第四百八十一話 五人の子供
フェルドナージュ様たちに挨拶を済ませると、久しぶりの妖魔の町を一通り見た。
その後皆で買い物をしたり、アルカーンさんの家を訪れたりした。
しかしアルカーンさんは見当たらず、どこにもいない。
自分の空間に籠っているのだろうか。
「大分遅い時間だし、そろそろ戻ろうか」
「なぁ、もう少しだけ……」
「メルザ。戻ってからゆっくりお話ししましょ? ね?」
「うん……わかった」
ファナに優しくそう言われ、納得するメルザ。みんな出来る限りメルザと一緒に
いたい。明日には会えなくなる。そう口にするものはいなかった。
町に戻るとみんな一斉に動き出す。
料理を作るだけじゃなく、みんなひっそりとメルザのための飾り物を作っていた。
首飾り、足飾りなど。
俺は指輪を渡したからいいものの、私たちもメルザに渡したい! と、戻ってからみんな
暇ではなくなったようだ。
何せリミットは明日まで。
一番手際がいいファナ以外苦戦しているようだ。
「さて、俺も料理を手伝うよ」
「ふふふ、それなら一緒に手伝おうかな」
「アネさん!? いつのまに。戻って来たばかりで疲れてるんじゃ?」
「偵察などは行ったけど、ラートが率先して行動してくれたからね。
まだ余力はあるよ。それに、前にも伝えたけどここに住むことにしたからね」
「そうか。それなら無理のない範囲で手伝ってくれると嬉しい。氷を使うような料理でも
作るか。そうめんあたりでも……醤油の代わりになる調味料でも作らないとな」
「そう……めん? 面白そうだね」
「そんなたいそうなものじゃないよ。原料だって小麦粉に水に塩だし。
時間がない暑い日に、簡単に食べれるってだけさ。俺は好きだけど」
「それは十分面白いと思うけど。手伝ってもいいかな」
アネさんに手伝ってもらいつつ、そうめんを簡単に作成。
ファナがちょっとうらやましそうに見ていたが、ファナはファナで気合をいれて料理をしている。
その日はそれから皆で多いに騒ぎ、就寝した。
俺は……寝られなかった。ひたすら訓練場で素振りをし、己の不甲斐なさを
悔い改めた。
翌朝……フェルドナージュ様たちが到着した後。
ブネとフェルドナージュ様が初めて会うと、少し緊張が走る。
この二人、そういえば雰囲気が似てるな……だが、ブネの方が怖いか。
「メルザは本当に平気なんじゃろうな。ブネとやら」
「問題ない。しばらくこのブネの中に封印されることになる。封印前に一つ
確認する。メルザよ、子は欲しいか?」
「え? 俺様の子? そりゃ欲しーけどよ。その……まだその準備が」
「ファナたちもそうだな?」
「欲しいに決まってるっしょ。後がつかえてるの!」
「そうね。女である以上はねぇ」
「そーよそーよ! まったくルインたら」
「アイドルの子供もアイドルなのよねー!
「俺に言われてもなぁ。やることいっぱいだし。おいまてレミ。なぜおまえまで反応する」
「ならばよい。遺伝の相補、神秘の極み」
ブネがそういうと、手のひらからファナたちのお腹に光がともりふっと消えた。
「よし、受胎させた。半年で産まれるであろう」
『はぁ!?』