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第五百三話 シフティス大陸へ出発……の前に、奇人現る

引っ張ったわけじゃないんです。そう、彼は突然現れるキャラの一人……


 結局その日のうちに出発となった一行。

 ルインは未だ戻らぬ仲間を一日でも待ちたかった。


 戻っていない仲間は多い。

 妖魔国側はリル、カノン、そしてアトアクルークで待つベルローゼ先生。

 キゾナ大陸で調べ物をしてくれているイーファ、ドーグル、エプタ。

 スキアラの許へ向かったシーザー師匠、ハーヴァル、イビン、セフィア、シュウ。

 ライデンの行方を調べに行ったベルド、ミリル、ルー。

 幻魔界へ向かったジェネスト、ウォーラス、レウスさん。


 これだけの仲間たちを残し、旅立つのは不安だったのだが、いつまでも待ってはいられない。

 町には極めて能力の高いフェドラートさん、奇人だが特異能力をもつアルカーンさんが残ってくれている。

 

 一つ大きくため息をつくと、出発を決意し口を開こうとした。


「おい、ちょっといいか」

「みん……あれ?」

「あら、お兄ちゃんじゃない……匂う! ちょっと! お風呂入りなさいよ! 

信じらんない! あなた、お兄ちゃんを温泉につれてって」

「風呂など入っている時間が勿体ないだろう。そんなことより」

『絶対駄目よ!』


 女性陣にぴしゃりと言われ、顔を歪めるアルカーン。

 あんた、一体何日こもって研究してたんだ? ルーンの町に戻ってからほぼ顔も見てないぞ。

 妖魔国に行ったっきり戻ってこないジオ並みにだ。そういえばあいつも妖魔側から

戻ってこない者の一人か。

 フェルドナージュ様がジオを使いたいと言っていたが、大分こき使われているのだろう。

 相当な実力者だ。性格に難ありだが。

 

「……やっぱり出発は明日かな。それでもいいか? ライラロさん。新作のお菓子もあるし」

「お菓子を食べつくしてから行きましょう! それがいいわ!」

「ルインさん。私も温泉についていきます。長旅になると入れなくなりそうですしね。

お話があると思いますので私は静かにしておきます」

「先生がいくならスピアも一緒にいこうかな」

「あら、私もいくわ」

「お兄ちゃんとは嫌だわー……私は安息所でお菓子にするね」


 それぞれ別れて行動する。ちょっと匂うアルカーンと共に、温泉へ向かい

休憩することになった。

 タイミング的にはどうにか間に合ってくれた……のか? 


 ――――。


 温泉場に行くと、レェンとアルンがこれから入るところだった。二人の頭を撫で、明日旅立つことを

伝えると、少し残念そうにしていた。

 ハクレイとの修業もあり、そこまでは対戦できなかったが、レェンとロブロードで死闘を繰り広げていたのだ。

 しかし既に俺では勝てない程、ロブロードがうまくなっていた。

 こちらはエーナたちが飛び回り、ロブロードを各大陸に広めているようだ。

 シフティス大陸でもその手の話を聞くかもしれないな。

 

 

 温泉場で体を洗い湯船に浸かると、一息つく。全世界共通、いや全宇宙共通の骨身に染みる癒しのひと時。

 アルカーンさんはさっさと体を洗うと、一足先、湯船に浸かっていた。


「妖魔側へはやはりアルカーンさんでも入れないんですね」

「不可能だった。ベルローゼと特殊なやり取りを行っていたんだが、それも出来ない。

見えない障壁で塞がれている……といったところか。恐らくはだが、タルタロスだろう」

「気になるところですが、妖魔国側へ行く方法がわからないとどうにも……いえ、そちらは

イネービュに頼る他ないか」

「それより要件はわかっているな。ルーニーの件、それと不随する装備についてだ」

「ああ。どうにか間に合ってくれたようで嬉しいです」

「ルーニーだけであればとっくに完成している。それ以外の調整に時間がかかった。

さぁ、見返りに貴様の新しい時計の案というものを差し出せ。こっちは数か月程の熱量で

作業にあたったのだぞ」

「わかってるよ。こいつは時計の外見の問題じゃない。機能……いや構造を変える方法だ。

時計は十二で数を数える十二進法だろう? それを二十四で数える方法だ」

「どういうことだ? 二十四表記など針で表現出来るはずがないだろう」

「いや、できる。十二の時計を二つ組み合わせればいい。もしくは十二周りで切り替わる

午前、午後をつくればいいんだ。その言い回しはアルカーンが決めればいい。

俺の世界ではエーエム、ピーエムだったな。それ以外にも例えば……」


 様々な脳内に浮かぶ時計の表現方法を伝えていく。

 アルカーンの表情がどんどん変わっていき……これはやばい。

 稲妻が走っている。新たな時計革命がアルカーンの中で発生したようだ。

 そして俺はやらかした事に気づく。ルーニーの説明を聞いていない。


「アルカーンさん、ルーニーの説明を」

「……つまり二十四という好ましくない数字を使用するのではなく十二という分類のまま進む時計を

二段階に分けて構築、展開するのか。更に加わる切り替え造形。これはそうだな、美しい

フェルドナージュ様のアーティファクト、カドモスとピュトンから連想される

ものに……いや、妖魔国側への道が絶たれた今、より現実的に製作するには……ふむ」


 駄目だ! 絶対何一つ聞き出せない状況だ! やってしまった。


「多分後で言い忘れた連呼して教えてくれるんだろう……そう信じよう」

「おい、私は製作に戻る。貴様の従魔に装備を詰めておいた。後で確認しろ。

説明書きはつけた」

「ちゃんと体は洗ってくださいよ……従魔って……まさかパモか? パモは従魔じゃない! 

俺たちの大切なマスコットだ!」

「ほう。マスモットとやらが何かはしらないが、確かに伝えたぞ、ではな」


 マスモットじゃねーよ! モルモットと一緒みたいになってるじゃないか! 

 本当にこの人はもう……そもそもマスコットってのは幸運をもたらす存在なんだぞ。


 それにしても、まさか説明書きまでつけてくれているとは。

 これは親切心なのか? ……いや、違うだろう。説明をする時間も惜しい。

 アルカーン。それは類まれなる研究者なのだから。

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