法はないか?」
「これはお手上げだね。どうにもならない。いや、あるとすれば女性側の方に
どうにかしてもらおうか。明日には彼らを元に戻せるよう手配しておくよ」
「すまない。多分話は理解していると思うんだ。ところで、先生の診断結果は?」
「黒だったよ。薬ももらった。今飲むところだ」
「ああ、邪魔してすまなかった。直ぐ眠くなるだろう。
今夜はそこのベッドを使うと言い」
「……ああ。わかっているが、布で仕切られたりもしていないのか……」
「下町の宿屋だからな。仕方ない」
「しかしお主、美しい顔じゃのう。まるで本当に女子のようじゃ。
ふぅーむ」
「また老師が変なあだ名をつける前に休んでおくといい」
「……」
さっさと布団に入り眠りにつくコーネリウス。エーもビーもこんな感じじゃしょうがないな。
俺もさっさと休むとしよう。
――――翌朝。随分疲れていたのだろう。先日の日中も少し休んだが、なかなか起き上がれなかった。
「おい、シー! 起きろ。出発するぞ!」
「……ビーか。もうそんな時間か?」
「それどころじゃない! 急いで起きろ。大変だ」
「どうした!? 何が起こって……」
「全員動くな。取り調べだ」
突然多くのトループに部屋を囲まれていた。一体なぜ? 何が起こった?
「ここにいるはずだ。伯爵の一人娘が」
「一人……娘?」
「……彼らは関係無い。手出ししないでくれ」
「そうはいかん。事情聴取は必要だ」
「待ってください。私は医者です。彼……女をここに泊まるよう進言したのは私です。
その他の患者さんに危害を加えないでください!」
「医者? つまりここは病室か!?」
「ええ。しかも流行り病の伝染病部屋です。急いで出ないと危険ですよ?」
「おい! 急いで部屋から出ろ! お前らは来るな! 行方不明のコーネリウス嬢を確保。
ただちに護送する。医者といったな。貴様もついて来い」
「先生!」
「平気です。患者さんはおとなしくしていてくださいね」
そういいながら、眼鏡越しにウインクする先生。
コーネリウスとも目が合い、少し頷いた。
くそ、一体どうなってるんだ。大幅に計画が狂う……。
どうにかして連絡手段を確保しないと。
そう考えていた時、扉が少し開いた。
「きゃっ」
「なんだ女。今取り込み中だぞ、出ていけ」
「ごめんなさぁーい。部屋の中に薬を持っていくように言われててぇっ。
そちらの方に飲ませないと発症するかもって。ね? 先生」
「はい。その通りです。お願いします。時間はとらせませんから」
「ちっ。早くしろよ」
レニーがさっと入りコーネリウスに近づくと、トループに見えないよう服の下に何かを入れた。
一包の薬のようなものを渡しささっと出ていく。
「失礼しましたーっ」
「よし、さっさと飲めよ。直ぐに移動を開始する。邪魔したな」
コーネリウスと先生を連れ、出ていくトループたち。
これはかなり、まずいことになった。