第四百八十三話 アブソルート・ディフェンサ
轟音を立てながら3匹の竜は上空を羽ばたく。激しい風圧に多くの者はたじろいでいる。
俺は――――真っ先に行動し先手を打っていた。
「妖雪造形術、コウテイ、アデリー。みんなの避難を頼む!」
「ウェーイ!」
「ウェィ!」
二匹のペンギンが跪く。
地上はコウテイたちに任せよう。
「悪いな爺さん。俺はボロボロになっても反省しない口なんだ! 妖紫電真化!
今この時を守れればそれでいい! 後先の事なんていちいち考えてられるかー-!」
紫色の光を発し一気に上空へ飛翔。そこからラージャに向けて攻撃を開始し、注意を引く。
「紫電・赤連閃!」
赤い斬撃の周りへ紫電を流す。赤い斬撃の周りを紫色に迸る電撃が覆いながら閃光を
放ちラージャへと飛び交う。
紫電がのった影響で凄まじい速度の斬撃がラージャへと炸裂した。
残る二匹に向けて、コラーダを構える。
「剣戒、驚、懼。封剣! レピュトの手甲」
コラーダを合計四本生み出し……一本をレピュトの手甲に、そして三本を掴んだ。
「ちょっと! 無理させすぎよぉ! あちし、もっと優しくって……あれぇ!? 意識ない?」
「マスラビド・トレス・レデク」
ルインが所持する三本のコラーダが、赤紫色の光を発し、ぎりぎりとうごめく。
紫色の電光を発しながら一気に残りのラージャを貫いていった。
攻撃がヒットしたラージャは、姿勢をわずかに崩しつつも、叫び声などを挙げずに
ルインへと攻撃を開始しだした。
「まったく未熟でごじゃろ。意識を刈り取られて戦闘を行うとはどういうつもりでごじゃろ」
「てぃーちゃん、あちしたちこのままだとブレスの餌食にされちゃうよぉ?」
「仕方ないでごじゃろ。やるでごじゃろ」
ティソーナがコラーダに語り掛けた時、クレルクラージャがすぐ近くまで現れ、ブレスを
吐こうとした……だが正気を失ったルインの目を見て、若干の怯みを見せる。
「ほう……この小僧に怯んだでごじゃろ。てぃーちゃんにようやく恐慌を出せるくらいにはなった
ようでごじゃろ」
「あちしも見た! まだまだヘナチョコなのにぃ。この竜も成長途中なんじゃなぁい? 打たれ強そうだけどぉ」
「そうかもしれんでごじゃろ。さぁ張るでごじゃろ。今ならもれなくブレス三連撃でごじゃろ?」
二つの剣が勝手に動き、ルインの所持する胸元で交差する。
そのルインに向けて上空に飛翔した三匹が、それぞれブレスを吐き出す構えに入る。
「ルイン、逃げるのじゃ! それはベルータスを消し去るほどの威力のブレス!」
「いけません、フェルドナージュ様! 離れてください!」
「止めるな フェドラートよ! このままではルインが!」
『アブソルート・ディフェンサ』
二つの剣から発せられる強い光により、放たれたブレスはその光へと吸い込まれていく。
「ふう。やれやれでごじゃろ。これでしばらくてぃーちゃんもこらちゃんもお休みしないと
いけないでごじゃろ。後はだめな御前に任せてやるでごじゃろ……」
「ふぁーあ。あちし、久しぶりに楽しかったぁ。おやすみぃ……」
フッと二つの剣は姿を消した。ブレスを放ったラージャと共に。
ブレスが放出された先には横たわるルインと、巨大な開いた穴だけが残っていた。
「よし、よく耐えた! ケリ・スフライソー」
ブネがそう唱えると、メルザに与えられたブネの腕に飲み込まれるようにメルザが収納され、ブネへと
戻っていった。
その場にドサリと崩れ落ちるブネ。
それと同時にルーンの町には静けさが残った。