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第五百六話 銀髪の女狐《ジョコ》

 コーネリウスに別れを告げた俺たちは、馬車へと乗り込み青いコインを見せ、そのまま

第七領区へと向かうように告げると、御者は青い顔をして馬車を走らせる。

 来るときと似たような光景だ。

 この青いコインがよほど怖いらしい。

 伯爵ともなれば国家においてそれなりの重鎮にあたる。

 侯爵などが市民や兵士にかかわる事はまずない。

 そう考えればおのずと理解できる立ち位置だ。


 揺れる馬車の中、三人ふぅとため息をつく。


「しかしよぉ、シー。お前のあの腕、なんなんだ? 魔王種みたいな腕だったけど」

「恰好いいであります! 自分の腕と交換して欲しいであります!」

「無茶言うな。これは修行中の秘密兵器ってことで、それ以上は聞かないでくれ」

「そうだな。悪い。トループ同士の詮索は無しだったな。俺も突っ込んで聞かれると困るし」

「お互い話す時になったら話す。それでいいだろ、ビー。お前とは仲良くしたいものだ」

「同館だ。俺たち案外気が合うしな。このままお前らとトループやっていくのが案外、いいのかもな……」

「その言い方だとビーはトループを辞めようとしていたでありますか?」

「そんなところだ。少し……旅に出ようと考えていた。色々あって」

「旅……ね。それも悪くない」

「自分はトループ以外の事はあまり知らないであります。もちろん未知の世界には興味が

あるでありますが……」


 そんな話を三人で交わしているときだった。突如馬車が急停車し、ガクンと酷い揺れが起こる。

 一体なんだ? 辺りの風景は森林街道のようだが。


「ひやあああああああああああ、おお、お助けぇーーー!」

「何事だ!」


 御者の悲鳴が鳴り響き、慌てて外に出ると、どう見ても普通じゃなさそうな者たちに

ぐるりと取り囲まれていた。


「へっへっへ。金目の物全部おいてけ」

「おいおい、こりゃトループ様だぜぇ。しかも弱そうだ」

「おうおう、そこそこ高く売れそうな装備あるじゃねえか。全部ひっぺがそうぜ」

「……なんだこの頭の悪そうなやつらは。今何領区あたりだ?」

「あの木は確かゼッペルの木でありますから、第九領区あたりであります」

「エー、お前木見ただけで場所わかるのか。凄いな」

「地形把握が得意であります! 偵察任務はお手の物でありましたので!」

「おいこら! 無視してんじゃねえ! 死なすぞてめぇら!」

「金置いてけば命までは取らねえでやろうと思ったが、無しだ。全員殺るぞ」

「へっへへー。お宝あるかなぁ……」


 懐から短剣や射撃武器などを取り出し、ゆっくり近づいてくるごろつき共。

 こんな奴ら相手にもしたくない。


「待て! 貴様ら何をしている! 物取りか!? 恥を知れ端を! 

全員捕えろ!」

「え? 銀髪の女狐(ジョコ)? ほ、本物か?」

「ひえぇ、命ばかりは! 魂ばかりは!」

「お、お助けくだせぇ。ほんの出来心で……へへ」

「黙れしれ犬どもめ! それ以上喋れば反逆罪に処す!」


 突如現れた銀色の長い髪に狐の面を付けた……女性? と思われる人物と兵士により、ごろつきどもは

全て捕えられた。戦わずに済んだのはラッキーだ。


「早くしろ! 全員捕えろと言ったはずだぞ!」

「はっ! さぁ貴様らも来い! 早くしろ! 怪しい動きはするなよ。

俺たちは第九トループだ。さぁさっさと歩け!」

「いや俺たちはちが……」

「黙れ! 反逆罪に処するぞ!」


 嘘だろ。こんなところで騒ぎは起こしたくない。

 しかし喋ったら反逆罪? 冗談じゃない。おとなしくする以外できないじゃないか。

 せっかく少し休めると思ったのに。

 ラッキーどころかとんだアンラッキーだったようだ……。

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